婚約者と幼馴染に復讐を望む私に力を貸してくれたのは、皆から忌み嫌われる魔術師の子孫でした。

Nao*

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 すると突然、備え付けの小さな机から一冊の古い本が落ちて来た。

 カバーには傷があり、相当読み込まれた物のようだ。

 もしかして、誰かの愛蔵書だったとか…?


 
 気になった私は、その本を手に取ると表紙を見た。



「この文字…これは、この国の旧字体ね。ええと、何と書いてあるのかしら?以前授業で習ったから、少しは読めるはず。くろ、じゅつ…しょ?もしかして、これって─!」

 私は思わずニヤリと笑みを浮かべ、その本をギュッと抱きしめた。



 この本は使えるわ。

 今の私にぴったりの本じゃない。

 恐らくこれは、この国でかつてよく使われていた黒魔術に関する本だ。

 

 でも近代には黒魔術が廃れ、それらに関する書物の多くは処分されたと言うが…こんな所に残って居たとは、私は運が良いわね。

 私は早速ページをめくり、その中身を確認した。



 だがそうしている内に、色々と問題が出て来た。

 本の中身は全て旧字体で…また所々黒く塗り潰されて居て、私では満足に読む事が出来ない。


 
 それでも何とか分かった事は…黒魔術は、今は一定の魔術師にしか使えない。

 それも黒魔術専門か…その子孫で無いと使いこなす事が出来ないと言うような事が、そこには記されて居た。

 更には、黒魔術は相手を不幸にする事が出来るが…その分、後に自身も不幸になってしまうとあった。



 成程…やるからには、それなりの代償を払えと言う事か。
 
 でも不幸と言われてもね…今この時が不幸のどん底なのに、それ以上の不幸など想像できないわ。

 今回の件で私は友達も許婚者も失ない、更には両親からも失望され…おまけに周りの者達からも馬鹿にされ陰口迄叩かれて居るのだ。

 

 そんな状態で、今更何を失うと言うのよ…。

 せいぜい、この命くらいしか価値が─。



 …命?

 そうよ、命があるじゃない!



「黒魔術で悪霊や悪魔を召喚、自分の命と引き換えに復讐と言う望みを叶えて貰えば…!でもそうするには、まずはそれを使える魔術師を探さないといけない─。」


 
 いや、待って…。
 
 確か最近、この学園に─。



 その時、私はその本に一枚の写真が挟まっている事に気付いた。



 これまた古い写真ね。

 二人の人物が写っているようだけど…全体的に色あせてしまっていて、顔の部分は黒いシミまで覆って居て誰なのか判別できない。



 もしかしたら、この本の持ち主かしら?

 私は、その写真を再び本に挟み直した。



 が、その時…突然扉が開く音が聞こえ後ろに人の気配がし、私は驚きつつもすぐに振り返った。

 するとそこには、腰まである髪を無造作にまとめ…前髪まで長く伸ばしているせいで目が殆ど見えない、何だか暗い印象の一人の男子生徒が立って居た。
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