『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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身重の姉が私の夫を引き連れ突然家に訪ねて来ると、彼と離縁するよう要求して来ました。

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 お相手から、望まれる形で結婚した私。

 夫となった彼は好きな人に構って貰いたい性格らしく、私達はいつも一緒に過ごして居た。

 ただ私は割と淡白な方で、一人で行動する事も嫌いでは無かった。

 

 結婚後、私達夫婦はそれなりに上手くやって居たが…私には、ある気掛かりな事が─。

 それは、姉や両親との今後の関わり方ついてだ。



 姉は昔から怠け者で我儘で…今になっても自立する事無く、両親に甘えて居る。

 両親も、最初に生まれた我が子可愛さに姉を咎める事はせず…そんな家庭の内情を見て来た私は、早くから独立心を持って居た。

 そして結婚してからも、私は夫と実家を関わらせる事はずっと避けて居て…これから先もそうしたいと願って居た。



 こうして新婚生活を過ごす中…事業を立ち上げた友人から、それを手伝ってくれない活かせるかと言う誘いを私は受けた。

 色々な国の人と関わる事が出来ると聞き、語学が得意な私はそれを活かせる事を嬉しく思い了承した。

 またそんな私を、夫は応援すると言ってくれた。



 だが友人の事業が軌道に乗ると、それに伴い私も忙しくなり…今までのように夫と過ごす時間が減って行った。
 
 夫に申し訳なく思った私は、時間が取れる時はなるべく彼と過ごずよう努めたが…その内、彼の様子に変化が現れた。



 と言うのも、夫は家を空ける日が多くなり…漸く帰って来ても真夜中で、私と顔を合わせる事無く眠りについてしまう。
 
 そんな事を繰り返される内、私は夫に愛人か浮気相手が出来たのだろうと思うよう─。



 するとそれから半年程経った頃…一人で留守番をして居る私の元に、姉と両親がやって来た。

 今日は夫に大事な話があったのに、間の悪い事だ─。

 そう思い仕方なく家に招き入れようとすると、姉のお腹がふっくらして居る事に私は気付いた。



 すると、姉は嫌な笑みを浮かべこう言った。

 実はこの度めでたく身籠ったのだけれど、それをあなたに教えに来た─。



 するとそんな姉達の後ろから、家を空けて居た私の夫がひょっこり顔を出した。

 そして姉の肩に手を添え、実はそのお腹の子の父親は自分なのだと私に告げて来た。



 それに対し声も出ない私に、姉はこう言った。

 私は彼の子を産み、彼とも一緒になるから…あなたは彼と今すぐ離縁してくれない?



 そしてそんな姉に続き、両親も私にこう訴えかけた。

 お前はまだ若いから、いくらでも相手が見つかるし子も産める…。
 
 でもこの子はもういい年だし、何よりこんなに彼を愛し子まで作ったのだから…潔く姉に彼を譲ってあげなさい。



 それを聞いた時、ここに居るのは全員敵なのだと私は感じた。

 そして夫に、どうしてそんな事になったのか…よりにもよってどうして私の姉なのかと尋ねた。



 すると夫は、お前が俺を構ってくれないから悪いんだ…俺を一人にするから寂しさの余りこうなっただけだと、私を責め自分を擁護した。

 また、俺は元々家庭的な妻を望んで居た…社会と関わろうとするお前は俺の理想ではなくなったからもう要らないと思うようになった─。

 そんな頃、街の酒場で君のお姉さんに偶然出会い…その心の内を聞いて貰って居る内に、良い仲になってしまった。


 
 そしてつい出来心で一度だけ肉体関係を持ったら、その一回で子が出来た。
 
 君のお姉さんはどうしても生みたいと言うし…先に君の両親にその事を相談したらお姉さんを選んで欲しいと言われたので、お前と離縁する事を決めた─。



 その話を聞いた私は、すっかり夫への愛が覚め…またそんな事をしておきながら悪びれない姉やそれを庇う両親にも愛想が尽き、今日限りで全員とすっぱり縁を切る事にした。


 
 こうして私は夫と離縁し彼と暮らした家を出ると、実家にも戻れない事から友人の元で暫くお世話になる事に─。



 一方、夫を婿に迎えるつもりで家に迎えた姉と両親だが…その後思わぬ事態に巻き込まれた。
 
 と言うのも、事業を成功させ金持ちだと思って居た元夫は、実は事業が上手く行っておらず…多額の負債を抱えて居た事を知ってしまったのだ。



 金持ちの男を摑まえ今後楽な暮らしをしようと思って居た姉は落胆したが、もう出産間近で後に引き返せなくなっておりどうする事も出来なかった。

 するとお金には細かい両親は、借金などと言う面倒事を持ち込んだ姉に次第に愛想を尽かし始めた。



 そんな中、家に借金取りが押しかけ…逃げようとした元夫は捕まり、どこかへと連れて行かれてしまった。

 そしてそのどさくさの中、両親は借金を押し付けられては堪らないと身重の姉を置き去りに逃げてしまい、姉は一人置き去りにされてしまった。

 そのショックで姉は子を早産…偶然家を訪ねた遠い親戚に発見されるのだった。

 
 
 その後…元夫は借金のカタに奴隷として金持ちの未亡人の元に売られ、毎日のように奉仕されて居るらしい。

 親子以上に年の離れた女に求められ、彼は地獄のような苦しみを味わって居ると言う。


 
 また両親は、この地から逃亡する際に山を越えようとしたが…その道中で道に迷ったらしく、暫くの後に遺体で発見された。


 
 そして姉はと言うと…生まれた子に罪は無いからと、彼女を発見した親戚が引き取り育ててくれたが…姉自身はこれから先は自分の力で生きて行く事を迫られた。

 だが学も無く、今まで両親に甘え何もして来なかった姉が人様の役に立てるはずも無く…彼女は自らの身を売る事で、何とか暮らして居ると言う。
 


 一方、私はと言うと…姉や元夫が金の無心に来たらと不安に思って居たが、そうなる前に事業で知り合った異国のお金持ちの殿方に見初められ、友人の家から彼の国にあるお屋敷へと旅立って居た。



 実は私は友人の事業を手伝う内、元夫の事業の業績を知る事になり…彼が私に隠れ、多額の借金をして居る事に気付いてしまった。

 その為、子供を望む私は彼と今後どうするかを話し合うつもりで居たが…あんな事になり、その必要も無くなったと言う訳だった。



 姉の事が無くても、あのままあの人と結婚して居たら私も間違いなく不幸になって居た。

 そう思うと、あの時姉が押しかけて来てくれたのは実にタイミングが良かったのね。



 その後異国の地での生活にも慣れた私は、彼と再婚する事になり…すぐに子供にも恵まれ、温かな家庭を築き幸せな日々を送って居るわ─。
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