『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私を実家に返品したいと願う旦那様は、お気に入りの女ともお別れする事となりました。

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「お前も、若く無くなったな…。俺は、若く可愛い女が好みだ。お前はもう、俺の好みから外れた。」
 
 そう言って、私に離縁を迫る旦那様─。



 でも、私は知って居る。

 彼は私に飽きて…それで私と離縁し、私を実家に送り返そうとしている。

 そしてその後に…あのお気に入りのメイドを、新たに妻に迎えるつもりでしょう─?



 翌日私は、旦那様に離縁を受け入れると言った。

 私の言葉に、旦那様は喜び…そして、近くに居たメイドの女をチラリと見て笑った。

 そしてその視線を受け、メイドもニヤリとほくそ笑んでいた。


 
 この女…どうせ、この家の財産が目当てなんでしょう?

 旦那様の事はどこまで本気なのか、分かったものじゃないわ。



 私は、この女がそういう性悪である事を知って居る。

 と、言うのも─。



「おい、出て行くならさっさと出て行け。俺は、早く新しい生活を迎える準備がしたいんだ。」

「そうですか…だったら、私はもう行きます。と、いう事だから…そこのあなた。あなたは私に付いて来なさい。」

「え!?」

 私に腕を掴まれた彼女は、驚きの声を上げ…そしてそれを見た旦那様は、訳が分からないと言った顔をして居る。

「か、彼女は置いて行け!お前だけ実家に帰ればいいんだ!」

「そういう訳にはいきません。この女には…過去の罪を、ちゃんと償って貰わないと─!」


 
 私には、年の離れた妹が居る。

 妹はとても気が弱く、大人しい子で…そのせいで、学園である女に目を付けられ、とことん虐め抜かれた。

 そのせいで、体を壊し家に帰って来る事に─。

 結果、虐めた女は退学処分を受けたものの…私達が請求した慰謝料は払う事なく、行方をくらまして居たのだ─。



「家を追い出され、どこかの金持ちの家で働く事になったとは聞いてたけれど…まさかそれが、私が嫁ぐ事になったこの家だったとはね。あなたは、妹や私の事を全く忘れていたけど…逃げ得は許さないわ!今後あなたは、私の元で死ぬまで働いて貰うから、覚悟しなさい!…そう言う訳で、旦那様?あなたは、この女とは一緒になれません。」

「お前。俺達の関係を知って…!?」

「えぇ。あなたは私を裏切り、この女と浮気をしてました。ですから、離縁は構いませんが…私への慰謝料は、きっちり払って下さいね?」

「そ、そんな…。」



 こうして思い描いた未来がもう訪れる事がない事を知った旦那様は、その場に崩れ落ち…この先楽をして暮らすはずが、一生こき使われる事になってしまった女は、絶望の涙を流したのだった─。



 その後…私に多額の慰謝料を払った旦那様は、それから暫くし破産してしまった。

 彼は、この女に随分貢いで居たし…女も、彼に隠れあの家のお金をこっそり使い込んでいた。

 そして、浮気の噂が世間に広がり、事業が傾いた事がとどめとなり、そんな結末を招いたのだろう。

 その後彼は、一切行方が分からないままだ─。


 
 また、私に連れられこの家にやって来た女だが…彼女は、農場の豚小屋の世話係に任命したわ。
 
 これも、私の大事な妹を「鼻ぺちゃの豚女」と罵った罰よ。

 寝るのもご飯を食べるのも…何もかも、一生豚小屋の中で済ませて貰うから─。



 こうして、慰謝料を貰い女に仕事を与え、漸く落ち着いた私に…新たな再婚話が舞い込んで来た。

 それは、私の事業を支援してくれる殿方で…実は私は、貰った慰謝料をある事業の立ち上げに使ったのだ。

 そしてその話を進める中で、その彼に出会い…いつの間にか、公私共に深い仲となったのだった。


 
 妹の仇も取れたし、その妹も元気になって来たし、頼もしい再婚相手も見つかったし、事業は絶好調だし…離縁し実家に戻る事になった私には、良い事しか待ってなかったわ─!
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