『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

文字の大きさ
上 下
10 / 132

好きな人が出来たから離縁しろ…それが嫌ならお前も愛人を作れと言った夫を許しません。

しおりを挟む
 ある日、私に離縁したいと言って来た夫─。

「好きな人が出来たんだよ…。俺は彼女と再婚したい。」

「急にそんな事言われても─」

「離縁が嫌なら…お前はお前で愛人を作れ。この先、決して俺に愛して貰おうとは考えるな。」

 そう言って、夫は部屋を出て行った。



 最近、彼の帰りが遅いから気になっては居たが…まさか、そう言う相手が居たとは─。

 でも、余りに身勝手だわ。

 だって…私達の間には、つい最近子供が生まれたばかりじゃない。

 もしかしてあなたは…この子が私のお腹に居る内から、その女とそう言う関係にあったの…?

 それを考えたら…私は、夫の事がとても許せなかった。



 もうこの先、あの人と上手くやって行けるとは思えない。
 
 それに、あの人は言った…。

 お前も、愛人を作れと─。

 ならば…私にも考えがあるわ─。



 その後私は、夫に離縁を受け入れると伝えた。

 ただし、慰謝料と養育費はまとめて払って貰う事を条件に付けて─。

 すると夫は…俺が新しく妻に迎える女は名家の令嬢で金持ちだから、お前に今ここでその金を払っても全く困る事は無い…金なら好きなだけくれてやると言って笑って居た。

 そして私と彼は離縁し…子供は、勿論私が育てる事に─。



 ところが、その後…元夫が妻に迎え様としていた令嬢の家が破産…彼女は借金のカタに娼館に売られてしまった。

 彼は彼女を迎える為に新しい家まで購入し、そのお金を彼女に払って貰おうとして居たが…この事で当てが外れた。

 更に、彼の事業が急に傾き始め…彼は大きな負債を抱える事になってしまった。



 こうなったのは…ある人物が、元夫の事業を支える者達の中でも優秀な人物ばかりを引き抜いた事が原因だった。

 夫は、いつも大事な事は彼らに任せきりだったから…そんな者達が去ってしまえば、こうなるのも当然だった。



 では、何故そんな事になったのか─。

 それは…元夫が敵視して居たある実業家に、私が彼の事業の実情を事細かに教えたからだ。
 
 そして、元夫が汚いやり方で儲け居て居るのを良く思って居なかったその人物は…それを機に、彼を潰す事にしたのだった。



「…だからか、おかしいと思ったんだ。まさか…彼女の家の事業が傾いたのも─!」

「あなたと同じ理由ね。」

 私の元に押しかけて来た元夫に、私は真実を教えた。

「どうしてそんな事をした!」

「あなたが言ったんでしょう?私も、他に相手を作れって。だから私は、あなたよりも将来性のあるしっかりした彼に声をかけたの。その後の事は彼が決めた事よ。因みに、その時は彼とはいい友人だったから…私はあなたみたいに不貞を働いた訳じゃないからね。」

 

 私の言葉に、夫は何も言い返せない様だった。

「でも…今はもう違うわ。あなたの所に居た優秀な人達が頑張ってくれて居るおかげで、あの人の事業はますます拡大し…おかげで、私や子供を養う事が出来るからと、再婚を申し込んでくれたの。私はそれに応え…あの人と家族になるつもりで居るわ。」

「そ、そんな…。」

「あなたもあの女の事は忘れ、早く別の相手を見つければ?でも…借金まみれになったあなたを愛する女など、もう居ないだろうけど。」

 その後、元夫はやって来た借金取りに追われ…逃げる様に私の元を去った。

 きっと今頃は、どこか別の地に逃亡して居るんじゃないかしらね。



 でも、それで良いわ。

 小さかった我が子は、元夫の事などろくに覚えて居ないし…今は再婚予定の彼と、三人で仲良く幸せに暮らして居るから…その生活を邪魔されたくないもの─。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾り呼ばわりされた公爵令嬢の本当の価値は

andante
恋愛
婚約者を奪おうとする令嬢からからお飾り扱いだと侮辱される公爵令嬢。 しかし彼女はお飾りではなく、彼女を評価する者もいた。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

絵姿

金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。 それなのに……。 独自の異世界の緩いお話です。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

【完結】彼の心は姉の物

山葵
恋愛
姉が馬車の事故で亡くなった。 突然の出来事に家族も婚約者も受け入れる事が出来ない。 それでも月日は流れていく。 ただ1人の者を除いて…。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

処理中です...