『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私には冷たい癖に、妹には優しい夫…そんなにあの子が好きなら、いっそ離縁しましょう?

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 私には、結婚して半年になる夫が居る。

 まだまだ新婚とも思える時期なのに…夫は、私に冷たかった。

 私達は、家同士の約束で結婚したから…彼がそんな態度を取っても、仕方ないのかしら…。



 でも彼は、私の妹には優しかった。

 私の妹は、可愛くて社交的で…そのせいか、昔から殿方にモテて居た。

 それは夫も同じで…偶に遊びに来る妹を、大いに歓迎した。

 夫は、妹が来る日はわざわざ彼女の好きなお菓子を用意し…彼女が以前欲しいと口にして居た物を、贈り物として用意して居るのだ。

 結婚してから、私に何一つ贈り物をした事がない癖に…偉く態度が違うわね。

 何だか…二人の方が、新婚夫婦みたい─。



 そんなある日の事─。

 街に出ていた私は酷い雨に降られ…予定を変更し、すぐに家へと引き返した。

 すると…家の中から、妹の声がする。

 
 あの子、また遊びに来たの…?

 でも、どうして寝室からあの子の声が─。

 不審に思った私は、うっすら開いたドアから中を覗いた。

 するとそこには…ベッドの上で抱き合う、夫と妹の姿があった─。



「早くお姉様と離縁して?じゃないと私、他の男と婚約しちゃうわよ。」

「分かってるよ。でもあいつ、どんなに冷たくしても離縁したいとは言わないんだ…。」

「いっそ、お姉様を悪者に仕立て上げるのはどう?私の遊び仲間の男を使って…そいつにお姉様を襲わせるの!そしたらあなたは、不貞を働いた妻だと言って、お姉様を捨ててやればいいわ。」

「それは良い考えだな!」



 そんな…。
 彼が今まで私に冷たかったのは、わざとだったの…?

 私と離縁したくて、わざとそんな事…。

 それも全て、あの子と結ばれる為に─。



 それから数日後─。

 私は、大事な話があると妹を家に呼び出した。

 そこには、勿論夫も同席しており…二人は顔には出さないものの、何故急にと不安に思って居る様に見えた。

 そんな二人に、私はこう言った。



「あなた…そんなにその子の事が好きなら、いっそ離縁しましょう。」

「…え!?」

「ただし…離縁するからには、もうあなたの事業に私の家から協力金は出さないし、あなたのご実家への支援金も無しとします。そして…あなたには修道院へ入って貰うわ。」

「そ、そんな…。」

「な、何で私がそんな所へ!?一体、私が何をしたと─」

「とぼけたって無駄だ!お前達の悪事の証拠は、ここにある!」



 そう言って、部屋に入って来たのは…私の幼馴染と、妹の遊び仲間の男だった。

「こいつが、何もかも話してくれた。お前に、姉を襲えと命じられ金を貰った、と。その金がこれだ!」

 そう言って幼馴染が机に置いた封筒には…妹の字で、金額が書かれて居た。

「よ、よくも私を裏切って…あッ!」

 妹は、慌てて口を押えたが…もう遅かった。

 そんな妹を、夫は青い顔で睨んで居る。



「裏切るだなんて…自分の悪事をバラした様なものね。こんな馬鹿な子に本気になるなんて、あなたも相当愚かな男だわ。」

「た、頼む…。協力金も支援金もないんじゃ、俺の家は…俺はお終いだ!心を入れ替えるから、俺を捨てないでくれ!」

「私だって謝るから…修道院だけは勘弁して!」

 二人は必死に頭を下げたが…私は、とても二人を許す事は出来なかった。



 こうして私は…夫と離縁し、実家へと戻った。

 そして彼も、自分の家へ戻ろうとしたが…事業が破産し借金まみれになり、おまけに家への支援金を止めた彼を、彼の家族は許さなかった。

 そして彼とその家族は、今は散り散りになり行方不明だ。

 
 また、修道院送りになった妹は…その厳しい生活に耐え兼ね、毎日泣いて過ごして居るらしい。
 
 こんな事になるなら、お姉様の夫になど手を出さず、大人しく婚約しておけば良かったと嘆いて居るそうだけれど…今更後悔したって遅いわよ!


 一方、私はというと…近く、幼馴染と再婚する事となった。

 あの時、私に協力してくれた頼もしい彼に、私は自然と特別な感情を抱く様になり…彼は彼で、私を大事にしない夫に腹を立て…自分が、私を特別だと思って居る事に気付いたらしい。

 そして、私達はすぐに交際を始め…お互い一緒になりたいと思う様になったのだ。



 彼は私をとても大切にしてくれ…何より、いつでも私に優しさを与えてくれる。

 それは物であったり、態度であったり、言葉であったりと色々だが…彼から与えられるその優しさの一つ一つに愛が籠って居て…こんな素敵な人の妻になれる事に、私は喜びと幸せを感じて居る─。
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