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浮気など大した事では無いと考え離縁しない夫との結婚生活を、私は終わらせる事にします。
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「お前を嫌いと言うか…ただ、抱く気にならないだけだ。だから、離縁までするつもりはない。」
そう言って、自室へ戻って行く夫。
確かにあなたから嫌いだとか、愛してないとか言われた訳じゃない。
普通に話もするし、一緒に食事を取り、出掛ける事もある。
でも、あなたは決して私に触れようとはしない。
私はそんなあなたとの結婚生活を、とても虚しく思って居るわ─。
※※※
「…最近、あいつの口から離縁という言葉が頻繁に出てくるんだ。」
「それは、あなたの気を引きたいのよ。あの子、昔からそういう所があるから。」
「全く、陰湿で鬱陶しいな…。俺は、君のような明るくて裏表のない女の方が好きだよ。」
孫あ俺の言葉に笑顔を返す彼女は、妻の幼馴染だ。
いつしか二人で合うようになり、こうして体の関係を持つのにそう時間はかからなかった。
「俺はもう、君しか抱きたいと思わない。妻には…もう、何の魅力も感じないよ。」
「毎日一緒に居れば飽きるのも当然よ。浮気など遊び…皆やってる事だし、あなたも気軽に楽しめばいいのよ。」
彼女のこの言葉に、俺の心は軽くなった。
そうだ、浮気など大した事じゃない。
離縁しないよう、上手い事両立させればいいんだ。
幸いあいつは、俺と彼女の関係に気付いてないしな─。
ところが、あいつは俺に突然離縁を言い渡して来た。
「…冗談だよな?俺はお前を嫌いじゃないと、離縁する気はないと言ったぞ?肉体関係がなくても、夫婦としてやっている者たちはいくらでも居る。俺とお前はそういう夫婦、それでいいじゃないか!」
「私も、あなたがそれを望むなら、もうそういう夫婦でも仕方ないと思った。でも…やっぱりそれじゃ寂しいの。そして…ある事を知ってからは、それが怒りへと変わったわ。」
ある事って…まさか─!?
「あなた、私の幼馴染と浮気してるわね?」
「ど、どこにそんな証拠が─」
「彼女がなくしたと言っていたイヤリング。これ、どこにあったと思う?私の部屋のクローゼットの中よ。それからこの指輪…これは私が育ててる鉢植えの中から。」
「何だってそんな所に…俺のベッドの下からならともかく…あッ!?」
うっかり口を滑らせた俺は、顔からサッと血の気が引いた。
そしてそんな俺を、妻は冷たい目で見て来た。
「彼女はね、これをわざと私の目に付く所に置いたの。あなたを自分の物だと見せつける為にね。あの子は、そういう事を喜んでする女よ。あなたは彼女の事を、明るくて裏表のない女と思ってるようだけど…全然違うわ。」
「何!?」
「あの子はね、昔私が付き合っていた恋人にもちょっかいをかけて来て、これと同じ事をしたの。これらを見つけた時、あなたが浮気している事、その相手が彼女である事はすぐ分かった。」
「そ、そんな…。」
「過去の私は、彼女を咎める事なく許した…家同士の力関係で、そうせざるを得なかったから。だから彼女は、今度も何の罰も受けないと思いあなたにも手を出した。でも、今回ばかりは許さない…あの子にも、そしてあなたにも罰を受けて貰う!」
「だって彼女が、浮気など遊び…皆やってる事だって…!俺は別に本気じゃなかった…お前と離縁しようなど、そんなつもりは…!」
「そんな事を平然と言ってのけるあなたとは、もうやって行けない。嫌いではないから、離縁はしない…?あなたはそうでも、私はもう、顔も見たくない程あなたが嫌いなのです。だから、お別れしましょう─。」
***
その後…私は、元夫から多額の慰謝料を貰い離縁した。
彼の父の力添えもあり、全てがトントン拍子で片付いたのだ。
彼の浮気を、お父様に相談して良かったわ。
自身の妻の浮気に悩まされたお人だったから、私の気持ちを誰よりも分かってくれると思ってたもの。
それに私は、息子より頭が回るしっかり者と、実の娘のように可愛がられていたしね。
こうして元夫は一族から追放され…そのままこの地からも追放となってしまい、今は行方知れずだ。
また私は、幼馴染にも慰謝料を請求した。
どうして今度は許してくれないのと彼女は文句を言ってきたが…今の彼女の家は破産寸前、私の家より遥かに格下…あの時とは状況が違うわ。
もうあなたの家は、あなたの不祥事を握り潰す事は出来ない。
するとこの事で実家から見放された彼女は、田舎の知り合いの家で使用人として働く事に─。
自分の力で、一生かけて慰謝料を払う事を約束させられるのだった。
そして、全てを終えた私はと言うと…その頭の良さからすぐに素敵な殿方に見初められ、将来を前提にお付き合いを始める事となり幸せ一杯の日々を送って居る。
しかし火遊びのつもりがこんな大事になるとは、あの二人は後悔してもしきれないでしょう。
