『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

浮気が発覚してもお前が我慢すればいいだけと開き直る夫に、もう従順な妻で居るのは辞めます。

　夫は、妻の私を何かと見下して居た。

　結婚前はとても優しかった彼は、結婚してすぐにその本性を現したのだ。

　私はそんな彼に逆らう事が出来ず、これまでずっと従順な妻を演じて来た。

　でも…流石にもうこれ以上は無理よ─。


　
　と言うのも…つい最近になり、私の夫が浮気をして居る事が発覚した。

　それについて問い詰める私に…夫は、謝るどころか開き直って見せた。

『確かに俺は浮気をして居るが…お前にはちゃんと金を渡して居るし、不自由な生活を送らせて居る訳じゃないだろう？そもそもこれは浮気など大それたものでなく、あくまで気晴らしの様なもの─。俺が気持ち良く暮らせる様、お前が我慢すればいいだけの話だ。』
　
　そんな事を言い、未だその浮気相手と別れない夫に…私は、もう我慢の限界を迎えて居た。


　
　そんな中…夫が、愛人と共に隣国へ旅行に行くと言い出した。

　そして、旅の支度をしておけと私に命じた。

　夫は私が何も言わないものだから、いつもの様に納得したと思って居る様だが…思い違いも良い所よ。

　あなたなど、もうその旅から帰って来なくていいわ─！



　当日…私は荷物を詰めた鞄を夫に渡し、彼は家を出て行った。

　夫は、予定では一週間後に帰って来る事になって居たが…彼はその日を迎えても帰って来なかった。

　と言うのも…夫は隣国で法を犯したとして捕らえられ、愛人共々牢に入れられてしまったからだ─。

　そしてそうなったのは、夫の荷物に入れておいたある本だった。



　それは、あの国が禁じて居る宗教の教えが書かれた本だった。

　この国で所持して居ても問題ないが、隣国はそれを禁書としており…もしそれを所持し入国したら、酷い罰を受けるのだ。

　更に、あの国で禁じられて居る薬も入れておいたから、夫は違法薬物を持ち込んだ事でも罰せられる事に─。



　その後、二人はこの国に移送された。

　そして私は…犯罪者となった夫に離縁を告げる為、牢に居る彼に面会する事に─。

　私の顔を見た夫は、よくもあんなものを入れてと怒ったが…私には何の事か分からないと言い、離縁する旨を伝えた。

　

　すると夫は、別れる前に俺の釈放金を出せと言って来たが…自分は払うつもりはない、もう暫くそこに入って居ろと言い彼の元を去った。

　私はもう、あなたの言う事を何でも聞く従順な女では無いの。

　これからは、自分の幸せを大事に生きて行くわ─。



　その後…私は、心優しく穏やかな人柄の殿方を恋人に迎えた。

　彼とは再婚を前提に交際して居るが…彼は心通わせる程、私をより大事にしてくれて…そんな彼が夫になったら、私は今度こそ幸せになれるでしょう─。