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今まで私に見向きもしなかったのに、急に優しくなった夫…そこには裏切りが隠れて居ました。
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私と夫は結婚して五年になるが、その仲はすっかり冷え切って居た。
と言うのも…夫は毎日帰りが遅く、週末はいつも家を空けて居て…どうやら他所に愛人が居る様だった。
子供も居ないし…もうそんな夫とは、この先一緒に居る必要は無いのかもしれない─。
私がそんな事を想い始めた頃、急に夫の態度が変わった。
と言うのも…今まで私に見向きもしなかった夫が、何故か急に優しくなったのだ。
「今まで、お前に素っ気なくして悪かった。これからは早く帰って、お前と一緒に食事を摂るよ。」
そんな夫に…私は正直、喜びより戸惑いを覚えた。
今更、どうしてこんな事を言うのだろうか…。
しかも夫は、せっかくだから俺が手料理を振舞ってやるとまで言って来るし…。
今までろくに料理もして来なかったのに、何だかおかしいわ─。
だがその理由は、数日後に判明した。
その日、私は友人と出かける予定だったが…友人が急に体調不良を起こし、すぐに家に戻る事に─。
すると家の中から、夫と聞き慣れない女の声がした。
「…まだアレを飲ませられないの?」
「仕方ないだろう?あいつは用心深くて、俺の作った料理にちっとも手を付けないし…そもそも、一緒に食事をするのも断られる様になってしまった。」
「もう!せっかく私が苦労して手に入れたのに…。それで、今アレはどこに?」
「リビングの戸棚の中だ。あそこには常備薬も置いてあるし…木を隠すには、何て言うじゃないか。」
「そんな事言って…間違ってあなたが飲んでも知らないわよ?」
そして二人の会話は、やがて喘ぎ声へと変わって行った。
それを聞いた私は、きっと女は夫の愛人で…私の留守中に、こうして密会して居るのだと悟った。
しかし、アレとは一体…。
気になった私はリビングに行き戸棚を開けると、常備薬が置いてある引き出しを漁った。
すると、そこには見慣れない包みがあり…中を開ければ、怪しい粉薬が入って居た。
不審に思った私は、その粉薬をナプキンに包み…代わりに常備してある別の薬を包んでおいた。
そしてそれから数日後─。
また夫が夕食を一緒にと言うので、私は食卓に着いた。
すると夫は、手作りのスープだと言いその皿を私の前に置いた。
「漸くお前も、俺の手作りの料理を食べる気になってくれたか…俺は嬉しいよ!」
そう言って笑みを浮かべる夫に…私はある事を話した。
「この前、家に見慣れない薬が置いてあったので…私の主治医に、それが何かを調べて貰いました。」
「…え?」
「するとそれは、ある植物の根を乾燥させ細かくした物で…そしてそれは、大変危険な毒物である事が分かりました。」
私の言葉に、夫は冷や汗を流し…その身体は小さく震えて居た。
「その薬は、闇市である商人が売って居る物だそうで…最近、一人の美しい女がそれを購入したとか。そしてその女はある男にそれを渡し、その男の妻を病死に見せかけ殺すつもりだったそうです。そうすれば、自分達が結ばれると思って─。でも、それはこうして妻に見破られ…見事に失敗してしまいましたけどね。」
「お、お前は何を言って─」
「とぼけても無駄です…私は、もうあなた達の企みを全て知って居ますから─。因みに、あなたがこのスープに入れた粉薬は、毒ではなくただの胃薬です。私が今ここで口に入れたとしても、何の害もありません。」
私の言葉に、夫はそんな馬鹿なとブツブツ呟いて居る。
「ですが…あなたが口にした、そのワインに入って居る物は違いますよ?随分美味しそうに飲んで居ましたが…そろそろ、体に異常が出てきてもおかしくありません。」
