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愛人を家に迎えたい婚約者に別れを告げられた私ですが、大きな力に守られ無事でした。
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ある殿方に望まれ、その婚約者になった私。
しかし、いざ彼と暮らし初めてみれば…彼は私を大事せず、愛人と遊び歩いて居た。
そして、後に彼に言われたが…私の家が名家でお金持ちだからと言う事、今は亡き彼の父親に私と婚約する様うるさく言われ、渋々私を傍に置く事を決めただけらしい。
こんな愛の無い婚約、虚しくて仕方ない…。
でもそんな私にも、この家に来て良かったと思える事が一つあった。
それは、彼の弟君の存在だった。
弟君は体が余り丈夫ではなく、一日の殆どを自室で過ごして居た。
私は、そんな彼の相手をするよう婚約者に命じられ…彼の元を毎日訪れる様に─。
弟君は、優しく穏やかな方で…そんな彼の笑顔を見ると、日々の悩みが一時忘れられた。
そして弟君も…私がする外の話や持ってくる本に興味を示し、私の訪れを楽しみにしてくれて居た。
そんな中、いつしか私は…婚約者が彼だったら良かったと思う様になって居た。
例え体が弱くても…それでも互いに支え合い、共に生きて行く事が出来たら─。
そう思い、弟君を見つめた時だ。
彼は一瞬驚いたような顔になり…そして、私にこう言った。
「君は、とても美しい心の持ち主なんだね。あの子達の姿を、この目で見る事が出来るとは…俺はとても嬉しいよ─。」
そして、その翌日─。
私は婚約者に自室に呼び出され、婚約破棄を告げられる事に─。
そんな彼の隣には愛人が居て、嫌な笑みを浮かべて居た。
「今日からこの家は、俺と彼女の物だ。お前とは婚約破棄するから、もう実家に戻れ!」
「待って下さい!私はともかく、弟君はどうなるのです!?」
「あいつは山奥の診療所にでも押し込めるさ。お前たち邪魔者には、さっさとこの家を出て行って貰わねば─。」
しかしその時、部屋のドアが開き…病に臥せって居るはずの弟君が、颯爽と入って来た。
「出て行くのは俺と彼女じゃない…兄上とその女です!」
「何!?というか、お前…寝て居なくても平気なのか?」
婚約者は、驚いた眼で弟君を見た。
「えぇ。彼女と…彼女の傍に居る精霊のおかげで、俺はもうすっかり元気です。」
「精霊って…お前、まだそんなもの信じて居るのか?精霊など居る訳が─」
「いいえ。兄上が見えないだけで、この俺の目にはちゃんと見えて居ます。そして精霊が見えると言う事は…この家を継ぐ正当な権利があると言う事です。」
実は婚約者の家は、精霊の力を借りここまで繁栄して来た一族だった。
そして当主となる資格のある者は、精霊を見る事が出来て…そして精霊に好かれる者を家に迎え夫婦となる事で、この家を絶やさない様にして来たのだ。
「でも、あなたは精霊に愛された彼女を大事にせず…いつまで経っても、精霊を見る事が出来なかった。そしてその間に、俺は彼女の傍に居る精霊を見る事が出来る様になり…その結果、俺は精霊達からこの家を継ぐ者と認められたのです。」
しかしそれを聞いた婚約者は、精霊など俺は信じない…そこまで言うなら、精霊が居ると言う証拠を俺に示せと言って来た。
「それが出来なきゃ、俺も彼女も納得しないからな!」
そこで私は…そんな彼に近づきこう言った。
「そこまで言うなら、証拠を見せますが…どうなっても知りませんよ?」
するとその瞬間、突然彼の部屋の窓が開き…猛烈な風が、婚約者と愛人を襲った。
更に本棚から勝手に本が飛び、婚約者の顔を直撃し…机にあったインクが浮き上がり、愛人の頭の上から降り注いだ。
それはまるで…見えない何かが、二人に悪戯をして居る様だった。
余りの事に、二人は大声を上げ部屋中を逃げ回った。
「これは何なんだ!?」
「ですから、これがその証拠です。精霊達が、この家からあなた達を追い出そうとして居るのです。そしてあなた達がここから出て行かない限り、それはずっと続きますよ?」
私の言葉に、二人は真っ青な顔になり…慌ててこの家から飛び出して行き…やがて、この家に近づく事は無くなった。
と言うのも…その後この家に忍び込もうとした婚約者は精霊にそれを阻止され、またも酷い目に遭う事になり…それに懲り、この家に戻る事を諦めたからだ。
そのおかげで、私は弟君と安心してこの家で暮らす事が出来る様になった。
そして精霊が見える様になって以降、弟君はすっかり元気な体になられ…近く、私と結婚する事を誓ってくれた。
今になって思えば…私に付いて居た精霊が私の気持ちに気付き、あの男ではなく弟君と一緒になるべきだと思い、その姿を彼に見せてくれたのだろう…。
