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真実の愛に生きると私と子供を捨てた夫が、今になり帰って来ましたが…もう居場所は無いわ。
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五年前…子供が生まれたばかりだと言うのに、夫が愛人を作った。
しかも、相手は平民の女だった。
だが、彼女は美しく才能あふれる女だった。
夫は、そんな彼女に心底惚れ…私と子供を捨て、この家から出て行ってしまった。
そしてそれきり姿を消して居たが…今になり、何故か急に家に戻って来た。
「真実の愛に生きると息巻いて出て行った癖に…今更何の用です?」
すると元夫は、涙を流しこう言った。
「あの女のせいで、俺は大変な苦労をする羽目になった。もう、あんな女とは一緒に居られない。」
聞けば…元夫と王都に出た彼女は、ドレスのデザイナーとして活躍して居たが…つい最近になり、それは自身の妹から盗作した物だった事が発覚したらしい。
「そのせいで、あいつのデザインしたドレスを扱って居た俺の事業の評判はガタ落ちで…多額の負債を抱える事になってしまったんだ。」
その件で、元夫と彼女の仲は険悪になり…今や、互いを罵り憎み合う仲になってしまったと言う。
「だから、もうあいつとは別れるよ…。それで…俺の真実の愛はやっぱりこの家に、お前との間にあったんだと分かったんだ。頼む…俺をまた、この家に置いてくれ!」
そう言って、元夫は頭を下げたが…今更何を言ってるの?
こっちはもう、あなたの事など忘れ幸せに暮らして居たと言うのに─。
その時…部屋のドアが開き、息子が入って来た。
そして項垂れる元夫を見て、不思議そうな顔をして居る。
無理も無いわ…。
夫がここを出て行った時…この子はまだ赤ちゃんだったのだから─。
そして息子は…知らない人が居る、怖いと言って怯えた。
そんな息子に、元夫はヘラヘラと笑いかけ近づいたが…私は息子を抱き上げ、彼から離した。
「この子が嫌がってるから、帰って頂戴。あなたはもう、私達やこの家とは何の関係も無い…赤の他人よ。」
そんな私の言葉に…元夫は怒りの表情を浮かべ、私に掴みかかろうとしたが…ある人物が、それを止めに入った。
「な、何だお前は…!?」
それは…私の愛する人だった。
彼とは少し前から交際して居て…来年には再婚し、家族になる約束をして居た。
彼の登場に安心したのか…息子は笑みを浮かべ、彼の名を呼んだ。
彼はそんな息子に笑いかけ、優しく頭を撫でると…呆然とする元夫にこう言った。
「俺と彼女、そしてこの子はもうすぐ家族になる。そして幸せで穏やかな日々を送ろうとして居るんだ。だから、ここにはもうあなたの居場所は無い。」
そして彼は…元夫の腕を掴み部屋から連れ出すと、そのまま彼を家の外に放り出した。
彼は元夫に、もしまたここに来るなら不法侵入者として捕らえると言った。
「彼は憲兵団に所属して居るから…そんな事になったら、あなたは即牢屋行ね。」
私がそう言えば…元夫は真っ青な顔になり、逃げる様に去って行った。
…流石に、もうあの人はここには来ないでしょう。
でもそれで良いわ。
息子は、あの人の事など全く覚えて居ない…。
そのせいか、この彼の事を「お父さん」と呼ぶ様になった。
だから、今更あの人が戻って来ても困るのよ─。
その後、元夫はあの女と正式に別れた様だが…借金取りに追い回され、各地を逃げ回る日々を送って居ると言う。
そんな日々は、辛く孤独なもので…彼は、改めて過去の自分の選択を後悔して居るそうだ─。
しかも、相手は平民の女だった。
だが、彼女は美しく才能あふれる女だった。
夫は、そんな彼女に心底惚れ…私と子供を捨て、この家から出て行ってしまった。
そしてそれきり姿を消して居たが…今になり、何故か急に家に戻って来た。
「真実の愛に生きると息巻いて出て行った癖に…今更何の用です?」
すると元夫は、涙を流しこう言った。
「あの女のせいで、俺は大変な苦労をする羽目になった。もう、あんな女とは一緒に居られない。」
聞けば…元夫と王都に出た彼女は、ドレスのデザイナーとして活躍して居たが…つい最近になり、それは自身の妹から盗作した物だった事が発覚したらしい。
「そのせいで、あいつのデザインしたドレスを扱って居た俺の事業の評判はガタ落ちで…多額の負債を抱える事になってしまったんだ。」
その件で、元夫と彼女の仲は険悪になり…今や、互いを罵り憎み合う仲になってしまったと言う。
「だから、もうあいつとは別れるよ…。それで…俺の真実の愛はやっぱりこの家に、お前との間にあったんだと分かったんだ。頼む…俺をまた、この家に置いてくれ!」
そう言って、元夫は頭を下げたが…今更何を言ってるの?
こっちはもう、あなたの事など忘れ幸せに暮らして居たと言うのに─。
その時…部屋のドアが開き、息子が入って来た。
そして項垂れる元夫を見て、不思議そうな顔をして居る。
無理も無いわ…。
夫がここを出て行った時…この子はまだ赤ちゃんだったのだから─。
そして息子は…知らない人が居る、怖いと言って怯えた。
そんな息子に、元夫はヘラヘラと笑いかけ近づいたが…私は息子を抱き上げ、彼から離した。
「この子が嫌がってるから、帰って頂戴。あなたはもう、私達やこの家とは何の関係も無い…赤の他人よ。」
そんな私の言葉に…元夫は怒りの表情を浮かべ、私に掴みかかろうとしたが…ある人物が、それを止めに入った。
「な、何だお前は…!?」
それは…私の愛する人だった。
彼とは少し前から交際して居て…来年には再婚し、家族になる約束をして居た。
彼の登場に安心したのか…息子は笑みを浮かべ、彼の名を呼んだ。
彼はそんな息子に笑いかけ、優しく頭を撫でると…呆然とする元夫にこう言った。
「俺と彼女、そしてこの子はもうすぐ家族になる。そして幸せで穏やかな日々を送ろうとして居るんだ。だから、ここにはもうあなたの居場所は無い。」
そして彼は…元夫の腕を掴み部屋から連れ出すと、そのまま彼を家の外に放り出した。
彼は元夫に、もしまたここに来るなら不法侵入者として捕らえると言った。
「彼は憲兵団に所属して居るから…そんな事になったら、あなたは即牢屋行ね。」
私がそう言えば…元夫は真っ青な顔になり、逃げる様に去って行った。
…流石に、もうあの人はここには来ないでしょう。
でもそれで良いわ。
息子は、あの人の事など全く覚えて居ない…。
そのせいか、この彼の事を「お父さん」と呼ぶ様になった。
だから、今更あの人が戻って来ても困るのよ─。
その後、元夫はあの女と正式に別れた様だが…借金取りに追い回され、各地を逃げ回る日々を送って居ると言う。
そんな日々は、辛く孤独なもので…彼は、改めて過去の自分の選択を後悔して居るそうだ─。
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