『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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子が出来ない事を理由に私を愛されない妻と馬鹿にする妹に、夫を譲る事にします…。

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「まだ子が出来ないの?本当に惨め…お姉様は、旦那様に愛されてないのね。」

「私は別に…。」

「あら、いいのよ?妹に対し意地を張らなくても。そうだ。私から旦那様にお願いしてあげるわ。お姉様を抱いてあげてって!」

「辞めて、余計な事しないで!」

「嫌ね。冗談よ、冗談!」



 妹はひとしきり笑うと、家に帰って行った。



 婚約報告をしたのなら、さっさと帰ればいいのに…。
 
 顔を見せればいつも私を見下し馬鹿にして…本当に嫌な子。

 大体、私があの男と結婚する羽目になったのは─。
 


 夫に愛されない私を見て、惨めだと嘲笑う妹。

 ならばいっそ、あなたが妻になって愛されたら?
 
 夫はそれを望んでいるし、丁度いいわ─。



***



 私の婚約を聞いた時のお姉様の顔、本当に憐れだった。

 そりゃそうよね、憧れていた男を妹の私に取られたんですから。



 でもそんなに悔しかったら、お姉様が彼と婚約し結婚すれば良かったのに。

 金に目が眩み、そんな男と結婚するからいけないのよ。



 その癖、相手にはろくに愛されてなくて…本当に惨めで馬鹿みたい。



 私だったら、あんな男を夫にするなど嫌だわ…。

 いくら金持ちでも年は上すぎるし、ガマガエルみたいに気持ち悪い肌と顔をしてるし…おまけに性格だって女好きで、欲深で、ケチで…悪い所を挙げたらキリがない。



 全く…何が好きで、あんな男の妻になったんだか─。



 そう他人事のように思って居た私に、とんでもない事態が起きた。




「…君が私の事をそんなに思って居てくれたとは…。あいつから聞いたよ?私とあいつの仲に嫉妬し、家に押しかけて来たんだって?」

「えぇ!?」



 次の日…お姉様の夫が家にやって来て、意味の分からない事を言い出した。




「私たちに子が出来ないのが気になるんだって?それなんだが、私は美人や可愛い女にしか欲情しないんだ、だからあいつでは無理なんだよ。でも…君だったら大丈夫。あいつとは別れるから、君が妻になってくれ。あいつもそれでいいと言ってるしな。」

「じょ、冗談を…。私は彼と婚約してますし、ね?」

 私は、隣に居た婚約者に助けを求めた。



「俺はそれで構いません。そういう事なら喜んで婚約破棄します。俺は元々、彼女を選ぶつもりなどなかったので。」

「な、何よそれ…?」

「君の亡くなったご両親にお願いされたんだ。君が俺を好きだから、婚約しいずれ結婚しろと。俺はそんなつもりなかったのに、無理やり君を押し付け…全くいい迷惑だった。だけど二人が亡くなり、この方から君が求婚された今もうその約束を守る必要はないだろう。」

「そ、そんな…。」

「では決まりだ。ほら、私の家に行こうな。」

「こ、こんなの嫌─!」



 私は必死に抵抗したが…結局姉の夫によって彼と引き離され、家から連れ出されてしまった。



***



「お願い、離して!」

「やっと来たわね、では私はもう必要ありませんね。」

「お姉様、待ちなさいよ!あなた、何をでたらめ言ってるのよ!?」

「元々彼との結婚は、あなたに来ていた話だったのよ?それを、あなたが大好きで贔屓ばかりしてた両親が私に押し付けた。…私はあの人は付き合っていたのに、無理やり別れさせて。」

「あの人って…まさか!?」

「そうよ、あなたの元婚約者の彼よ。私たちは密かに愛し合ってたの、あなたに知られたら邪魔されると思ってね。これで私は、漸く彼の元に行けるわね。」

「わ、私はこの人の事なんて好きでも何でも─」

「黙りなさい。…あなたは、私に子が出来たか出来ないか気にする程私の夫を意識していた。そんなデリケートな事、普通会う度に聞かないわよ。夫の性事情が…夫自身が、余程気にならない限りわね。そう思いません、旦那様?」

「そうだ、普通の神経をしていたら実の姉にそんな事は聞かないよ。君は、私自身が気になって仕方なかったんだろう?さぁ、おいで?もうつまらない嫉妬をしなくていいんだ。これからは、君だけを可愛がってやろう。」

「嫌、誰か助けて─!」

 妹はそう叫ぶも…そのまま彼に腕を引かれ、彼の寝室へと連れて行かれた。



***



「…どうぞお二人仲良く、いつまでもお幸せにね─。」



 しかし、子供か…。

 そんなもの、できる訳なかったのよ。

 

 嫁いできたのが姉の私だと知り、夫は酷く落胆した。

 そしてその後は、私の事などろくに見もしようとしなかった。

 そんな生活がずっと続いていたんだから。


 
 でも容姿の良いあなたなら、私と違い沢山愛して貰えるわよ。



 しかしこうなったのも全て、男遊びが激しくてこの領地で悪目立ちしたあなたが、あの男に目を付けられたから…自業自得だと思うわよ。



 これで全てが片付いた…早くあの人の元へ行こう。



 そう思い黙々と歩いて行くと、ついに実家が見えて来た。

 そしてその瞬間、私は思わず駆け出した。



 だってあそこには、私の大好きな彼が待っているんだもの。



 彼には、いつか必ずあいつと別れあなたの元に帰って来ると伝えていた。



 そして勢いよく扉を開ければ、優しい笑みを浮かべ手を広げる彼の姿が─。
 
 それを見た私は、迷わずその腕の中に飛び込むのだった─。
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