私としては、顔も見たくない程大嫌いになったあなたたちがこうして表舞台から消えてくれて清々してるけどもね─。
そう言って、自室へ戻って行く夫。
確かにあなたから嫌いだとか、愛してないとか言われた訳じゃない。
普通に話もするし、一緒に食事を取り、出掛ける事もある。
でも、あなたは決して私に触れようとはしない。
私はそんなあなたとの結婚生活を、とても虚しく思って居るわ─。
※※※
「…最近、あいつの口から離縁という言葉が頻繁に出てくるんだ。」
「それは、あなたの気を引きたいのよ。あの子、昔からそういう所があるから。」
「全く、陰湿で鬱陶しいな…。俺は、君のような明るくて裏表のない女の方が好きだよ。」
孫あ俺の言葉に笑顔を返す彼女は、妻の幼馴染だ。
いつしか二人で合うようになり、こうして体の関係を持つのにそう時間はかからなかった。
「俺はもう、君しか抱きたいと思わない。妻には…もう、何の魅力も感じないよ。」
「毎日一緒に居れば飽きるのも当然よ。浮気など遊び…皆やってる事だし、あなたも気軽に楽しめばいいのよ。」
彼女のこの言葉に、俺の心は軽くなった。
そうだ、浮気など大した事じゃない。
離縁しないよう、上手い事両立させればいいんだ。
幸いあいつは、俺と彼女の関係に気付いてないしな─。
ところが、あいつは俺に突然離縁を言い渡して来た。
「…冗談だよな?俺はお前を嫌いじゃないと、離縁する気はないと言ったぞ?肉体関係がなくても、夫婦としてやっている者たちはいくらでも居る。俺とお前はそういう夫婦、それでいいじゃないか!」
「私も、あなたがそれを望むなら、もうそういう夫婦でも仕方ないと思った。でも…やっぱりそれじゃ寂しいの。そして…ある事を知ってからは、それが怒りへと変わったわ。」
ある事って…まさか─!?
「あなた、私の幼馴染と浮気してるわね?」
「ど、どこにそんな証拠が─」
「彼女がなくしたと言っていたイヤリング。これ、どこにあったと思う?私の部屋のクローゼットの中よ。それからこの指輪…これは私が育ててる鉢植えの中から。」
「何だってそんな所に…俺のベッドの下からならともかく…あッ!?」
うっかり口を滑らせた俺は、顔からサッと血の気が引いた。
そしてそんな俺を、妻は冷たい目で見て来た。
「彼女はね、これをわざと私の目に付く所に置いたの。あなたを自分の物だと見せつける為にね。あの子は、そういう事を喜んでする女よ。あなたは彼女の事を、明るくて裏表のない女と思ってるようだけど…全然違うわ。」
「何!?」
「あの子はね、昔私が付き合っていた恋人にもちょっかいをかけて来て、これと同じ事をしたの。これらを見つけた時、あなたが浮気している事、その相手が彼女である事はすぐ分かった。」
「そ、そんな…。」
「過去の私は、彼女を咎める事なく許した…家同士の力関係で、そうせざるを得なかったから。だから彼女は、今度も何の罰も受けないと思いあなたにも手を出した。でも、今回ばかりは許さない…あの子にも、そしてあなたにも罰を受けて貰う!」
「だって彼女が、浮気など遊び…皆やってる事だって…!俺は別に本気じゃなかった…お前と離縁しようなど、そんなつもりは…!」
「そんな事を平然と言ってのけるあなたとは、もうやって行けない。嫌いではないから、離縁はしない…?あなたはそうでも、私はもう、顔も見たくない程あなたが嫌いなのです。だから、お別れしましょう─。」
***
その後…私は、元夫から多額の慰謝料を貰い離縁した。
彼の父の力添えもあり、全てがトントン拍子で片付いたのだ。
彼の浮気を、お父様に相談して良かったわ。
自身の妻の浮気に悩まされたお人だったから、私の気持ちを誰よりも分かってくれると思ってたもの。
それに私は、息子より頭が回るしっかり者と、実の娘のように可愛がられていたしね。
こうして元夫は一族から追放され…そのままこの地からも追放となってしまい、今は行方知れずだ。
また私は、幼馴染にも慰謝料を請求した。
どうして今度は許してくれないのと彼女は文句を言ってきたが…今の彼女の家は破産寸前、私の家より遥かに格下…あの時とは状況が違うわ。
もうあなたの家は、あなたの不祥事を握り潰す事は出来ない。
するとこの事で実家から見放された彼女は、田舎の知り合いの家で使用人として働く事に─。
自分の力で、一生かけて慰謝料を払う事を約束させられるのだった。
そして、全てを終えた私はと言うと…その頭の良さからすぐに素敵な殿方に見初められ、将来を前提にお付き合いを始める事となり幸せ一杯の日々を送って居る。
しかし火遊びのつもりがこんな大事になるとは、あの二人は後悔してもしきれないでしょう。
私としては、顔も見たくない程大嫌いになったあなたたちがこうして表舞台から消えてくれて清々してるけどもね─。
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