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戦場で聖女様を助け家に迎え入れた騎士の夫は、後に反逆者と呼ばれる事となりました…。
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私の夫は、この国の騎士団に所属して居る。
そんな夫は傲慢で妻の私を見下し、時には手を上げるような人で…私は内心、そんな彼を恐れて居た。
するとある日、その夫が戦場で傷ついた聖女と出会った。
彼女は旅の途中、偶然戦場に迷い込んでしまったらしく…身動きできず困って居る所を夫に発見されたのだ。
夫はとりあえず彼女を家に連れ帰って来たが、彼女が元気になったら王と謁見させる予定だと言う。
と言うのも、この国には未だ聖女が居らず…聖女を連れて来た自分は大手柄だと大層王に感謝される─。
そしてその褒美として、金や騎士団長の座を贈られるかも知れないと考えたのだ。
だが私は、夫が連れて来た彼女に不信感を抱いて居た。
だって、聖女ならばそんな危険な地を察知し避ける事が出来るのではないだろうか。
それに聖女なら傷を負う事も無く…もし傷を負ったとしても、己の治癒力ですぐに治してしまうものなのでは─?
私はその疑問を恐る恐る夫にぶつけたが…お前は細かい事を気にしすぎだ、本物の聖女を見た事が無いのに知った口を利くなと私の頬を打った。
そしてそんな様子を間近で見て居る彼女はと言うと…そんな私を助ける事も無く、むしろ興味なさげと言った感じでソファーにくつろいで居た。
するとその日から、夫は聖女様に早く元気になって貰わねばと甲斐甲斐しく世話を焼くようになり…彼女もまた、そんな夫に思い切り甘えるのだった。
夫は、彼女から向けられる好意に鼻の下を伸ばし大喜びして居た。
彼女はとても美しく可憐で…そんな女性に甘えられれば、男なら悪い気はしないのだろう。
でも、妻としてこの状況は複雑だわ─。
すると彼女は、元気になったら自分も戦場に立ち…お世話になったあなたの役に立ちたいと夫に話した。
そしてまずはその為にも、騎士団にはどれだけの人が居るのか…あの戦場では今後どう言った戦いを展開しようとして居るのか教えて欲しいと言う。
それを聞いた夫は、一瞬迷ったものの…彼女のお願いと言う言葉に負け口を開いた。
だが私は、そんな夫を慌てて止め…そんな大事な事を勝手に彼女に話してはいけないと制止した。
すると彼女の前で恥をかかされたと感じた夫は、私の髪を掴み部屋から引き摺り出し…俺と彼女の間に割り込んで来て鬱陶しい、彼女が元気になるまで実家に帰って居ろと私を家から叩き出してしまった。
前々から私を見下し暴力的なあの人には嫌気が差して居たが、もう我慢の限界よ…。
だけど、彼女が騎士団の事をやたら気にする事が心配だ。
そう思った私は、この件を報告する為騎士団が置かれて居るお城に向かう事にした。
そしてこの件を私から聞いた騎士団長は激怒…すぐに王へ報告した。
その後、私は王に謁見する事が叶い…その聖女の特徴や、夫が何を話したかを質問される事となった。
そこで分かった事だが…この国に聖女が居ないのを良い事に、敵国が聖女のフリをした間者を戦場に送り出して居ると言う事だった。
そう言った女はとても美しく、その色香に騙された男がこの国の事を何でも話してしまい…そうして情報を得た患者は、すぐに姿を消してしまうと言う。
そして夫が戦場から連れ帰った聖女はその間者で、彼女が情報を自国に持ち帰る前に何とかしなければならないと王は言った。
だがその時…途中まで一緒だった聖女が消えてしまったと大騒ぎする夫が城にやって来た。
そして兵達を振り切り、私と話す王の間に入るとこう言った。
この国初となる聖女を連れて来たのですが、直前で見失ってしまいました。
だが彼女はこの国の力になると約束してくれて居るので、ご安心を─。
…どうやら夫は、未だ彼女を聖女だと信じて居るらしい。
すると呆れた目で見る私に夫が気付き、どうしてお前がここに居る…大人しく実家に帰れと人目も気にせず怒鳴るのだった。
だが、そんな夫を制止したのは王だった。
そして、まさかお前は彼女に尋ねられるままこの国の情報を教えたのかと尋ね…その言葉に、夫はその通りですと全く悪びれる事無く返事をした。
すると王様は、何て馬鹿な事をしたのだと夫を咎め…敵国の間者に情報を渡すなどこの国への反逆に値すると、罰として夫を牢に幽閉する事を決めた。
そしてこの時になり、漸く夫は自分が大変な事をしてしまったと気付いたらしく…彼女の正体や消えた理由も理解するのだった。
その後、夫のした事げ原因で戦況が一時悪化してしまい…彼は一生牢に幽閉される事が決まった。
一方、私はと言うと…怪しい者を見抜く目と賢さは大したものだと王にお褒めの言葉を頂く事となった。
そしてあんな愚かな男の妻をやって居るのは勿体ないと、私は騎士団長の妻になる事を勧められた。
彼はずっと剣一筋で、浮ついた噂も無くお堅い人だった。
だが話してみれば、とても誠実で優しい方で…夫から大事にされて来なかった私は、すぐにそんな彼に心惹かれた。
また彼も、真面目で家庭的な私をとても好いてくれ…その後、私達はめでたく結婚する事に─。
そして騎士団長である彼は、その後の再び戦況を優勢に戻し…見事この国を勝利させ、英雄の称号を王から授かったのだった。
するとそれ以降、争いは全く起きなくなり…平和になった世で、私は彼と温かく幸せな家庭を築いて居るわ─。
そんな夫は傲慢で妻の私を見下し、時には手を上げるような人で…私は内心、そんな彼を恐れて居た。
するとある日、その夫が戦場で傷ついた聖女と出会った。
彼女は旅の途中、偶然戦場に迷い込んでしまったらしく…身動きできず困って居る所を夫に発見されたのだ。
夫はとりあえず彼女を家に連れ帰って来たが、彼女が元気になったら王と謁見させる予定だと言う。
と言うのも、この国には未だ聖女が居らず…聖女を連れて来た自分は大手柄だと大層王に感謝される─。
そしてその褒美として、金や騎士団長の座を贈られるかも知れないと考えたのだ。
だが私は、夫が連れて来た彼女に不信感を抱いて居た。
だって、聖女ならばそんな危険な地を察知し避ける事が出来るのではないだろうか。
それに聖女なら傷を負う事も無く…もし傷を負ったとしても、己の治癒力ですぐに治してしまうものなのでは─?
