『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私との結婚生活に不満しかない夫に離縁を伝え、愛する人の元へ行かせる事にします。

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「妻を愛するのが辛い…。」

「えぇ?あなたの奥様は、こんなお金持ちの家の娘よ。何が不満なの?」

「地味で暗いのが気に喰わないんだ。それにいくら金があっても、俺は所詮婿に入った身…贅沢は出来ない。妻を心から愛する真面目な婿…それを演じるのが、もう重荷に感じるよ。」

「だから、息抜きに私のような娼婦を買ってるのね?」

「あぁ…こんな窮屈な結婚生活になるなら、幼馴染と結婚しておけば良かった。あの時の彼女には婚約者が居てな…俺は身を引いたんだ。」


 
 そう言って、娼婦と話し込む夫。

 彼は私と父の留守を狙い、そのような女を家に招き愚痴を零して居たのだ。



 それだけでも衝撃だったが…まさか、私に対しそんな想いを持っていたとは─。

 そして、彼が言う幼馴染とは…もしや、彼女の事?


 
 彼は本当は、あの子と結婚するつもりだったのね。

 ならば、彼にはもう別れを告げよう─。



***



「離縁するって…お前、本気か?」

 そう言って驚く夫。



「…だって本当に愛する人と居た方が、あなたは幸せになれるのでしょう?」

「お前…もしや気づいて!?」

「彼女は華やかで美人な女性…惹かれるのも無理はありません。」



 そんな私の言葉に、夫は嬉し涙を流し荷物をまとめすぐに家を出て行った。

 恐らく、この足で幼馴染の元に向かうのだろう─。



***



「…それで私の元に?かつては婚約者が居たけど、今はこうして独り身よ。だから、あなたの気持ちを受け入れるわ!」

「本当か、嬉しいよ!」

 俺と幼馴染は、久しぶりの再会と思いが結ばれた事に喜び抱き合った。




「君と結ばれる為、妻と離縁した。俺は今度こそ愛に生きる。」

「…離縁?あなたも、独り身だったんじゃなく?」

「いや…縁あってある女と結婚した。まぁ、家同士の繋がりというか…それで仕方なくな。」

「別れる時、揉めたりは?」

「いや、特には…。」

「ならいいわ。私、男と女の揉め事はうんざりなの。」



 彼女にはかつて婚約者が居たが…きっと、そこで嫌な思いをしたんだろう。

 可哀相に…これからは、俺の愛で彼女の心の傷を癒そう。



 そう思っていた矢先、ある男が家を訪ねて来た。

 彼は、幼馴染の元婚約者と名乗った。



「ようやく見つけたぞ…今日こそ慰謝料を払って貰うからな!ある方が、お前の居場所を教えてくれたんだ…もう逃がしはしない!」

「い、慰謝料とはどういう事だ!?」

「この女は俺という婚約者が居ながらそれを隠し、何人もの男に粉をかけて居たんだ。被害にあった男は沢山居る!」

「何だって!?」

「こいつが金を払えないなら、お前が払え!今のこいつの相手はお前なんだろう!?」

「突然そんな事を言われても…。頼む、少しだけ待ってくれ─!」



***



「…それで、私の所に?」

「俺の愛を応援してくれたお前だ…それに、元妻のよしみで何とか金を─!」

 そんな元夫の言葉に、私は思わず噴き出した。



「応援…?違うわ、私はこうなる事を見越しあなたに別れを告げたの。これもある意味復讐かしら…私を陰で罵り、娼婦と不貞を働いたあなたと…それから、あの女へのね。」

「か、彼女がお前に一体何をしたんだ!?」

「私には血の繋がらない弟がいてね…。あの子はとても純粋な子だった。だからよ、ある悪女に騙されお金を貢がされ、その挙句あっさり捨てられた。そのせいで心を病み、今は田舎の療養所に居るわ。そしてその悪女というのが、あなたが愛するあの幼馴染なの。」

「えぇ!?」

「彼女が、婚約者の慰謝料請求から逃げ続けているのは知ってた。でも、その行方までは分からなかった。そんな中、私はあなたと縁あって結婚した。あなたと彼女は幼馴染、それは分かっていたけど…まさか彼女と結婚したいと思う程に愛してたとはね。でもあなたのおかげで、彼女の行方が掴めたわ。」

「では、あいつに彼女の居場所を知らせたのは─!」

「私よ。家を出たあなたの後を、従者に付けさせたの。」

「そんな…。」

「ですから、そんな女を助ける為のお金など、私が貸す訳無いわ。あなたが自分でどうにかする事ね─。」



***



 結局…元夫はお金を用意できず、幼馴染を助ける事が出来なかった。

 すると幼馴染は元婚約者に連れて行かれ、そのまま娼館に売り飛ばされお金に換えられた。



 元夫は私以外に、友人たちにもお金を貸す様頭を下げて回ったそうだが上手く行かなかったのだ。

 でも妻を馬鹿にした上、妻の家のお金を勝手に使い娼婦を買い家に連れ込んだ…そんな事実が知られていては、断られて当然だわ。



 そしてそんな元夫はついに実家からも見放され、身一つで路頭に迷う事に─。

 すると今になって、私との復縁を願ってるそうだけど…そんな願いは捨てなさい。



 だって私は既に父の知り合いのご子息と再婚する事が決まり、その方と暮らす準備で忙しいから─。

 そんな彼は、娼婦など絶対に家に呼ばない真面目で誠実な人で…そのような人ならば、安心して一緒になれると嬉しく思って居るわ─。
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