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私を捨てた旦那様は、そのせいで愛しい人を絶対に手に入れる事が出来なくなりました。
しおりを挟む ある日、旦那様に離縁を告げられた私。
だが私は、いつか別れを切り出されると思って居た。
と言うのも、旦那様と私は家同士の約束で結婚したが…結婚後共に生活して行く中で彼に愛が芽生える事はなく、私もそれを期待する事は暫し前に辞めてしまった。
だから、離縁する事は構わない。
でも…そうなって困るのは旦那様、あなたです。
あなたはもう、愛しい人を手に入れる事は出来なくなるわ。
その後旦那様の部屋を出た私は、ある人物に別れを告げた。
「…そう言う事だから、私はもう居なくなるわ。だから、この地に住むあなたともお別れなの。」
『…!?』
***
あいつとの離縁が成立した。
妻のあいつが居ては、俺の恋が叶わないからな。
この家に度々遊びに来る、妻の友人だが…その女は、それはそれは美しい顔立ちをして居た。
そして物静かで、いつも微笑を浮かべ…俺はその女を見る度に大層胸が高鳴るのだった。
なのに妻は、そんな俺から女を庇うようにすぐ自分の部屋に連れて行ってしまう。
女も女で、俺を見ると何故か怯えた目をする。
だが、そんな顔もまた美しく…いつか俺の下で泣かせてやりたいと、そういう征服欲を搔かき立てられるのだ。
妻とあの女は、明日の昼に会う約束だ。
あの女は、妻が離縁し家を追い出された事を知る由もない。
そうして家に来た所を捕え、この家の地下牢に監禁…そして無理矢理にでも、俺の妻にしてやろう─!
翌日の朝、妻は少ない荷物を手に家を出て行った。
俺はあいつに手切れ金だけ渡し、別れの言葉もかける事無く見送った。
そして昼過、待ちに待った女がやって来た。
「あいつは手が離せなくてな…代わりに俺が迎えてやる。どうした…早く入れ。」
しかし、女はじっと俺を見つめて居て…それは熱い視線というより、何と言うか恨みがましい目だった。
俺はそんな女の腕を掴み、家の中に引き摺ずり込み…そして、隠し持っていた縄で縛り上げた。
「あいつはもう居ない、俺が捨ててやったからな。代わりに今日から君が俺の妻だ、断る事は許さない!」
するとその途端、女の身体から眩まばい光が放たれ縄が解けた。
『よくも私の大事な人を追い出しましたね。あなたの事は前から嫌いでしたが…今は一層嫌いです。彼女を守護する精霊の私が、あなたのような愚者の好きにされる訳ないでしょう?』
「精霊…?お前、人間じゃないのか!?」
『えぇ。そしてあなたの妻は、私たち精霊と仲良くなれる精霊の申し子だった。その彼女を粗末に扱い、私を手籠にしようとするなどきっと精霊王が罰をお与えになるわ!』
そう言って、女の姿は消えてしまった。
「…どこへ行った!?俺はお前が好きなんだ、行かないでくれ─!」
俺は急いで外に飛び出した。
すると、何故か晴れていたはずの空は真っ暗でゴロゴロと恐ろしい音が鳴っている。
そして一瞬空が強く光ったかと思うと、一筋の稲妻が落ちるのが分かったが…何とそれは俺めがけ落ちて来て、強い衝撃を受けた俺はそのまま意識を失った─。
***
「…気付かれました?」
「お前…?ここはどこだ!?」
「ここは領地の外れにある診療所です。あなたは雷に打たれ、その後ここに運ばれたんです。」
「精霊が…精霊王がやったんだ!俺をこんな目に遭わせやがって!」
「・・・ご自分のやろうとした事に、罪の意識はないのね。いい事?あなたの目に見えなくても、精霊は周りに沢山居ます。精霊王の悪口を言おうものなら…あなた、今度こそは死にますよ?まぁ…その顔では、今すぐ死にたくなるかもしれませんけれど。」
そう言って、私は近くにあった鏡を彼に渡した。
「あなたがこんな人里離れた所に入れられたのは、ちゃんと理由があるのよ─。」
そして鏡を見た彼は、大きな悲鳴を上げた。
と言うのも、雷に打たれた彼の顔は赤黒くなったまま、一向に戻らなかったからだ。
「それは精霊の罰を受けた証ですから、お医者様でも治せないわ。そしてあなたの親族はそんなあなたを恐れ、ここに押し込めたんです。そしてその世話を、元妻である私に押し付けようと私を無理矢理ここへ連れてきましたが…私だってそんなのご免です。だって私は、精霊のおかげである名家のご子息と縁を結び再婚できる事になりましたので…もうあなたに構って居られないの。では、そろそろ失礼します。」
「お、俺を見捨てないでくれ─!」
そう言って、元夫は私を引き留めようとしたが…私はそれを無視し、診療所を後にするのだった。
結局元夫は、親族だけでなく友人や知人と言った周りの者全てから見放され、一人寂しく診療所で暮らして居る。
常に精霊に監視され、また精霊王に罰を受けやしないか日々怯えながら─。
そしてそんな日々が、死ぬまでずっと続くのだ。
こんな事になるなら…あの時一瞬で命を失っていた方が、あの人にとっては幸せだったのかも知れないわね─。
だが私は、いつか別れを切り出されると思って居た。
と言うのも、旦那様と私は家同士の約束で結婚したが…結婚後共に生活して行く中で彼に愛が芽生える事はなく、私もそれを期待する事は暫し前に辞めてしまった。
だから、離縁する事は構わない。
でも…そうなって困るのは旦那様、あなたです。
あなたはもう、愛しい人を手に入れる事は出来なくなるわ。
その後旦那様の部屋を出た私は、ある人物に別れを告げた。
「…そう言う事だから、私はもう居なくなるわ。だから、この地に住むあなたともお別れなの。」
『…!?』
***
あいつとの離縁が成立した。
妻のあいつが居ては、俺の恋が叶わないからな。
この家に度々遊びに来る、妻の友人だが…その女は、それはそれは美しい顔立ちをして居た。
そして物静かで、いつも微笑を浮かべ…俺はその女を見る度に大層胸が高鳴るのだった。
なのに妻は、そんな俺から女を庇うようにすぐ自分の部屋に連れて行ってしまう。
女も女で、俺を見ると何故か怯えた目をする。
だが、そんな顔もまた美しく…いつか俺の下で泣かせてやりたいと、そういう征服欲を搔かき立てられるのだ。
妻とあの女は、明日の昼に会う約束だ。
あの女は、妻が離縁し家を追い出された事を知る由もない。
そうして家に来た所を捕え、この家の地下牢に監禁…そして無理矢理にでも、俺の妻にしてやろう─!
翌日の朝、妻は少ない荷物を手に家を出て行った。
俺はあいつに手切れ金だけ渡し、別れの言葉もかける事無く見送った。
そして昼過、待ちに待った女がやって来た。
「あいつは手が離せなくてな…代わりに俺が迎えてやる。どうした…早く入れ。」
しかし、女はじっと俺を見つめて居て…それは熱い視線というより、何と言うか恨みがましい目だった。
俺はそんな女の腕を掴み、家の中に引き摺ずり込み…そして、隠し持っていた縄で縛り上げた。
「あいつはもう居ない、俺が捨ててやったからな。代わりに今日から君が俺の妻だ、断る事は許さない!」
するとその途端、女の身体から眩まばい光が放たれ縄が解けた。
『よくも私の大事な人を追い出しましたね。あなたの事は前から嫌いでしたが…今は一層嫌いです。彼女を守護する精霊の私が、あなたのような愚者の好きにされる訳ないでしょう?』
「精霊…?お前、人間じゃないのか!?」
『えぇ。そしてあなたの妻は、私たち精霊と仲良くなれる精霊の申し子だった。その彼女を粗末に扱い、私を手籠にしようとするなどきっと精霊王が罰をお与えになるわ!』
そう言って、女の姿は消えてしまった。
「…どこへ行った!?俺はお前が好きなんだ、行かないでくれ─!」
俺は急いで外に飛び出した。
すると、何故か晴れていたはずの空は真っ暗でゴロゴロと恐ろしい音が鳴っている。
そして一瞬空が強く光ったかと思うと、一筋の稲妻が落ちるのが分かったが…何とそれは俺めがけ落ちて来て、強い衝撃を受けた俺はそのまま意識を失った─。
***
「…気付かれました?」
「お前…?ここはどこだ!?」
「ここは領地の外れにある診療所です。あなたは雷に打たれ、その後ここに運ばれたんです。」
「精霊が…精霊王がやったんだ!俺をこんな目に遭わせやがって!」
「・・・ご自分のやろうとした事に、罪の意識はないのね。いい事?あなたの目に見えなくても、精霊は周りに沢山居ます。精霊王の悪口を言おうものなら…あなた、今度こそは死にますよ?まぁ…その顔では、今すぐ死にたくなるかもしれませんけれど。」
そう言って、私は近くにあった鏡を彼に渡した。
「あなたがこんな人里離れた所に入れられたのは、ちゃんと理由があるのよ─。」
そして鏡を見た彼は、大きな悲鳴を上げた。
と言うのも、雷に打たれた彼の顔は赤黒くなったまま、一向に戻らなかったからだ。
「それは精霊の罰を受けた証ですから、お医者様でも治せないわ。そしてあなたの親族はそんなあなたを恐れ、ここに押し込めたんです。そしてその世話を、元妻である私に押し付けようと私を無理矢理ここへ連れてきましたが…私だってそんなのご免です。だって私は、精霊のおかげである名家のご子息と縁を結び再婚できる事になりましたので…もうあなたに構って居られないの。では、そろそろ失礼します。」
「お、俺を見捨てないでくれ─!」
そう言って、元夫は私を引き留めようとしたが…私はそれを無視し、診療所を後にするのだった。
結局元夫は、親族だけでなく友人や知人と言った周りの者全てから見放され、一人寂しく診療所で暮らして居る。
常に精霊に監視され、また精霊王に罰を受けやしないか日々怯えながら─。
そしてそんな日々が、死ぬまでずっと続くのだ。
こんな事になるなら…あの時一瞬で命を失っていた方が、あの人にとっては幸せだったのかも知れないわね─。
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