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妹が私の夫の事を素敵だと褒めちぎるので、彼女に譲ってあげる事にします──。
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「お姉様の旦那様って、本当に素敵よね…。顔もカッコいいし、体つきも逞しくて…。毎日傍に居られる何て、本当に羨ましい─。」
そう言って、うっとりとした表情で庭に居る夫を見る妹。
「…そんなに彼を素敵だと言うのなら…だったら、あなたに彼を譲りましょうか?」
「…え?」
「あなたに、妻の座を譲ってあげようかって言ってるの─。」
私の言葉に、妹は一瞬驚いた顔を見せたが…目を輝かせ、私の方へやって来た。
「本当!?本当に、彼を私にくれるの!?」
「えぇ。前から思って居たのよ…。美形の彼に、地味な私は釣り合わない…。彼には、美しいあなたの方がふさわしいって─。」
「お姉様…!」
こうして、私は夫に離縁の意思を伝え…と同時に、私の妹があなたに恋い焦がれて居るから…彼女を新しい妻に迎えてあげて欲しいとお願いした。
すると彼は、あっさりそれを了承し…私はこの家を出て行く事になったのだ。
しかし、こんなに簡単に彼と別れられたのは…あの二人が、前から浮気関係にあったからだった。
二人は、必死にそれを隠し…私が、何も気付いて居ないと思って居た様だが…私は、ちゃんとお見通しだった。
そして、妹が毎回家にやってくる度に彼を誉めるのは…あんな素敵な方、お姉様に渡したくない…彼は私のものなのだという、アピールの意味である事も理解して居た。
でもね…あの男がそんな素敵な人物だと、私は到底思えないわ。
あなたも、すぐにそれを嫌という程理解する事になるでしょう─。
私は、日が沈み暗くなる空を見上げ、そう思った。
その翌日の事だ─。
朝早く、妹が髪も服も乱れたまま実家へと戻って来て、私にこう訴えた。
「あの男、一体何なの!?夜になったら、まるで別人みたいになっちゃって…。顔も体型も、豚の様に醜くなったのよ!」
「だってそれが、彼の本当の姿だもの。」
「なッ!?」
「彼はね、学生時代にある生徒を虐め…それによって、呪いを受けたそうよ。昼間はとてつもない美形の姿になれるけれど…夜になったら、本当の姿に戻るという呪いをね。皆、昼間のあの美しい彼に騙され、彼を素敵だと好きになるけれど…夜になり真実の姿を知ったら、途端に恋心を無くしてね…。それで彼、今まで結婚できずに居たの。まぁ、最終的に金に物を言わせ、私との結婚に至ったけれどね。」
「そんな…。」
「でも、私はそんな彼が嫌で嫌で…。容姿は勿論だけど、虐めをして居ただけあって性格は悪いし…。あの人、怒るとすぐにキレて手が出るの。そんな彼に怯えながらの生活が、私は本当に嫌だった。でも、あなたが寝取ってくれたと知った時は最高に嬉しかったわ!このままあなたが彼と上手く行けば、彼をあなたに押し付ける事が出来るから─。」
「お、お姉様…そんなの酷い!」
妹は、真実を知り号泣した。
「酷いも何も…あなたの金遣いが荒いから、この家は借金など抱えてしまったんじゃない。そのせいで、あの男に目を付られ…私はあの男と結婚する羽目になったのよ?あなたはその時、別の殿方と付き合ってたから犠牲にならずに済んだけれど…今度は逃がさないから。あら…丁度お迎えが来たわね。」
部屋のドアを激しく叩く音がし、元夫が怒鳴る声が聞こえて来る。
どうやら、妹が何も言わずに出て行った事に相当怒っている様だ。
「ほら、ドアを開けてあげなさい。今は日が昇って居るから…あなたの大好きな、美しい顔の彼がそこに居るわよ?」
「い、いやあぁ─!」
こうして妹は、怒った彼によって髪を引っ張られ、彼の家に連れ戻されてしまった。
あの様子では、激しく折檻された後に、罰として地下牢行きかしら?