「まさかお前、俺を恨んであの毒を!?」
「解毒薬が欲しいなら…あなた達の企みを今ここで認めなさい。」
「わ、分かったよ!俺と愛人の女は、確かにお前をあの毒で殺そうとした!俺が最近お前に優しくしたのも、お前を殺す機会を伺って居ただけの事だ─!」
夫がそう叫んだ瞬間…部屋の中に憲兵と私の主治医が入って来た。
そして夫が自ら認めた事が立派な証拠となり、彼は憲兵達に捕らえられる事に─。
「待て!捕まえるなら俺だけでなく、あいつもだ!あいつは俺に毒を飲ませ─」
「彼女がそんな事をする訳ないだろう。あれはお前に罪を認めさせ、自白させる為の嘘だ。」
「そ、そんな─。」
その後、夫の自白により愛人の女も捕らえれ…二人は、残りの人生を牢の中で過ごす事が決まった。
また命を狙われたら困ると思って居たから…そのような結果となり、私としては嬉しい限りだわ。
そして私は、今回の事で色々と力を貸してくれた主治医にお礼を告げた。
彼は、元々は私の幼馴染で…彼は幼いころから風邪をひきやすかった私の為に、医者になる事を約束し…見事それを叶えたのだ。
そして私の主治医となり、今も変わらず私を傍で見守ってくれて居たのだ。
すると私は、そんな彼から自分の恋人になって欲しいと告げられる事に─。
「君が家同士の約束であの男と結婚する事になり、俺は自分の気持ちを諦めるしかなかったが…こんな事になり、君を一人にしておくのは危険だと…この先は、俺が一生かけて君を守りたいと思ったんだ。」
この突然の告白に、私は驚いたものの…今回の騒動で、私と彼の距離は以前にも増して近くなり…そんな彼の優しさや誠実さ、そして頼りになる所を目の当たりにし…私は彼にときめきを感じる様になって居た。
元夫に優しくされても全然嬉しく無かったのに…彼にそうされると、胸のドキドキが止まらないのだ─。
そしてその事もあり、私は彼の気持ちに応える事にした。
こうして、私達は恋人として同じ時を過ごし…そして最近になり彼と再婚する事が決まり、私は幸せの真っただ中に居るわ─。
と言うのも…夫は毎日帰りが遅く、週末はいつも家を空けて居て…どうやら他所に愛人が居る様だった。
子供も居ないし…もうそんな夫とは、この先一緒に居る必要は無いのかもしれない─。
私がそんな事を想い始めた頃、急に夫の態度が変わった。
と言うのも…今まで私に見向きもしなかった夫が、何故か急に優しくなったのだ。
「今まで、お前に素っ気なくして悪かった。これからは早く帰って、お前と一緒に食事を摂るよ。」
そんな夫に…私は正直、喜びより戸惑いを覚えた。
今更、どうしてこんな事を言うのだろうか…。
しかも夫は、せっかくだから俺が手料理を振舞ってやるとまで言って来るし…。
今までろくに料理もして来なかったのに、何だかおかしいわ─。
だがその理由は、数日後に判明した。
その日、私は友人と出かける予定だったが…友人が急に体調不良を起こし、すぐに家に戻る事に─。
すると家の中から、夫と聞き慣れない女の声がした。
「…まだアレを飲ませられないの?」
「仕方ないだろう?あいつは用心深くて、俺の作った料理にちっとも手を付けないし…そもそも、一緒に食事をするのも断られる様になってしまった。」
「もう!せっかく私が苦労して手に入れたのに…。それで、今アレはどこに?」
「リビングの戸棚の中だ。あそこには常備薬も置いてあるし…木を隠すには、何て言うじゃないか。」
「そんな事言って…間違ってあなたが飲んでも知らないわよ?」
そして二人の会話は、やがて喘ぎ声へと変わって行った。
それを聞いた私は、きっと女は夫の愛人で…私の留守中に、こうして密会して居るのだと悟った。
しかし、アレとは一体…。
気になった私はリビングに行き戸棚を開けると、常備薬が置いてある引き出しを漁った。