精霊の加護を受けた者は、幸せな人生を手にする事が出来ると言われて居るから…私達は、この先もずっと仲良く穏やかに暮らして行く事が出来そうだわ─。
しかし、いざ彼と暮らし初めてみれば…彼は私を大事せず、愛人と遊び歩いて居た。
そして、後に彼に言われたが…私の家が名家でお金持ちだからと言う事、今は亡き彼の父親に私と婚約する様うるさく言われ、渋々私を傍に置く事を決めただけらしい。
こんな愛の無い婚約、虚しくて仕方ない…。
でもそんな私にも、この家に来て良かったと思える事が一つあった。
それは、彼の弟君の存在だった。
弟君は体が余り丈夫ではなく、一日の殆どを自室で過ごして居た。
私は、そんな彼の相手をするよう婚約者に命じられ…彼の元を毎日訪れる様に─。
弟君は、優しく穏やかな方で…そんな彼の笑顔を見ると、日々の悩みが一時忘れられた。
そして弟君も…私がする外の話や持ってくる本に興味を示し、私の訪れを楽しみにしてくれて居た。
そんな中、いつしか私は…婚約者が彼だったら良かったと思う様になって居た。
例え体が弱くても…それでも互いに支え合い、共に生きて行く事が出来たら─。
そう思い、弟君を見つめた時だ。
彼は一瞬驚いたような顔になり…そして、私にこう言った。
「君は、とても美しい心の持ち主なんだね。あの子達の姿を、この目で見る事が出来るとは…俺はとても嬉しいよ─。」
そして、その翌日─。
私は婚約者に自室に呼び出され、婚約破棄を告げられる事に─。
そんな彼の隣には愛人が居て、嫌な笑みを浮かべて居た。
「今日からこの家は、俺と彼女の物だ。お前とは婚約破棄するから、もう実家に戻れ!」
「待って下さい!私はともかく、弟君はどうなるのです!?」
「あいつは山奥の診療所にでも押し込めるさ。お前たち邪魔者には、さっさとこの家を出て行って貰わねば─。」
しかしその時、部屋のドアが開き…病に臥せって居るはずの弟君が、颯爽と入って来た。
「出て行くのは俺と彼女じゃない…兄上とその女です!」
「何!?というか、お前…寝て居なくても平気なのか?」
婚約者は、驚いた眼で弟君を見た。
「えぇ。彼女と…彼女の傍に居る精霊のおかげで、俺はもうすっかり元気です。」
「精霊って…お前、まだそんなもの信じて居るのか?精霊など居る訳が─」
「いいえ。兄上が見えないだけで、この俺の目にはちゃんと見えて居ます。そして精霊が見えると言う事は…この家を継ぐ正当な権利があると言う事です。」
実は婚約者の家は、精霊の力を借りここまで繁栄して来た一族だった。
そして当主となる資格のある者は、精霊を見る事が出来て…そして精霊に好かれる者を家に迎え夫婦となる事で、この家を絶やさない様にして来たのだ。
「でも、あなたは精霊に愛された彼女を大事にせず…いつまで経っても、精霊を見る事が出来なかった。そしてその間に、俺は彼女の傍に居る精霊を見る事が出来る様になり…その結果、俺は精霊達からこの家を継ぐ者と認められたのです。」
しかしそれを聞いた婚約者は、精霊など俺は信じない…そこまで言うなら、精霊が居ると言う証拠を俺に示せと言って来た。
「それが出来なきゃ、俺も彼女も納得しないからな!」
そこで私は…そんな彼に近づきこう言った。
「そこまで言うなら、証拠を見せますが…どうなっても知りませんよ?」
するとその瞬間、突然彼の部屋の窓が開き…猛烈な風が、婚約者と愛人を襲った。
更に本棚から勝手に本が飛び、婚約者の顔を直撃し…机にあったインクが浮き上がり、愛人の頭の上から降り注いだ。
それはまるで…見えない何かが、二人に悪戯をして居る様だった。
余りの事に、二人は大声を上げ部屋中を逃げ回った。
「これは何なんだ!?」
「ですから、これがその証拠です。精霊達が、この家からあなた達を追い出そうとして居るのです。そしてあなた達がここから出て行かない限り、それはずっと続きますよ?」
私の言葉に、二人は真っ青な顔になり…慌ててこの家から飛び出して行き…やがて、この家に近づく事は無くなった。
と言うのも…その後この家に忍び込もうとした婚約者は精霊にそれを阻止され、またも酷い目に遭う事になり…それに懲り、この家に戻る事を諦めたからだ。
そのおかげで、私は弟君と安心してこの家で暮らす事が出来る様になった。
そして精霊が見える様になって以降、弟君はすっかり元気な体になられ…近く、私と結婚する事を誓ってくれた。
今になって思えば…私に付いて居た精霊が私の気持ちに気付き、あの男ではなく弟君と一緒になるべきだと思い、その姿を彼に見せてくれたのだろう…。
精霊の加護を受けた者は、幸せな人生を手にする事が出来ると言われて居るから…私達は、この先もずっと仲良く穏やかに暮らして行く事が出来そうだわ─。
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