『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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心優しいと皆から慕われる夫ですが、子を授からない私に対し酷い裏切りをして居ました。

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 事業が成功し一財産築いた夫は、身寄りがない子供達の為孤児院を作る事を決めた。

 裕福な者が困って居る者を助けるのは当たり前だ、是非子供達の力になりたいと夫は言い…そんな夫を周りの皆は立派だ、何て心優しいのだと称賛した。



 また私も、子供は好きだが一向に恵まれない事もあり…そこに迎えられた子供達を大事にしようと心に誓った。



 その後建てられた孤児院には、色んな地から十人ほどの子供が集まり…子供達は皆、自分を受け入れてくれた夫の事を慕い大層懐いた。

 

 私はそんな子供達が可愛いと思い、夫と同じように子供達の事を可愛がろうとした。

 しかし夫は、自分が引き取った子達だからお前は可愛がらなくていい─。

 子供達も自分が父親代わりになるだけで十分満足して居ると、私を子供達や孤児院から遠ざけようとした。



 そしてそれ以降夫は孤児院の子供達と過ごす事が多くなり、ろくに家に帰って来なくなってしまった。

 周りの皆は、それだけ子供達を大事にして居る立派な人だと夫を褒め称えたが…一人家に残された私は、寂しい思いを抱え毎日を過ごすのだった。



 そんな中、夫の友人で事業の支援者でもある殿方が家を訪ねて来た。
 
 そして夫について、悪い噂がある事を教えてくれた。



 それは、夫が各地に愛人を作って居ると言うもので…彼は一向に子を授からない私に嫌気が差し、代わりに愛人達に自分の子を産ませたと言うものだった。

 そして夫は生まれて来た子供達を孤児院に集め教育し、その中で最も出来のいい子を跡取りに迎える気で居ると言う。



 孤児院は半分が支援者からの支援金で、その維持費も寄付などで賄ったりして居るが…それは子供達が身寄りの無い憐れな子だからで、夫の隠し子だと言うなら話は違って来る。


 
 すると夫の友人は、これが真実ならあなたにとっても支援者である我々にとっても酷い裏切り行為だ─。

 今後は孤児院どころか、事業にも支援金は出せない…協力できないと、夫と縁を切る考えがあると明言した。


 
 それを聞いた私は、今教えられた事が本当かどうか調べる必要があると考え…もし本当なら私も彼同様、夫との今後について考える必要があると思うのだった。



 その後、私は実家の父の協力を得て夫や子供達の身辺調査を開始─。

 その結果、噂は本当であった事が判明─。



 夫は買い付けだと言って各地を回り、美しい女を次々に愛人にして子を産ませて居た。

 そして愛人達の了承を得て子供達を孤児院に集め、私を近づけないようにし教育を施して居たのだった。



 この事は、子を中々授からない私にとっては酷い裏切りで…またそんな夫が、皆に心優しい人物と称され慕われるのは大層許せない事だった。



 こうして怒りに震える私は、夫を呼び出し離縁を言い渡す事に─。

 そしてそれぞれの不貞の分だけ、慰謝料を支払うようにと迫った。



 と同時に、夫は支援者達からも孤児院に関する支援金を全額返せと迫られる事になり…おまけに事業に関する支援金も今後一切貰えなくなってしまった。



 また今まで夫に寄付金を渡して来た者達も、真実を知ると皆激怒し…夫を詐欺師呼ばわりし、お金の返金を迫るのだった。



 すると夫は集めた子供達をこれ以上面倒見る事が出来なくなり、愛人達の元へ帰す事に─。

 だが愛人達は夫にお金の心配は要らないから子を産んでくれと言われて居た事もあり、夫に今後の教育費を何としても捻出させようとした。



 困った夫は家や土地を全て売り払い…こうして得たお金や貯金を私や友人を始めとする支援者、寄付してくれた者達に分配…結果、彼は財産の全てを失うのだった。



 その上で、夫は子供達への教育費を払う為に朝も昼も馬車馬のように働く毎日を送る事となり…私を裏切り軽率に愛人を作り子を産ませた事、人様のお金で楽に子供を養おうとした浅はかな自分を大いに悔やむのだった。



 すると厳しい労働で、夫はやがて大病を患い…愛人や子供達にお金を毟り取られるだけ毟り取られ、孤独な最期を迎えたと言う。


 
 一方、私はと言うと…夫の友人である彼と良い仲となり、将来を見据えた交際を始めて居た。

 彼は以前から、家庭的な私を理想の妻だと見てくれて居たようで…そんな私をいずれを妻に迎える事を心待ちにしてくれて居る。



 また私も、賢く商才のある彼を以前から尊敬しており…そんな彼が自分を愛してくれる事に心からの幸せを感じ、早く彼と温かい家庭を築きたいと願うのだった─。
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