『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

私の幼馴染を妊娠させた夫が、自分は悪くないと離縁を言い渡して来ました──。

　夫が、ある日突然離縁を迫って来た。

　訳を聞けば…何と、私の幼馴染を妊娠させてしまったからだと言う。

　二人の距離の近さに疑問を感じて居たが…まさか、そんな関係だったとは─。



「俺は…彼女と温かい家庭を築きたい。お前は中々子が産めないし…一緒に居てもつまらないんだ。そうだ…こうなったのは、お前の身体と性格のせいだ。」


　
　つまらないって…そんな事を思って居たの？

　と言うか、自分の不貞を私のせいにするとは余りに酷い─。

　子供など居なくても、二人で良い家庭を築いて行こうと言ってくれていた癖に本当はそんな事を思って居たのか─。



　結局、夫の気持ちは変わる事はなく…私は彼と離縁し、家を出る事に─。

　私もあそこまで言われてしまっては、彼をこの先愛する事は出来なかったし…これで良いのよ。

　

　するとそんな私と入れ違いに幼馴染がやって来て…彼女のお腹は、やはりふっくらと膨らんで居た。


　
　しかしそれを見た私は、すぐに違和感を感じた。



　彼女のお腹、少し膨らみすぎでは…？

　あの人が彼女を妊娠させた時期を考えると、ちょっとおかしいわね。



　でも…もう離縁された私には関係のない事。

　後の事は、二人で解決すればいいわ─。



　その後…元夫は幼馴染を迎え、仲良くやって居る様だった。

　しかし、もうすぐ子が産まれるとなった頃…彼は、不幸のどん底に叩き落とされる事に─。



　幼馴染の元婚約者だと言う男が現れ…新しい事業が上手く行き借金を返せたから、彼女と復縁したいと申し出たのだ。



　そして幼馴染は、驚く事にその申し出を受け入れた。



　また彼女は、実はあなたの事など大して好きでは無かった…このお腹の子の父親は彼だから彼とよりを戻すと悪びれる事無く夫に伝えたそうだ。


　
　そして呆然とする夫を残し、幼馴染は家を出て行ってしまったと言う。



***



「彼女は、あの男に借金があるのが嫌で…それで金持ちの俺に目を付け、子供の父親にと考えたそうだ。でも、あの男の事業が成功し俺よりも金持ちになったら、あっさり俺を捨てて…。こんな事なら、お前と離縁しなければ…否、初めからあの女を選ばなければ良かった！」

　そう言って、私を訪ねて来た元夫は号泣した。



「あなたは、都合よく利用されて居ただけだったのね。でも、それでもあの子の誘惑に負け、体の関係を持ったのだから…私を裏切った事に変わらないわ。そんな人に、私は全く未練など感じて居ないけれど？」



　そう冷たく返すも、夫は私と復縁したいと言って来た。



「お前は、妻として良くやってくれて居た…。お前の大切さに、俺は漸く気付いたんだ。だから、どうか─」

「それは無理よ…。だって私、近く再婚する事になって居るから。しかも…このお腹には、もうその人の子供が居るし。」

　そして、別室で控えて居た彼が部屋に入って来て…元夫にこう言った。



「俺は、お前の様な不貞は絶対に働かない。彼女とお腹の子は、俺が責任を持って幸せにするから…お前はもう二度と彼女に近づくな！」

　その余りの迫力に、元夫は逃げる様に家を飛び出して行った。

　その情けない後姿と、私を守る様に立つ逞しい彼の後ろ姿を比較し…私はあの男と離縁し、彼と出会えて本当に良かったと思ったのだった─。



　その後…元夫はあの広い家で、孤独な日々を送って居ると言う。

　温かい家庭を作るどころか、そんな暮らしを送る事になるなど夢にも思って居なかったでしょうに…浮気した代償は、かなり大きかったわね。



　そして幼馴染はと言うと…元婚約者と結婚、無事に子供が生まれ幸せな日々を送るつもりが…何と相手の男の浮気が発覚、喧嘩が絶えない毎日だと言う。

　そうなって、元婚約者の所に戻った事を悔やんで居るそうだが…今更、どうにもならないわね。



　一方、私はと言うと…夫の好きな料理を作ったり、生まれてくる子供の為に絵本やおもちゃを用意したりと穏やかで幸せな日々を送って居た。



　夫も夫で、沢山の洋服を用意してくれたりして…今から、子煩悩ぶりを発揮して居る。



　こんな彼となら、きっと温かく幸せな家庭を築けるでしょう…だから、早く私達の所に生まれて来て？
　
　私は、我が子が宿るお腹にそう優しく声をかけた─。