『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

文字の大きさ
上 下
58 / 132

夫の浮気が発覚しました、彼は元恋人への愛が捨てられなかったようです──。

しおりを挟む
 私と夫は結婚してから随分経つが、未だに子が出来なかった。

 私としては早く子が欲しいと思って居るが…最近の夫はどうも乗り気では無いようで、私を求めてくる事は無くなってしまった。

 そして…何故か外出の頻度が増え、家を空ける事が多くなった。



 そんなある日の事…夫が用事があると言い、家を空ける事に─。

 そしてさっきまで夫が座って居たソファーを見れば…そこには、包装紙で包まれた箱が忘れられて居た。

 これは…誰かへの贈り物よね?

 この包みの色からするに、贈る相手は女性だわ─。



 私はいけないと思いつつも…その箱を手に取り、中を確認する事に─。

 するとそこには、美しい石を嵌め込んだ髪留めが入って居た。

 そして、メッセージカードが添えられており…そこには夫の字で、こう書かれて居た。

『君の美しい金の髪と青い瞳に似合う物を選んだ。これを俺だと思い、毎日身に付けてくれ。』



 それを見た時…私は、すぐにあの女を思い出した。

 金の髪と青い瞳…この地では珍しい容姿だから、よく覚えて居る。
 
 夫はこの髪留めを、元婚約者に贈るつもりだったんだわ─!

 

 夫は私と結婚する前にある女と婚約して居たが…彼女が作った借金が元で、父親から別れる様に言われたのだ。

 そして彼は、私を新たな婚約者に迎え…私達は結婚したのだった。

 しかし結婚から一年後…彼は町で偶然その女と再会し、一度だけ過ちを犯したのだ─。



 それが私に知られると、彼は何度も頭を下げて謝罪した。

 そして…二度と彼女には会わない、これからは君だけを愛すると誓ってくれたのだ。

 夫が余りにも必死に謝るから、その時の私は彼を許す事にしたのだが…彼はその誓いを破り、またその女に会って居た様だ。

 流石に、二度目の裏切りを許す訳にはいかないわよ─?




 その後、私は自身の従者に頼み、彼の身辺を調べて貰う事にした。
 
 すると…彼はやはり元婚約者の女と密会を繰り返し、体の関係を持って居たのだった。

 そして夫は、彼女に対しこう言ったそうだ─。

『君の借金も完済したという事だし、俺達の仲を裂いた父も既にこの世を去った…やり直すにはいい機会だ。妻?あいつはどうでもいい。ちっとも子供も出来ないし…もう、女としての魅力も感じない。君みたいに美しければ、まだ捨てるには惜しいが…あんな地味な女はもう要らない─。』
 


 夫は私の事を全く愛しておらず、捨てる気満々だったという事だ。

 こんな薄情な男に捨てられる前に、こっちから捨ててやるわ─!



 それから数日後…私は、夫に離縁を突き付けた。

 私からそんな事を言われると思って居なかった夫は、一瞬驚いたものの…すぐに私に食って掛かって来た。

 そこで私はあの髪留めと…そして、夫と元婚約者が密会して居る写真を突き付けた。

「失くして居たと思って居たのに、お前が持って居たのか!しかも、こんな写真まで撮るなど…!」

「この女とは、もう二度と会わないと誓ったのに…あなたはそれを破りました。だから、もうあなたとは離縁します。そして約束通り、この家と財産は全て私が貰いますから…あなたは、ここを出て行って頂戴。」

「や、約束って─。」


 
 夫は忘れて居た様だが…一度目の裏切りが発覚した際、もしまた不貞を犯したら、私に慰謝料としてこの家と財産を譲り渡すと約束して居たのだ。

 しかもそれは、誓約書として形に残され…そこには彼の直筆のサインまであった。

 夫はそれを漸く思い出した様で…途端に青い顔になり、私に許してくれと泣きついて来た。

 だが私は、当然それを許す事は無く…彼と離縁すると言う意思は変わらなかった。



 すると夫は、そんな私に逆切れし…家と金はくれてやる、だが独り身になったお前は孤独な人生を送るだけだと言い、家を飛び出して行った。

 しかし私は、彼の言葉に全く傷付く事は無く…むしろ、辛い人生を歩む事になるのはあの男の方だと思った。

 だって…あの女の借金は、本当はまだ完済などして居ないもの。
 
 むしろ、あの時のよりもその額が増えて居る事まで、従者の調べで分かって居る。

 そうとも知らず、あの女と一緒になれば…あなたはこの先、相当苦労する事になるわよ─?


 そして、私の予想通り…その後あの女と再婚した彼は、その時になり漸くその借金の存在に気付いた様で…彼はあっと言う間に破産する事になり、住む場所を失った。

 おまけに、妻となったあの女は借金のカタに娼館に売られてしまい…一人残された彼は、借金取りから逃げ回る日々を送る事に─。

 

 一方、私はと言うと…自身の従者を新たな夫に迎え、幸せに暮らして居た。

 彼はとても気が利くし、賢くて頼りになるし…私に仕えて居た時以上に私を大事にし…そして、一人の女として愛してくれた。

 私達の夫婦仲は良好で…彼と結婚してから一年後には、子供も授かる事が出来て…親子三人、幸せな日々を送って居る。

 そしてそんな私達を見た元夫が、涙を流し去って行く所を一度だけ見たが…もしかしたら、私に復縁でも迫りに来たのかも知れないけれど…今の私には、あなたなどもう要らないの。

 あなたはこの先、孤独で虚しい人生を一人で生きて行くのよ─。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾り呼ばわりされた公爵令嬢の本当の価値は

andante
恋愛
婚約者を奪おうとする令嬢からからお飾り扱いだと侮辱される公爵令嬢。 しかし彼女はお飾りではなく、彼女を評価する者もいた。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

絵姿

金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。 それなのに……。 独自の異世界の緩いお話です。

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

自信過剰なワガママ娘には、現実を教えるのが効果的だったようです

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵令嬢のアンジェリカには歳の離れた妹のエリカがいる。 母が早くに亡くなったため、その妹は叔父夫婦に預けられたのだが、彼らはエリカを猫可愛がるばかりだったため、彼女は礼儀知らずで世間知らずのワガママ娘に育ってしまった。 「王子妃にだってなれるわよ!」となぜか根拠のない自信まである。 このままでは自分の顔にも泥を塗られるだろうし、妹の未来もどうなるかわからない。 弱り果てていたアンジェリカに、婚約者のルパートは考えがある、と言い出した―― 全3話

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...