『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

義両親の死後、夫が縁を切ったはずの愛人と復縁…彼女との子だけを可愛ようになりました。

数年前、夫に愛人が居た事が発覚─。

　驚いた事に、夫は愛人との間に子供まで作って居た。

　だが、私のお腹の中には子供が居て…このまま離縁し片親になっては可哀相だと、私は夫と別れる事に躊躇した。



　すると義両親が全面的に私の味方をしてくれ…夫に愛人とその子供と縁を切るよう命じてくれた事で、夫は心を入れ替え私を大事にするように─。



　その為、私は安心してお腹の子を出産─。

　すると、夫は生まれた我が子を大層可愛がってくれ…それを見た義両親は、私達夫婦の仲が上手く行った事を心から喜ぶのだった。



　しかし、穏やかな日々は長くは続かなかった。

　と言うのも…義両親が流行り病に罹り、揃って亡くなってしまったからだ。



　するとその直後、私や娘に優しかった夫の態度は一変─。

　非常に素っ気ない態度を取るようになり、頻繁に家を空けるように─。



　私はそんな夫を咎めたが…両親が居る間は我慢してお前と娘の相手をして居たが、もうその必要は無くなったと夫は意味の分からない事を言い出した。



　実は、夫は私に隠れまた愛人と関係を持つようになり…と同時に、彼女との間に出来た子供とも再会─。

　愛人に似て器量の良いその子が、可愛くて可愛くて堪らないのだと言う。



　すると夫は、これからはお前と娘ではなく愛人とその子供を可愛がって行くと決めた─。

　両親の使って居た部屋も空いて居るし、そこに彼女達母娘を住まわせると言い出した。



　私は勿論反対したが…この家の主は俺だ、何をしようが俺の勝手だと夫は吐き捨て愛人の元へと出かけてしまった。


　
　愛人の存在が発覚すると、義両親の前で私とお腹の娘に向かって一生大事にすると誓った癖に…結局夫は改心した訳ではなく、猫を被って居ただけだったのか─。

　あの時はあなたの謝罪を受け入れたけれど…今度ばかりは許さないわ─。



　それから数日後…私は前もってある人物に家に来て欲しとお願いした上で、夫に離縁を言い渡し家から出て行くよう求めた。

　すると夫は、主の俺ではなくお前と娘が出て行けと言ったが…実は、この家の権利は夫ではなく私にあった。



　と言うのも…自分達亡き後息子がまた過ちを犯し妻子を傷付けやしないかと心配した義両親は、こっそり私を呼び出しこの家の名義を私にしてくれたのだ。

　更には自分達の財産の殆どを息子である夫ではなく、孫である娘に渡してくれ…万一の事があっても路頭に迷わないようにしてくれて居たのだった。



　すると、義両親の財産を自分が独り占めして居たと思って居た夫は大層驚き…家も金も俺のものだ、俺に返せと私と娘に詰め寄って来た。



　しかしそこに呼んで居た義父の弟、夫にとっては叔父が現れ…お前の父親から、お前に問題があった時は俺がその身を引き受ける事になって居る─。


　丁度人手も足りなかったし、お前とその愛人には俺の屋敷で一生使用人として働いて貰うと言い…嫌がる夫を家から引き摺って行くのだった。



　その後、元夫と愛人の子供は施設に送られ…残った二人は叔父に馬車馬のようにこき使われる事となり、金持ちの男の元で子供と優雅に暮らそうと企んで居た愛人はこの状況を大いに嘆くのだった。



　また元夫は後に過労で大熱を出し倒れ、それが元で子種が出来ない身体となり…それを知った周りの者達は、自分の子を大事にしなかった罰が下ったと囁き合うのだった。


　
　一方、私はと言うと…義両親が家もお金も残してくれた事で、娘と何不自由ない暮らしを送って居た。

　そしてそんな私達母娘に、幸せを与えてくれる殿方が出来たのだが…それは庭師の彼で、自分の好きな花を育ててくれる彼に娘は大層懐いた。



　元は大の花好きの義母の為、義父が腕の良い彼を雇って居たのだが…二人が亡くなると、花に興味がない元夫はすぐに彼を辞めさせてしまった。

　でも私も娘も花が好きだから、再び彼を呼び戻したのだが…最近私はそんな彼に、淡い恋心を抱くように─。



　彼は庭の花だけでなく、私と娘にも愛情を持って接してくれ…私はそんな彼と、この先もずっと一緒に居たいと考え始めて居た。

　そしてそれに気づいた娘が、自分も同じ気持ちだと言ってくれ…私は思い切って彼に告白する事に─。
　


　すると彼もまた私に好意を持ってくれて居る事が分かり、私達はお付き合いを始め…その後は成長した娘が寮付きの学園に入る事が決まり、一人になった私が寂しくないようにと彼は夫として一生私の傍に居る事を誓ってくれるのだった。



　元夫に二度も裏切られた事は辛かったけれど…今は愛する彼と彼が育てた花に囲まれ、私は本当に幸せだわ─。