『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

人生をやり直すと私を捨て愛人と出て行った夫は、その選択を後悔する事になりました。

　結婚して暫くになるが、私と夫の間には未だ子が出来ない。

　すると夫は、そんな女を妻に迎え後悔して居ると私を責め立てた。



　そして、私とは元々家同士の繋がりで結婚しただけ…父親の命で仕方なく地味な私を妻に迎えただけで、本当は大して好きでもなかったと暴露するのだった。

　しかも、父親が病で死んだし良い機会だ…私とはもう離縁し、愛人と共にこの地を出て人生をやり直すのだと宣言した。



　少し前から夫が頻繁に家を空ける事が気になって居たが…まさかそんな相手が居たとは─。

　しかし、何もかも捨てて暮らして行けるアテはあるのだろうか…？

　

　私がそう問えば、夫は何の問題も無いと言い切った。

　と言うのも…愛人が買った山から金が採れる事が明らかとなった、それを商売にすれば楽に稼げると言うのだ。



　そして夫は私に一方的に離縁を告げ、迎えに来た愛人と共に家を出て行こうとしたが…私は馬車に乗ったその女の顔を見て思わず彼を引き留め、その女の言う事は確かなのか…彼女と一緒になる事をもう一度よく考えた方が良いと伝えた。



　しかし夫は、別れたいと言って居るのにしつこい…これ以上引き止めるなと私を冷たく突き放した。

　そして手切れ金だといくつもの札束を鞄から出し私に乱暴に投げつけ、彼女と共に去って行くのだった─。



　だがそれから暫くし…元夫が本当は何の価値も無いその山を愛人から騙され買わされて、手持ちの財産の全てを失ったと言う噂が流れて来た。

　おまけに、そのすぐ後に愛人は元夫よりも若く美形の男と逃げてしまい…結局彼は彼女に裏切られ捨てらてしまったと言う。



　実は、彼女の狙いは始めから元夫が持つ財産だった。

　彼女はその色香で元夫に近づき、金が採れる山などと言う嘘で彼を魅了…後にそれを買わせ、その金を自分と本命の男とで山分けして居たのだ。



　そして彼女は、実は私の元同級生で…彼女はその意地悪な性格で虐めを繰り返して居たが、生徒会に所属して居た私がその証拠を集め、それが元で彼女は退学となった過去がある。
　
　私の夫を狙い離縁までさせたのは、その過去の恨みを晴らす為だったと見て間違いないだろう。

　

　あの時愛人の顔を見て元夫を引き留めたのは、そんな因縁がある彼女とそっくりだったらから…。

　だから元夫に用心しろと言いたかったけれど…結局それを伝える前に捨てられてしまい、どうしようも出来なかったわ─。



　その後、元夫はその山を売ろうとしたが…そこは金どころか毒の沼があると恐れられて居た山だったらしく、全く買い手が付かなかった。

　そうなって、彼は私の元に戻って来ようとしたが…彼は出て行く際、ご丁寧に家も土地も全て私に譲る…復縁など絶対あり得ないと言った書き置きを残して居た為、それが効力を持ち叶う事は無かった。



　そしてその後、元夫は愛人に裏切られたショックや離縁のストレスから病に罹り…その山の中で野垂れ死にしたと言う。



　一方、私はと言うと…元夫が投げてよこしたお金や家に残って居た財産を元手に、新たな事業を立ち上げて居た。
　
　そしてそれには、かつて共に生徒会で活躍した元生徒会長であり…初恋の彼が力を貸してくれて居た。


　
　彼とは学園卒業後も僅かだが交流があったが…今回の件を知った彼が私を心配し、頻繁に訪ねてくれるようになって居た。

　そして、自分が力を貸すからもう一度人生をやり直してみないかと励ましてくれて居たのだ。



　私はその言葉に従い、一生懸命事業に取り組み…それは見事軌道に乗った。

　すると彼は、そんな私を公私共に支えたい…自身の妻になって欲しいと言ってくれたのだ。



　彼は、真面目で頑張り屋の私を昔から気に掛けて居たそうで…再び共に過ごす内に、それが愛へと変わったと言う。


　
　そしてその頃には、私も彼への恋心が再び目覚めており…その気持ちに喜んで応える事に─。


　
　こうして気持ちが通じ合った私達は、その後交際を始め…事業が落ち着く翌年には結婚する約束をし、幸せな日々を送って居るわ─。