32 / 132
子が出来ない事を理由に私を愛されない妻と馬鹿にする妹に、夫を譲る事にします…。
しおりを挟む
「まだ子が出来ないの?本当に惨め…お姉様は、旦那様に愛されてないのね。」
「私は別に…。」
「あら、いいのよ?妹に対し意地を張らなくても。そうだ。私から旦那様にお願いしてあげるわ。お姉様を抱いてあげてって!」
「辞めて、余計な事しないで!」
「嫌ね。冗談よ、冗談!」
妹はひとしきり笑うと、家に帰って行った。
婚約報告をしたのなら、さっさと帰ればいいのに…。
顔を見せればいつも私を見下し馬鹿にして…本当に嫌な子。
大体、私があの男と結婚する羽目になったのは─。
夫に愛されない私を見て、惨めだと嘲笑う妹。
ならばいっそ、あなたが妻になって愛されたら?
夫はそれを望んでいるし、丁度いいわ─。
***
私の婚約を聞いた時のお姉様の顔、本当に憐れだった。
そりゃそうよね、憧れていた男を妹の私に取られたんですから。
でもそんなに悔しかったら、お姉様が彼と婚約し結婚すれば良かったのに。
金に目が眩み、そんな男と結婚するからいけないのよ。
その癖、相手にはろくに愛されてなくて…本当に惨めで馬鹿みたい。
私だったら、あんな男を夫にするなど嫌だわ…。
いくら金持ちでも年は上すぎるし、ガマガエルみたいに気持ち悪い肌と顔をしてるし…おまけに性格だって女好きで、欲深で、ケチで…悪い所を挙げたらキリがない。
全く…何が好きで、あんな男の妻になったんだか─。
そう他人事のように思って居た私に、とんでもない事態が起きた。
「…君が私の事をそんなに思って居てくれたとは…。あいつから聞いたよ?私とあいつの仲に嫉妬し、家に押しかけて来たんだって?」
「えぇ!?」
次の日…お姉様の夫が家にやって来て、意味の分からない事を言い出した。
「私たちに子が出来ないのが気になるんだって?それなんだが、私は美人や可愛い女にしか欲情しないんだ、だからあいつでは無理なんだよ。でも…君だったら大丈夫。あいつとは別れるから、君が妻になってくれ。あいつもそれでいいと言ってるしな。」
「じょ、冗談を…。私は彼と婚約してますし、ね?」
私は、隣に居た婚約者に助けを求めた。
「俺はそれで構いません。そういう事なら喜んで婚約破棄します。俺は元々、彼女を選ぶつもりなどなかったので。」
「な、何よそれ…?」
「君の亡くなったご両親にお願いされたんだ。君が俺を好きだから、婚約しいずれ結婚しろと。俺はそんなつもりなかったのに、無理やり君を押し付け…全くいい迷惑だった。だけど二人が亡くなり、この方から君が求婚された今もうその約束を守る必要はないだろう。」
「そ、そんな…。」
「では決まりだ。ほら、私の家に行こうな。」
「こ、こんなの嫌─!」
私は必死に抵抗したが…結局姉の夫によって彼と引き離され、家から連れ出されてしまった。
***
「お願い、離して!」
「やっと来たわね、では私はもう必要ありませんね。」
「お姉様、待ちなさいよ!あなた、何をでたらめ言ってるのよ!?」
「元々彼との結婚は、あなたに来ていた話だったのよ?それを、あなたが大好きで贔屓ばかりしてた両親が私に押し付けた。…私はあの人は付き合っていたのに、無理やり別れさせて。」
「あの人って…まさか!?」
「そうよ、あなたの元婚約者の彼よ。私たちは密かに愛し合ってたの、あなたに知られたら邪魔されると思ってね。これで私は、漸く彼の元に行けるわね。」
「わ、私はこの人の事なんて好きでも何でも─」
「黙りなさい。…あなたは、私に子が出来たか出来ないか気にする程私の夫を意識していた。そんなデリケートな事、普通会う度に聞かないわよ。夫の性事情が…夫自身が、余程気にならない限りわね。そう思いません、旦那様?」
