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新婚生活が始まったばかりなのに、夫は初恋の人とこの先の人生を歩みたいそうです…。
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私と夫は、昨日結婚式を終えた。
そして初夜を迎え…朝になり隣に眠る彼を見て、これからの結婚生活はきっと幸せなものになるだろう…そう思った。
だがその夜…私は、夫から離縁を告げられる事に─。
「実は、初恋相手と昼間に町で再会してな…。元々可愛かった彼女は、成長し美しい女性へと変わって居た。そんな彼女が、俺の事をずっと探して居た…自分も俺の事がずっと好きだったのだと言ってくれたんだ。その上、独り身だったら自分と結婚してくれないかとまで言ってくれて─。」
「でも、あなたにはもう私が─」
「だからお前と離縁し、俺は独り身に戻りたいんだ。どうせお前との婚約は家同士で決められたものだったんだし…まだ結婚して一日だし、最初から無かった事と思えばいいじゃないか。」
「そ、そんな…。」
夫にとってはそう言う結婚だったかもしれないが…私は、あなたの事を前から慕って居た。
だからあなたと結婚し、妻になれた事がとても嬉しかったのに─。
悲しさと悔しさで、私は思わず涙を零した。
「おいおい、泣くほど悲しい事か?慰謝料はちゃんと払うから許せよ。と言うか…泣く程俺が好きなら、俺の幸せを考えてくれ。だって…初恋相手と再会し、その相手も俺が好きだったなど…これはまさに奇跡、運命だよ。そんな彼女と俺が結ばれる様、お前が身を引いてくれよ。」
この人…お金さえ払えば許されると思ってるの?
この人は、こんなにも情の無い人だったの…?
私は、彼の言葉に驚愕すると同時に…彼への想いが急速に冷めて行くのを感じた。
「分かりました…もうあなたの好きにすればいいわ。」
私の言葉に、彼は満面の笑みを浮かべ…意気揚々と部屋を出て行った。
恐らく、初恋相手に昼間の返事でもしに行ったのだろう。
でも…私を捨て彼女を選んだあなたは、きっと幸せになどなれない。
人の心を踏みにじったあなたは…必ずその報いを受けるわ─。
その後、私はすぐに夫の家を出た。
そしてそれと入れ替わる様に…彼は初恋相手を家に呼び、そこに住まわせた。
彼は彼女と二人、この先幸せに生きて行こう…そう、思って居たに違いない。
だが、そんな日々はあっという間に終わりを迎えた。
と言うのも…あの家が売りに出される事が決まり、彼とその女はそこを追い出される事になったからだ。
でも、それも仕方ない事だわ。
だってあの家の名義人は、私になって居たのだから。
あの家は、私の父がお金を出して建ててくれ…その際名義を娘の私にしてくれて居たのだ。
でも彼と離縁したからには…私の持ち物をどうしようが私の勝手だし、私の持ち物に他人が住んで居るのはおかしな事だものね。
これを機に、邪魔な害虫達にはさっさと出て行って貰わなければいけないわ。
すると…そんな事をされては困ると、元夫が私の元へ駆け込んで来た。
「彼女に言われるまま金を与え続け、宝石やドレスも買い与え…そんな生活をして居たから金がないんだ。そんな時に住む家を失ったら…俺は路頭に迷ってしまう!」
「だったら、彼女に与えたそれらを回収し換金すれば?」
「それが…家を売ると言う話が出た途端、彼女はそれらを持ってどこかへ行ってしまって─。もしかしたら、彼女は最初から俺の金が目当てだったんじゃ…。」
「そうでしょうね。」
私は、ある地方の新聞の切り抜きを元夫に見せた。
そこには、元夫の初恋相手の女の名前と顔写真が掲載され…この女による結婚詐欺に注意しろと書かれて居た。
「あなた…とんでもない悪女に恋をして居たのね。しかも、まんまと騙されて…初恋に夢を見すぎて居たんじゃないの?まぁ、流石に目が覚めたでしょうけれど─。」
この事実に、元夫は体を震わせ涙した。
「た、頼む…俺を助けると思って復縁してくれ!このままじゃ、俺は金も住む処も何もかも失って…そんなの、とても生きて行けない!」
「お断りよ。」
「なッ!?」
「私には、もう素敵な恋人が居るの。しかも、それは初恋の人でね。でも、あなたの初恋相手と違ってすごく真面目で誠実な人だから…安心して恋が出来るわ。そう言う事だから、あなたなどもう要らないの。そもそも、あなたが私を先に捨てた癖に…今更頼って来ないで頂戴─。」
私の言葉に…元夫は更に大粒の涙を流し、私に縋ろうとしたが…使用人達に引き摺られ、この家から叩き出されたのだった─。
その後、彼は路頭に迷う事になり…暫くは町で物乞いの様な暮らしをして居たが、いつしかその姿を見なくなり…今は何処でどうして居るかは分からない。
一方、私はと言うと…初恋相手との交際は順調で…来年にも再婚し様と言う話になって居る。
再婚と言っても…気分的には、初婚の様なものだけれどね。
何せ前回は、甘い新婚生活を味わう間もなく一瞬で終わってしまったから…。
でも今度こそは…今の彼と、幸せで穏やかな結婚生活をいつまでも送りたいと願って居るわ─!