すると、そこには見慣れない包みがあり…中を開ければ、怪しい粉薬が入って居た。
不審に思った私は、その粉薬をナプキンに包み…代わりに常備してある別の薬を包んでおいた。
そしてそれから数日後─。
また夫が夕食を一緒にと言うので、私は食卓に着いた。
すると夫は、手作りのスープだと言いその皿を私の前に置いた。
「漸くお前も、俺の手作りの料理を食べる気になってくれたか…俺は嬉しいよ!」
そう言って笑みを浮かべる夫に…私はある事を話した。
「この前、家に見慣れない薬が置いてあったので…私の主治医に、それが何かを調べて貰いました。」
「…え?」
「するとそれは、ある植物の根を乾燥させ細かくした物で…そしてそれは、大変危険な毒物である事が分かりました。」
私の言葉に、夫は冷や汗を流し…その身体は小さく震えて居た。
「その薬は、闇市である商人が売って居る物だそうで…最近、一人の美しい女がそれを購入したとか。そしてその女はある男にそれを渡し、その男の妻を病死に見せかけ殺すつもりだったそうです。そうすれば、自分達が結ばれると思って─。でも、それはこうして妻に見破られ…見事に失敗してしまいましたけどね。」
「お、お前は何を言って─」
「とぼけても無駄です…私は、もうあなた達の企みを全て知って居ますから─。因みに、あなたがこのスープに入れた粉薬は、毒ではなくただの胃薬です。私が今ここで口に入れたとしても、何の害もありません。」
私の言葉に、夫はそんな馬鹿なとブツブツ呟いて居る。
「ですが…あなたが口にした、そのワインに入って居る物は違いますよ?随分美味しそうに飲んで居ましたが…そろそろ、体に異常が出てきてもおかしくありません。」
「まさかお前、俺を恨んであの毒を!?」
「解毒薬が欲しいなら…あなた達の企みを今ここで認めなさい。」
「わ、分かったよ!俺と愛人の女は、確かにお前をあの毒で殺そうとした!俺が最近お前に優しくしたのも、お前を殺す機会を伺って居ただけの事だ─!」
夫がそう叫んだ瞬間…部屋の中に憲兵と私の主治医が入って来た。
そして夫が自ら認めた事が立派な証拠となり、彼は憲兵達に捕らえられる事に─。
「待て!捕まえるなら俺だけでなく、あいつもだ!あいつは俺に毒を飲ませ─」
「彼女がそんな事をする訳ないだろう。あれはお前に罪を認めさせ、自白させる為の嘘だ。」
「そ、そんな─。」
その後、夫の自白により愛人の女も捕らえれ…二人は、残りの人生を牢の中で過ごす事が決まった。
また命を狙われたら困ると思って居たから…そのような結果となり、私としては嬉しい限りだわ。
そして私は、今回の事で色々と力を貸してくれた主治医にお礼を告げた。
彼は、元々は私の幼馴染で…彼は幼いころから風邪をひきやすかった私の為に、医者になる事を約束し…見事それを叶えたのだ。
そして私の主治医となり、今も変わらず私を傍で見守ってくれて居たのだ。
すると私は、そんな彼から自分の恋人になって欲しいと告げられる事に─。
「君が家同士の約束であの男と結婚する事になり、俺は自分の気持ちを諦めるしかなかったが…こんな事になり、君を一人にしておくのは危険だと…この先は、俺が一生かけて君を守りたいと思ったんだ。」
この突然の告白に、私は驚いたものの…今回の騒動で、私と彼の距離は以前にも増して近くなり…そんな彼の優しさや誠実さ、そして頼りになる所を目の当たりにし…私は彼にときめきを感じる様になって居た。
元夫に優しくされても全然嬉しく無かったのに…彼にそうされると、胸のドキドキが止まらないのだ─。
そしてその事もあり、私は彼の気持ちに応える事にした。
こうして、私達は恋人として同じ時を過ごし…そして最近になり彼と再婚する事が決まり、私は幸せの真っただ中に居るわ─。
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