「そうだ、普通の神経をしていたら実の姉にそんな事は聞かないよ。君は、私自身が気になって仕方なかったんだろう?さぁ、おいで?もうつまらない嫉妬をしなくていいんだ。これからは、君だけを可愛がってやろう。」
「嫌、誰か助けて─!」
妹はそう叫ぶも…そのまま彼に腕を引かれ、彼の寝室へと連れて行かれた。
***
「…どうぞお二人仲良く、いつまでもお幸せにね─。」
しかし、子供か…。
そんなもの、できる訳なかったのよ。
嫁いできたのが姉の私だと知り、夫は酷く落胆した。
そしてその後は、私の事などろくに見もしようとしなかった。
そんな生活がずっと続いていたんだから。
でも容姿の良いあなたなら、私と違い沢山愛して貰えるわよ。
しかしこうなったのも全て、男遊びが激しくてこの領地で悪目立ちしたあなたが、あの男に目を付けられたから…自業自得だと思うわよ。
これで全てが片付いた…早くあの人の元へ行こう。
そう思い黙々と歩いて行くと、ついに実家が見えて来た。
そしてその瞬間、私は思わず駆け出した。
だってあそこには、私の大好きな彼が待っているんだもの。
彼には、いつか必ずあいつと別れあなたの元に帰って来ると伝えていた。
そして勢いよく扉を開ければ、優しい笑みを浮かべ手を広げる彼の姿が─。
それを見た私は、迷わずその腕の中に飛び込むのだった─。
「私は別に…。」
「あら、いいのよ?妹に対し意地を張らなくても。そうだ。私から旦那様にお願いしてあげるわ。お姉様を抱いてあげてって!」
「辞めて、余計な事しないで!」
「嫌ね。冗談よ、冗談!」
妹はひとしきり笑うと、家に帰って行った。
婚約報告をしたのなら、さっさと帰ればいいのに…。
顔を見せればいつも私を見下し馬鹿にして…本当に嫌な子。
大体、私があの男と結婚する羽目になったのは─。
夫に愛されない私を見て、惨めだと嘲笑う妹。
ならばいっそ、あなたが妻になって愛されたら?
夫はそれを望んでいるし、丁度いいわ─。
***
私の婚約を聞いた時のお姉様の顔、本当に憐れだった。
そりゃそうよね、憧れていた男を妹の私に取られたんですから。
でもそんなに悔しかったら、お姉様が彼と婚約し結婚すれば良かったのに。
金に目が眩み、そんな男と結婚するからいけないのよ。
その癖、相手にはろくに愛されてなくて…本当に惨めで馬鹿みたい。
私だったら、あんな男を夫にするなど嫌だわ…。
いくら金持ちでも年は上すぎるし、ガマガエルみたいに気持ち悪い肌と顔をしてるし…おまけに性格だって女好きで、欲深で、ケチで…悪い所を挙げたらキリがない。
全く…何が好きで、あんな男の妻になったんだか─。
そう他人事のように思って居た私に、とんでもない事態が起きた。
「…君が私の事をそんなに思って居てくれたとは…。あいつから聞いたよ?私とあいつの仲に嫉妬し、家に押しかけて来たんだって?」
「えぇ!?」
次の日…お姉様の夫が家にやって来て、意味の分からない事を言い出した。
「私たちに子が出来ないのが気になるんだって?それなんだが、私は美人や可愛い女にしか欲情しないんだ、だからあいつでは無理なんだよ。でも…君だったら大丈夫。あいつとは別れるから、君が妻になってくれ。あいつもそれでいいと言ってるしな。」
「じょ、冗談を…。私は彼と婚約してますし、ね?」
私は、隣に居た婚約者に助けを求めた。
「俺はそれで構いません。そういう事なら喜んで婚約破棄します。俺は元々、彼女を選ぶつもりなどなかったので。」
「な、何よそれ…?」
「君の亡くなったご両親にお願いされたんだ。君が俺を好きだから、婚約しいずれ結婚しろと。俺はそんなつもりなかったのに、無理やり君を押し付け…全くいい迷惑だった。だけど二人が亡くなり、この方から君が求婚された今もうその約束を守る必要はないだろう。」
