『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私が居なければ愛する人と結婚できたのにと責める夫…ならばお望み通り消えてあげますね。

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 私と夫は家同士の繋がりで結婚した。

 しかし夫は、私ではなく美しい義妹との結婚を望んだ。

 だが姉の私の方が先に結婚するべきと言う私の父の考えで、それは実現しなかった。



 すると夫はこれをずっと根に持って居たようで…父が急死すると、それ以降毎日に私を責めるように─。
 
 お前さえ居なければ、俺は愛する彼女と結婚できたのに─。

 彼女だって俺を好いて慕ってくれて居たと言うのに、お前さえ居なければ─。



 夫の言葉を毎日聞く内、私はそれが呪いの言葉のように思えて来てしまった。
 
 そしてそんな事を口にする夫に対し、もう彼とはこの先とても一緒にやって行けないと思うように─。



 そんなに私の存在が邪魔だと言うなら、あなたのお望み通りあなたの前から姿を消すわ。

 そして私の代わりに、あなたの愛する義妹をここに寄こしてあげる─。

 そうして私は離縁の届けを残し、夫の元から姿を消した。



 その後それに気づいた夫は、意気揚々とそれにサインした。
 
 と同時に、そんな彼の元に義妹が訪ねて来た。



 そして義妹は、今日からお姉様の代わりにここでお世話になる─。

 実はある男と婚約して居たけれど、あなたの方が好きだからここにやって来たと彼に告げるのだった。



 すると元夫は、邪魔者のあいつが居なくなったと思ったら愛する人が来てくれたと大喜びし彼女を迎えるのだった。



 そうして愛する義妹と幸せに暮らし始めた元夫だったが…そんな日々は長くは続かなかった。

 と言うのも、義妹は元婚約者から大金を騙し取って居て…それを返すよう元婚約者が訴えたからだ。



 しかし元夫は、自分は金持ちだからそんなものはすぐに立て替えてやれると豪語したが…いざ金庫の中を見れば、そこにあったはずの札束はほとんどなくなって居た。



 実は私は家を出る際、金庫の中から今まで精神的苦痛を受けた慰謝料と…そして離縁に当たり財産分与だと言う事でいくらかお金を持ち出して居た。

 

 だがこの事は、離縁の届と一緒に置手紙に残して居たが…彼は私の手紙など興味ないと読まずに破り捨てた為、気付かなかったらしい。
 


 更に、家に迎えた義妹は金遣いが荒く…彼に内緒で金庫の鍵を持ち出しては、そこからお金を抜き取る事を繰り返して居たらしい。
 
 そうして彼が気付いた時には、彼の財産は殆ど無くなって居たと言う訳だ。



 すると漸くこの事態に気付いた彼は、そこには今後の事業資金も入って居たのにと義妹を責めた。

 しかし義妹は全く反省せず、お姉様に呼ばれたから来てあげたと言うのに…私に贅沢をさせてくれない男なんてこちらから願い下げだと彼を罵るのだった。



 しかしこれが元夫のプライドを大層傷付けたらしく…彼は怒りの余り、義妹を階段から突き落してしまった。

 結局その事が原因で元夫は捕らえられ、牢へと送られてしまった。



 そして何とか命は助かった義妹だが、その美しい顔に大きな傷を残す事に─。

 そのせいで意気消沈する彼女だったが、更に不幸は続いた。

 元婚約者に金を返せない彼女は、顔を隠し男に体を売り金を返す事を相手に命じられてしまったのだ。



 すると彼女は姉の私に助けを求めたが…私はそんな彼女に対し、あなたは元は他人だから無理と拒否した。

 実は彼女は、私の家の前に赤子の時に捨てられて居た。

 そしてそれを憐れに思った父が、彼女を私の妹として育てる事にしたのだった。



 この事は彼女には内緒にして居り…彼が彼女を求めた時に父が断ったのも、そう言う事情があったからだった。

 結婚は年齢順と言うのはあくまで表向き…彼はそれなりの名家のご子息だから、素性が分からない彼女を嫁にやる事は難しいと父は思ったのでしょうね。

 

 つまり父なりの思いやりと言う訳だったが…それを彼は逆恨みし、妻となった私にその不満をぶつけ続けた。

 そしてそんな彼に嫌気が差した私に彼は捨てられ、とんでもない義妹を傍に置き破滅してしまったのだ。



 その後元夫は、周りから良妻と評判だった私に何故あそこまで文句を言ってしまったのか…私の事を邪険にし、そして義妹を選んだ事を牢の中で心から悔いて居るらしい。


 
 一方、彼の元を去った私だが…持ち出したお金である土地を買い、やりたかった事業を展開させて居た。

 元夫の事業を手伝う内、いつかは自分で一から事業に携わりたいと思うようになって居たが…あんな事を言う人にはとても相談できず、今まで我慢して居たのだ。

 幸い元夫の暴言を知った彼の知り合いが私を支援してくれ、おかげで事業は軌道に乗って居る。


 
 そして私とその方は、やがて公私共に過ごすようになり…私は彼から妻になって欲しいと求婚される事に─。

 彼は自身が心から愛する人と結婚する事が望みだったと言い、それはそれは私を大事にしてくれた。

 

 今迄夫から邪険にされ愛されなかった私はそれがとても嬉しく、彼の気持ちに喜んで応える事に─。

 そして今では周りからも大層評判のおしどり夫婦となり、幸せな結婚生活を送って居るわ─。
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