『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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忙しい私に代わり家を任される義妹に、夫が何時しか好意を抱くようになりました…。

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 父と継母亡き後、入り婿の夫と義妹と三人で暮らし始めた私。

 二人が急死した事で、私の穏やかな新婚生活は急に終わってしまった。



 父は家業の一部を私に任せており、夫はそれには関与して居ない。
 
 だから私は夫に頼る事無く、自分の力で対処しようと日々忙しくして居た。



 その為、今までのように家の事が出来なくなり…家庭的な女性が好きな夫は、そんな私に不満を抱くように─。

 するとそれに気づいた義妹が、だったら家の事は私に任せてと言って来た。



 義妹はこの家に来た時から体が弱く、殆どを家の中で過ごして居た。

 だから家の事はよく分かって居ると彼女は言い…メイドをわざわざ雇うよりその方が良いと夫も賛成した事で、家の事は全て義妹が任される事に─。



 すると義妹は甲斐甲斐しく夫の世話を焼くようになり、まるで彼の妻のように振舞い始めた。

 それに気付いた私は良い気はしなかったが…何もしないお前が不満そうな顔をするなと夫に言われ、黙るしかなかった。



 その後、夫と義妹の仲はどんどん深まって行き…自分に尽くす家庭的な彼女を、夫は何時しか熱い目で見るように─。



 そんなある日…いつものように忙しく家を出ようとする私を引き留めた夫が、突然離縁を告げて来た。



 そして、忙しく自分を大事にしてくれないお前には愛想が尽きた─。
 
 お前よりもうんと自分に尽くし、家の事を全てやってくれる義妹を新たな妻にしたいと言う。



 更に、これまで家を守って来たのは義妹だ─。

 彼女は体が弱く今更他所で暮らすのは大変だし、お前が家を出て行くようにと夫は命じて来た。



 しかし、それを聞いた私は激怒─。

 勝手な事ばかり言う夫に対し、ある物を突き付けた。



 それは、義妹が勝手に依頼した家事代行の請求書の山だった。

 義妹が用意した美味しい料理も、義妹が綺麗にした部屋も…全ては義妹が雇った家事代行人がやってくれた事だったのだ。



 私も最初は気付かなかったが…料金が滞って居ると急に連絡が入り、よくよく調べてみれば義妹が家の事を何もせずにサボって居た事が判明した。



 何と義妹は、払わなかった料金を夫とのデート代に使って居て…実は二人は既に身体の関係があり、家事代行など何も知らない夫は時間を見つけては義妹を気晴らしにと外に連れ出しデートを楽しんで居たのだ。



 父の代わりが早く務まるよう努力し忙しくする私を尻目に、そんな裏切り行為をして居た二人を私は許す事は出来ず…今の仕事が落ち着いたら、二人と今後の事をゆっくり話し合うつもりで居たのだった。
 


 私に全てを知られて居た事に、夫は大層焦った顔を見せたが…家を追い出されるのは不貞を働いたあなたと泥棒猫の義妹の方だ─。

 その時は勿論私に慰謝料を払い出て行って貰うと告げれば、夫はガクリとその場に崩れ落ちるのだった。



 その後、私と夫は正式に離縁─。

 元夫は私に慰謝料を支払い出て行く事になったが…そんな彼の傍には、涙を流す義妹の姿があった。



 義妹は、家の事も無理だったのに他所で仕事などとても務まらない─。

 体も弱いのに追い出されては、もう野垂れ死ぬしかないと情に訴えて来たが…私の従者となった人物が、そんな義妹と元夫をさっさと家から叩き出してくれた。



 その従者の彼は、元は父に仕えて居たが…婿養子となった元夫と反りが合わず、父亡き後に元夫に勝手に家から追い出されてしまって居たのだ。



 しかし私を心配する彼は、その後も陰ながら私を助けてくれ…義妹と元夫の不貞の証拠を集める際も、色々と力を貸してくれた。

 そんな彼は、私が離縁になると再び家に戻る事となり…最後まで私をあの二人から庇ってくれたのだった。



 それから一年後─。

 元夫は浮浪者となり大層苦労して居り、身体が弱かった義妹はかなり前に野垂れ死にしたと言う噂が流れて来た。



 だが従者となった彼と恋仲となり、近く式を挙げる事が決まり幸せ一杯の私は…そんな者達も居たなと思うだけですぐに二人の話など忘れ、彼との甘い時間を過ごすのだった─。
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