「そ、そんな…。」
「では決まりだ。ほら、私の家に行こうな。」
「こ、こんなの嫌─!」
私は必死に抵抗したが…結局姉の夫によって彼と引き離され、家から連れ出されてしまった。
***
「お願い、離して!」
「やっと来たわね、では私はもう必要ありませんね。」
「お姉様、待ちなさいよ!あなた、何をでたらめ言ってるのよ!?」
「元々彼との結婚は、あなたに来ていた話だったのよ?それを、あなたが大好きで贔屓ばかりしてた両親が私に押し付けた。…私はあの人は付き合っていたのに、無理やり別れさせて。」
「あの人って…まさか!?」
「そうよ、あなたの元婚約者の彼よ。私たちは密かに愛し合ってたの、あなたに知られたら邪魔されると思ってね。これで私は、漸く彼の元に行けるわね。」
「わ、私はこの人の事なんて好きでも何でも─」
「黙りなさい。…あなたは、私に子が出来たか出来ないか気にする程私の夫を意識していた。そんなデリケートな事、普通会う度に聞かないわよ。夫の性事情が…夫自身が、余程気にならない限りわね。そう思いません、旦那様?」
「そうだ、普通の神経をしていたら実の姉にそんな事は聞かないよ。君は、私自身が気になって仕方なかったんだろう?さぁ、おいで?もうつまらない嫉妬をしなくていいんだ。これからは、君だけを可愛がってやろう。」
「嫌、誰か助けて─!」
妹はそう叫ぶも…そのまま彼に腕を引かれ、彼の寝室へと連れて行かれた。
***
「…どうぞお二人仲良く、いつまでもお幸せにね─。」
しかし、子供か…。
そんなもの、できる訳なかったのよ。
嫁いできたのが姉の私だと知り、夫は酷く落胆した。
そしてその後は、私の事などろくに見もしようとしなかった。
そんな生活がずっと続いていたんだから。
でも容姿の良いあなたなら、私と違い沢山愛して貰えるわよ。
しかしこうなったのも全て、男遊びが激しくてこの領地で悪目立ちしたあなたが、あの男に目を付けられたから…自業自得だと思うわよ。
これで全てが片付いた…早くあの人の元へ行こう。
そう思い黙々と歩いて行くと、ついに実家が見えて来た。
そしてその瞬間、私は思わず駆け出した。
だってあそこには、私の大好きな彼が待っているんだもの。
彼には、いつか必ずあいつと別れあなたの元に帰って来ると伝えていた。
そして勢いよく扉を開ければ、優しい笑みを浮かべ手を広げる彼の姿が─。
それを見た私は、迷わずその腕の中に飛び込むのだった─。
108
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説


絵姿
金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。
それなのに……。
独自の異世界の緩いお話です。


病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』

【完結】アナタが選んだんでしょう?
BBやっこ
恋愛
ディーノ・ファンは、裕福な商人の息子。長男でないから、父から預かった支店の店長をしている。
学生でいられるのも後少し。社交もほどほどに、のんびり過ごしていた。
そのうち、父の友人の娘を紹介され縁談が進む。
選んだのに、なぜこんなけっかになったのだろう?

あなたの瞳に映るのは妹だけ…闇の中で生きる私など、きっと一生愛されはしない。
coco
恋愛
家に籠り人前に出ない私。
そんな私にも、婚約者は居た。
だけど彼は、随分前から自身の義妹に夢中になってしまい…?

その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる