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子を授からない私に代わり、愛人である妹に自身の子を産ませようとした夫の誤算──。
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私と夫は結婚して五年になるが、未だに子に恵まれ無かった。
少し前までは、何とか私に自身の子を産ませようとして居た夫だったが…今ではすっかり私に愛想を尽かし、私の妹と体の関係を持つようになってしまった。
夫は、非道にも妻の妹を愛人にしたのだ。
私は、夫に何度も妹と別れるよう願った。
しかし夫は、私の話を一切聞こうとはしなかった。
そして、まだ若い妹の方が妊娠する可能性が高い…故に、妹に自分の子を産ませると言い出したのだ。
「あの子だって、美形の俺の子を欲しがって居たぞ?子が産まれても、お前は形だけの妻と言う事で離縁はしないし…そう文句を言うな。それに、お前の子だろうが妹の子だろうが…同じ一族の血を引いて居るんだし良いじゃないか。」
私は、妹は子を授かっていい女ではない…妹との子は諦めるよう夫に迫ったが…夫はそんな私を鬱陶しく思ったようで、空き家だった離れに閉じ込めてしまった。
「お前の妹が俺の子を身籠り無事出産するまで、そこで大人しくして居るがいい。その後は…お前の態度次第で、またこちらの屋敷に戻してやっても構わん。」
そう言って、夫は私の元を去ったのだった─。
その後…以前よりお腹のふっくらした妹が屋敷に迎えられる様子を、私は離れの窓から確認した。
あの子…まさか本当に夫の子を身籠ったとでも言うの?
あの子には、そんな事は出来ない筈なのに─。
だがその数日後…彼と妹の住む屋敷に、城の使者と兵が押し寄せる事となった。
そして妹は、兵によって捕らえられる事になったのだが…その際に妹のお腹に詰められて居た水袋が破れ、妊娠は嘘だと判明した。
夫は驚きつつも、そんな妹を責めた。
妹は…どうしてもあなたの子が欲しかったのに、お姉様同様妊娠の兆しがちっとも見られない…このままでは私もいずれ飽きられてしまうと思い、妊娠を偽装したのだと言った。
「その子は、私と違い永遠に子を授かる事は出来ませんよ?何故なら、私がそう言う術を施してしまったから─。」
城の使者によって離れから救い出された私の言葉に、夫はどういう事かと詰め寄った。
「話は学生時代に遡りますが…妹は当時、同じ学園に通うある殿方に恋をしました。しかし、彼はこの国の王子様で…立派な婚約者が既にお見えになった。なのに妹は、王子と無理やり体の関係を持とうとした。そうする事で、王子と婚約者との仲を裂こうとしたのです─。」
しかし、それは見事に失敗し…未遂と言う事もあったが、妹はそれなりの罰を受ける事になったのだ。
「すると…当時からこの国でも優れた魔力を持って居た私に、王様がこんな事を仰いました─。」
妹のようなふしだらな真似をする女がもし子を身籠っても、その子供が可哀そうだ。
そんな不幸が起きる前に、妹に術をかけ子を成す力を封じるのだ、と─。
「私はそれに従いました。妹のお腹にある痣はただの痣ではなく…私に術をかけられた証なのです。」
するとそれを聞いて居た妹は、実の妹に何て事をするのだと怒り狂った。
「…血が繋がって居る本当の妹なら、私も多少は躊躇らったかも知れないけれど…所詮、あなたは赤の他人だもの。」
妹…彼女は、私の実家の前に捨てられて居た赤子だった。
それを憐れんだ父が、私の妹として育てたに過ぎない。
するとそれを聞いた夫は…例え妹の子でも、名家の血筋と私同様の強い魔力を持った子が誕生すると期待して居たらしく、そんな事だとは思わなかったと嘆いた。
しかし、夫の誤算はそれだけで終わらなかった。
夫は彼女に罰を与えた功績者の私を理不尽に幽閉した罰として、財産を没収された上にこの地から追放される事になってしまったのだ。
「まさか…お前が魔力を用いてでも離れから抜け出さなかったのは、俺に大人しく従って居たのではなく…こうなる事を見据え─」
「どうかしらね?いずれにせよ、不貞を働き妻を幽閉するなどまともな人間がやる事では無いわ。世間から批判されるのは、間違いなくあなたの方よ─。」
その後…妹はもう二度と男と関係を持てないよう、お城の地下牢に一生入れられる羽目になってしまった。
彼女は子を産む自由どころか、自身の自由を死ぬまで奪われる結果となったのだ。
そして元夫も…皆から白い目で見られる中、この地を去る事に─。
この国は元々浮気や不貞行為が厳しく非難されるから、そうなっても仕方のない事ね。
一方、私はと言うと…実家に戻り、穏やかな生活を送って居た。
すると偶然にも学生時代の恋人に再会し、私達は再び交際をする事に─。
そして、その彼との再婚が決まったのだが…彼と結ばれて半年も経たない内に、私は彼の子を身籠った。
どうやら慣れ親しんだ地に戻った事で、妊娠しやすい身体になって居たようだ。
確かに、食事や環境も今の方が自分に合って居る…でも何より、今の夫が私を心から大事にしてくれる事が一番の理由だと思うわ。
彼の細やかな気遣いや優しさのおかげで、私は何のストレスも無く…何不自由ない暮らしを送らせて貰って居るから─。
そして私は、少し大きくなったお腹を撫でると…夫と漸く授かった我が子を、生涯かけて愛する事を誓うのだった─。
少し前までは、何とか私に自身の子を産ませようとして居た夫だったが…今ではすっかり私に愛想を尽かし、私の妹と体の関係を持つようになってしまった。
夫は、非道にも妻の妹を愛人にしたのだ。
私は、夫に何度も妹と別れるよう願った。
しかし夫は、私の話を一切聞こうとはしなかった。
そして、まだ若い妹の方が妊娠する可能性が高い…故に、妹に自分の子を産ませると言い出したのだ。
「あの子だって、美形の俺の子を欲しがって居たぞ?子が産まれても、お前は形だけの妻と言う事で離縁はしないし…そう文句を言うな。それに、お前の子だろうが妹の子だろうが…同じ一族の血を引いて居るんだし良いじゃないか。」
私は、妹は子を授かっていい女ではない…妹との子は諦めるよう夫に迫ったが…夫はそんな私を鬱陶しく思ったようで、空き家だった離れに閉じ込めてしまった。
「お前の妹が俺の子を身籠り無事出産するまで、そこで大人しくして居るがいい。その後は…お前の態度次第で、またこちらの屋敷に戻してやっても構わん。」
そう言って、夫は私の元を去ったのだった─。
その後…以前よりお腹のふっくらした妹が屋敷に迎えられる様子を、私は離れの窓から確認した。
あの子…まさか本当に夫の子を身籠ったとでも言うの?
あの子には、そんな事は出来ない筈なのに─。
だがその数日後…彼と妹の住む屋敷に、城の使者と兵が押し寄せる事となった。
そして妹は、兵によって捕らえられる事になったのだが…その際に妹のお腹に詰められて居た水袋が破れ、妊娠は嘘だと判明した。
夫は驚きつつも、そんな妹を責めた。
妹は…どうしてもあなたの子が欲しかったのに、お姉様同様妊娠の兆しがちっとも見られない…このままでは私もいずれ飽きられてしまうと思い、妊娠を偽装したのだと言った。
「その子は、私と違い永遠に子を授かる事は出来ませんよ?何故なら、私がそう言う術を施してしまったから─。」
城の使者によって離れから救い出された私の言葉に、夫はどういう事かと詰め寄った。
「話は学生時代に遡りますが…妹は当時、同じ学園に通うある殿方に恋をしました。しかし、彼はこの国の王子様で…立派な婚約者が既にお見えになった。なのに妹は、王子と無理やり体の関係を持とうとした。そうする事で、王子と婚約者との仲を裂こうとしたのです─。」
しかし、それは見事に失敗し…未遂と言う事もあったが、妹はそれなりの罰を受ける事になったのだ。
「すると…当時からこの国でも優れた魔力を持って居た私に、王様がこんな事を仰いました─。」
妹のようなふしだらな真似をする女がもし子を身籠っても、その子供が可哀そうだ。
そんな不幸が起きる前に、妹に術をかけ子を成す力を封じるのだ、と─。
「私はそれに従いました。妹のお腹にある痣はただの痣ではなく…私に術をかけられた証なのです。」
するとそれを聞いて居た妹は、実の妹に何て事をするのだと怒り狂った。
「…血が繋がって居る本当の妹なら、私も多少は躊躇らったかも知れないけれど…所詮、あなたは赤の他人だもの。」
妹…彼女は、私の実家の前に捨てられて居た赤子だった。
それを憐れんだ父が、私の妹として育てたに過ぎない。
するとそれを聞いた夫は…例え妹の子でも、名家の血筋と私同様の強い魔力を持った子が誕生すると期待して居たらしく、そんな事だとは思わなかったと嘆いた。
しかし、夫の誤算はそれだけで終わらなかった。
夫は彼女に罰を与えた功績者の私を理不尽に幽閉した罰として、財産を没収された上にこの地から追放される事になってしまったのだ。
「まさか…お前が魔力を用いてでも離れから抜け出さなかったのは、俺に大人しく従って居たのではなく…こうなる事を見据え─」
「どうかしらね?いずれにせよ、不貞を働き妻を幽閉するなどまともな人間がやる事では無いわ。世間から批判されるのは、間違いなくあなたの方よ─。」
その後…妹はもう二度と男と関係を持てないよう、お城の地下牢に一生入れられる羽目になってしまった。
彼女は子を産む自由どころか、自身の自由を死ぬまで奪われる結果となったのだ。
そして元夫も…皆から白い目で見られる中、この地を去る事に─。
この国は元々浮気や不貞行為が厳しく非難されるから、そうなっても仕方のない事ね。
一方、私はと言うと…実家に戻り、穏やかな生活を送って居た。
すると偶然にも学生時代の恋人に再会し、私達は再び交際をする事に─。
そして、その彼との再婚が決まったのだが…彼と結ばれて半年も経たない内に、私は彼の子を身籠った。
どうやら慣れ親しんだ地に戻った事で、妊娠しやすい身体になって居たようだ。
確かに、食事や環境も今の方が自分に合って居る…でも何より、今の夫が私を心から大事にしてくれる事が一番の理由だと思うわ。
彼の細やかな気遣いや優しさのおかげで、私は何のストレスも無く…何不自由ない暮らしを送らせて貰って居るから─。
そして私は、少し大きくなったお腹を撫でると…夫と漸く授かった我が子を、生涯かけて愛する事を誓うのだった─。
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