私はその疑問を恐る恐る夫にぶつけたが…お前は細かい事を気にしすぎだ、本物の聖女を見た事が無いのに知った口を利くなと私の頬を打った。
そしてそんな様子を間近で見て居る彼女はと言うと…そんな私を助ける事も無く、むしろ興味なさげと言った感じでソファーにくつろいで居た。
するとその日から、夫は聖女様に早く元気になって貰わねばと甲斐甲斐しく世話を焼くようになり…彼女もまた、そんな夫に思い切り甘えるのだった。
夫は、彼女から向けられる好意に鼻の下を伸ばし大喜びして居た。
彼女はとても美しく可憐で…そんな女性に甘えられれば、男なら悪い気はしないのだろう。
でも、妻としてこの状況は複雑だわ─。
すると彼女は、元気になったら自分も戦場に立ち…お世話になったあなたの役に立ちたいと夫に話した。
そしてまずはその為にも、騎士団にはどれだけの人が居るのか…あの戦場では今後どう言った戦いを展開しようとして居るのか教えて欲しいと言う。
それを聞いた夫は、一瞬迷ったものの…彼女のお願いと言う言葉に負け口を開いた。
だが私は、そんな夫を慌てて止め…そんな大事な事を勝手に彼女に話してはいけないと制止した。
すると彼女の前で恥をかかされたと感じた夫は、私の髪を掴み部屋から引き摺り出し…俺と彼女の間に割り込んで来て鬱陶しい、彼女が元気になるまで実家に帰って居ろと私を家から叩き出してしまった。
前々から私を見下し暴力的なあの人には嫌気が差して居たが、もう我慢の限界よ…。
だけど、彼女が騎士団の事をやたら気にする事が心配だ。
そう思った私は、この件を報告する為騎士団が置かれて居るお城に向かう事にした。
そしてこの件を私から聞いた騎士団長は激怒…すぐに王へ報告した。
その後、私は王に謁見する事が叶い…その聖女の特徴や、夫が何を話したかを質問される事となった。
そこで分かった事だが…この国に聖女が居ないのを良い事に、敵国が聖女のフリをした間者を戦場に送り出して居ると言う事だった。
そう言った女はとても美しく、その色香に騙された男がこの国の事を何でも話してしまい…そうして情報を得た患者は、すぐに姿を消してしまうと言う。
そして夫が戦場から連れ帰った聖女はその間者で、彼女が情報を自国に持ち帰る前に何とかしなければならないと王は言った。
だがその時…途中まで一緒だった聖女が消えてしまったと大騒ぎする夫が城にやって来た。
そして兵達を振り切り、私と話す王の間に入るとこう言った。
この国初となる聖女を連れて来たのですが、直前で見失ってしまいました。
だが彼女はこの国の力になると約束してくれて居るので、ご安心を─。
…どうやら夫は、未だ彼女を聖女だと信じて居るらしい。
すると呆れた目で見る私に夫が気付き、どうしてお前がここに居る…大人しく実家に帰れと人目も気にせず怒鳴るのだった。
だが、そんな夫を制止したのは王だった。
そして、まさかお前は彼女に尋ねられるままこの国の情報を教えたのかと尋ね…その言葉に、夫はその通りですと全く悪びれる事無く返事をした。
すると王様は、何て馬鹿な事をしたのだと夫を咎め…敵国の間者に情報を渡すなどこの国への反逆に値すると、罰として夫を牢に幽閉する事を決めた。
そしてこの時になり、漸く夫は自分が大変な事をしてしまったと気付いたらしく…彼女の正体や消えた理由も理解するのだった。
その後、夫のした事げ原因で戦況が一時悪化してしまい…彼は一生牢に幽閉される事が決まった。
一方、私はと言うと…怪しい者を見抜く目と賢さは大したものだと王にお褒めの言葉を頂く事となった。
そしてあんな愚かな男の妻をやって居るのは勿体ないと、私は騎士団長の妻になる事を勧められた。
彼はずっと剣一筋で、浮ついた噂も無くお堅い人だった。
だが話してみれば、とても誠実で優しい方で…夫から大事にされて来なかった私は、すぐにそんな彼に心惹かれた。
また彼も、真面目で家庭的な私をとても好いてくれ…その後、私達はめでたく結婚する事に─。
そして騎士団長である彼は、その後の再び戦況を優勢に戻し…見事この国を勝利させ、英雄の称号を王から授かったのだった。
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