まぁ…暫くしたら出して貰えるから、彼の機嫌が直るまで大人しく過ごす事ね。
妹を見送った私は…もう二度と、あの子がここに帰って来ない事を祈った。
だって…もう、あんな男に関わりたくないもの─。
その後…私は呪いなど受けて居ない性格も穏やかで優しい、素敵な殿方と再婚した。
彼は、昼も夜も関係なく…いつだって変わらぬ姿で、私だけを一途に愛してくれる。
まさにこれが、私がずっと望んで居た結婚生活だわ─。
そう言って、うっとりとした表情で庭に居る夫を見る妹。
「…そんなに彼を素敵だと言うのなら…だったら、あなたに彼を譲りましょうか?」
「…え?」
「あなたに、妻の座を譲ってあげようかって言ってるの─。」
私の言葉に、妹は一瞬驚いた顔を見せたが…目を輝かせ、私の方へやって来た。
「本当!?本当に、彼を私にくれるの!?」
「えぇ。前から思って居たのよ…。美形の彼に、地味な私は釣り合わない…。彼には、美しいあなたの方がふさわしいって─。」
「お姉様…!」
こうして、私は夫に離縁の意思を伝え…と同時に、私の妹があなたに恋い焦がれて居るから…彼女を新しい妻に迎えてあげて欲しいとお願いした。
すると彼は、あっさりそれを了承し…私はこの家を出て行く事になったのだ。
しかし、こんなに簡単に彼と別れられたのは…あの二人が、前から浮気関係にあったからだった。
二人は、必死にそれを隠し…私が、何も気付いて居ないと思って居た様だが…私は、ちゃんとお見通しだった。
そして、妹が毎回家にやってくる度に彼を誉めるのは…あんな素敵な方、お姉様に渡したくない…彼は私のものなのだという、アピールの意味である事も理解して居た。
でもね…あの男がそんな素敵な人物だと、私は到底思えないわ。
あなたも、すぐにそれを嫌という程理解する事になるでしょう─。
私は、日が沈み暗くなる空を見上げ、そう思った。
その翌日の事だ─。
朝早く、妹が髪も服も乱れたまま実家へと戻って来て、私にこう訴えた。
「あの男、一体何なの!?夜になったら、まるで別人みたいになっちゃって…。顔も体型も、豚の様に醜くなったのよ!」
「だってそれが、彼の本当の姿だもの。」
「なッ!?」
「彼はね、学生時代にある生徒を虐め…それによって、呪いを受けたそうよ。昼間はとてつもない美形の姿になれるけれど…夜になったら、本当の姿に戻るという呪いをね。皆、昼間のあの美しい彼に騙され、彼を素敵だと好きになるけれど…夜になり真実の姿を知ったら、途端に恋心を無くしてね…。それで彼、今まで結婚できずに居たの。まぁ、最終的に金に物を言わせ、私との結婚に至ったけれどね。」
「そんな…。」
「でも、私はそんな彼が嫌で嫌で…。容姿は勿論だけど、虐めをして居ただけあって性格は悪いし…。あの人、怒るとすぐにキレて手が出るの。そんな彼に怯えながらの生活が、私は本当に嫌だった。でも、あなたが寝取ってくれたと知った時は最高に嬉しかったわ!このままあなたが彼と上手く行けば、彼をあなたに押し付ける事が出来るから─。」
「お、お姉様…そんなの酷い!」
妹は、真実を知り号泣した。
「酷いも何も…あなたの金遣いが荒いから、この家は借金など抱えてしまったんじゃない。そのせいで、あの男に目を付られ…私はあの男と結婚する羽目になったのよ?あなたはその時、別の殿方と付き合ってたから犠牲にならずに済んだけれど…今度は逃がさないから。あら…丁度お迎えが来たわね。」
部屋のドアを激しく叩く音がし、元夫が怒鳴る声が聞こえて来る。
どうやら、妹が何も言わずに出て行った事に相当怒っている様だ。
「ほら、ドアを開けてあげなさい。今は日が昇って居るから…あなたの大好きな、美しい顔の彼がそこに居るわよ?」
「い、いやあぁ─!」
こうして妹は、怒った彼によって髪を引っ張られ、彼の家に連れ戻されてしまった。
あの様子では、激しく折檻された後に、罰として地下牢行きかしら?
まぁ…暫くしたら出して貰えるから、彼の機嫌が直るまで大人しく過ごす事ね。
妹を見送った私は…もう二度と、あの子がここに帰って来ない事を祈った。
だって…もう、あんな男に関わりたくないもの─。
その後…私は呪いなど受けて居ない性格も穏やかで優しい、素敵な殿方と再婚した。
彼は、昼も夜も関係なく…いつだって変わらぬ姿で、私だけを一途に愛してくれる。
まさにこれが、私がずっと望んで居た結婚生活だわ─。
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