そして初夜を迎え…朝になり隣に眠る彼を見て、これからの結婚生活はきっと幸せなものになるだろう…そう思った。
だがその夜…私は、夫から離縁を告げられる事に─。
「実は、初恋相手と昼間に町で再会してな…。元々可愛かった彼女は、成長し美しい女性へと変わって居た。そんな彼女が、俺の事をずっと探して居た…自分も俺の事がずっと好きだったのだと言ってくれたんだ。その上、独り身だったら自分と結婚してくれないかとまで言ってくれて─。」
「でも、あなたにはもう私が─」
「だからお前と離縁し、俺は独り身に戻りたいんだ。どうせお前との婚約は家同士で決められたものだったんだし…まだ結婚して一日だし、最初から無かった事と思えばいいじゃないか。」
「そ、そんな…。」
夫にとってはそう言う結婚だったかもしれないが…私は、あなたの事を前から慕って居た。
だからあなたと結婚し、妻になれた事がとても嬉しかったのに─。
悲しさと悔しさで、私は思わず涙を零した。
「おいおい、泣くほど悲しい事か?慰謝料はちゃんと払うから許せよ。と言うか…泣く程俺が好きなら、俺の幸せを考えてくれ。だって…初恋相手と再会し、その相手も俺が好きだったなど…これはまさに奇跡、運命だよ。そんな彼女と俺が結ばれる様、お前が身を引いてくれよ。」
この人…お金さえ払えば許されると思ってるの?
この人は、こんなにも情の無い人だったの…?
私は、彼の言葉に驚愕すると同時に…彼への想いが急速に冷めて行くのを感じた。
「分かりました…もうあなたの好きにすればいいわ。」
私の言葉に、彼は満面の笑みを浮かべ…意気揚々と部屋を出て行った。
恐らく、初恋相手に昼間の返事でもしに行ったのだろう。
でも…私を捨て彼女を選んだあなたは、きっと幸せになどなれない。
人の心を踏みにじったあなたは…必ずその報いを受けるわ─。
その後、私はすぐに夫の家を出た。
そしてそれと入れ替わる様に…彼は初恋相手を家に呼び、そこに住まわせた。
彼は彼女と二人、この先幸せに生きて行こう…そう、思って居たに違いない。
だが、そんな日々はあっという間に終わりを迎えた。
と言うのも…あの家が売りに出される事が決まり、彼とその女はそこを追い出される事になったからだ。
でも、それも仕方ない事だわ。
だってあの家の名義人は、私になって居たのだから。
あの家は、私の父がお金を出して建ててくれ…その際名義を娘の私にしてくれて居たのだ。
でも彼と離縁したからには…私の持ち物をどうしようが私の勝手だし、私の持ち物に他人が住んで居るのはおかしな事だものね。
これを機に、邪魔な害虫達にはさっさと出て行って貰わなければいけないわ。
すると…そんな事をされては困ると、元夫が私の元へ駆け込んで来た。
「彼女に言われるまま金を与え続け、宝石やドレスも買い与え…そんな生活をして居たから金がないんだ。そんな時に住む家を失ったら…俺は路頭に迷ってしまう!」
「だったら、彼女に与えたそれらを回収し換金すれば?」
「それが…家を売ると言う話が出た途端、彼女はそれらを持ってどこかへ行ってしまって─。もしかしたら、彼女は最初から俺の金が目当てだったんじゃ…。」
「そうでしょうね。」
私は、ある地方の新聞の切り抜きを元夫に見せた。
そこには、元夫の初恋相手の女の名前と顔写真が掲載され…この女による結婚詐欺に注意しろと書かれて居た。
「あなた…とんでもない悪女に恋をして居たのね。しかも、まんまと騙されて…初恋に夢を見すぎて居たんじゃないの?まぁ、流石に目が覚めたでしょうけれど─。」
この事実に、元夫は体を震わせ涙した。
「た、頼む…俺を助けると思って復縁してくれ!このままじゃ、俺は金も住む処も何もかも失って…そんなの、とても生きて行けない!」
「お断りよ。」
「なッ!?」
「私には、もう素敵な恋人が居るの。しかも、それは初恋の人でね。でも、あなたの初恋相手と違ってすごく真面目で誠実な人だから…安心して恋が出来るわ。そう言う事だから、あなたなどもう要らないの。そもそも、あなたが私を先に捨てた癖に…今更頼って来ないで頂戴─。」
私の言葉に…元夫は更に大粒の涙を流し、私に縋ろうとしたが…使用人達に引き摺られ、この家から叩き出されたのだった─。
その後、彼は路頭に迷う事になり…暫くは町で物乞いの様な暮らしをして居たが、いつしかその姿を見なくなり…今は何処でどうして居るかは分からない。
一方、私はと言うと…初恋相手との交際は順調で…来年にも再婚し様と言う話になって居る。
再婚と言っても…気分的には、初婚の様なものだけれどね。
何せ前回は、甘い新婚生活を味わう間もなく一瞬で終わってしまったから…。
でも今度こそは…今の彼と、幸せで穏やかな結婚生活をいつまでも送りたいと願って居るわ─!
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