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義妹と継母に虐められて居た私は、やがて父からも追放を言い渡されてしまいました。
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私の母が病で亡くなると、父は別の女を後妻に迎えた。
するとその女には連れ子が居て、彼女は私の妹となった。
しかしこの二人は亡くなった母の面影を持つ私を嫌い、父に隠れ虐めて来るように─。
だから私はそんな二人の事が大嫌いで、家族だとは決して認めなかった。
でも父はこの女を愛して居て、義妹の事だって私同様に可愛がって居る。
だから、余り波風を立たないようにしないといけないのに─。
そう思って暮らして居たのに…私は、父によって家を追い出される事になってしまった。
「お前は、もうこの家に居る必要はない。一刻も早く出て行くがいい。」
「そんな…!私は、母の思い出が残るこの家にずっと居たいのです。あの二人とも今後は仲良くしますから…ですからどうか─」
「駄目だ。それに使用人達もあの二人の世話で手一杯で、お前の世話が出来ないと言って居る。」
確かに、私は普段から使用人達には放っておかれて…もうずっと、手を掛けては貰えずに居る。
お父様だけでなく、使用人達も私がこの家に居ては困るのね。
皆、私にこの家を出て行って欲しいんだわ─。
「では、私は一体どこへ行けばいいのです?」
「ここに書かれた殿方の家に行くんだ。彼も、お前を待って居る。」
「…え?で、でも、この方は─」
「いいから、ここは大人しく言う事を聞きなさい。」
「は、はい─。」
そして私は、紙に書かれた彼の家を訪ねたのだが…彼は、そんな私を優しく迎え入れてくれた。
どうやら父と彼の間で、私を引き受ける約束がされて居たようだった。
そんな事、私は何も知らなかった。
でも彼も気の毒に…。
父に頼まれ、私を嫌々受け入れて居るんでしょう─。
そう思い私は暮らして居たが…彼は、私に対しいつも優しくしてくれた。
そしてそんな彼に、私はいつしか惹かれるようになって行ったが…でも、彼はあの子の─。
そんな私の気持ちを察したのか、彼はこう言った。
「俺と彼女の事なら気にしないでくれ。彼女のある行為が、その関係を壊したんだ。」
そう言って溜め息交じりに言う彼に、あの子に対しての嫌悪は感じれど…未練は一切感じられなかった─。
それから一ヶ月程して…彼の家での暮らしにも漸く馴染み始めた私の元に、義妹が押しかけて来た。
そしてその突然の訪問に驚く私に、彼女はこう言った。
「どうしてお姉様が、私の婚約者となるはずだった彼の所に居るのよ!?」
「でも、あなたは彼に隠れ浮気をしたせいで嫌われたんじゃ…。そう、彼から聞いたわよ?」
「それはそうだけど…私には復縁の意思があったの!」
すると騒ぎを聞いた彼が駆けつけて来て義妹を私から引き離すと、彼女を鬱陶しそうな目で見つめこう言った。
「その話は断ったじゃないか!こんな所にまで押しかけて来て鬱陶しい。彼女の父上の想いを台無しにするような行為は辞めろ!」
そして彼は義妹の腕を掴むと…暴れる彼女を、無理矢理この家から追い出したのだった─。
「あの…父の想いとは一体?私はお父様や使用人達に疎ましがられ、あなたの元へ送られたのでは…?」
すると彼は、違うと首を振りこんな事を語り始めた─。
ある日、私が継母と義妹に虐められて居る事を知った父は…自分がそんな女を妻に迎えてしまったせいだと、その責任を感じた。
しかしだからと言ってあの二人に罰を与え、更に私への虐めを悪化させてしまっては元も子もない。
そこで私をまともな殿方の元へ送り出し、幸せになって欲しいと父は考えたのだった。
そしてそれは、使用人達も同じだった。
彼らは皆、あの二人にもし私の世話をしたら一生タダ働きだと脅され、どうしても私に関わる事が出来なかったと言う。
しかし、私を想う気持ちは以前と変わらず…この家で私に辛い思いをさせるくらいなら、他の家で幸せになって欲しいと考えたそうだ。
「…私、てっきり皆に嫌われたのかと─。皆、継母と義妹の味方なのかと思ってました。そして…あなたも義妹があんな事をしでかしたから、仕方なく私を代わりに家に迎えたのかと─。」
「そうじゃない。俺は以前から、君の清楚で淑やかな人柄が気に入って居たんだ。それで、君を受け入れる事を決めたんだ。そして彼女の事が落ち着いてから、君に自分の気持ちを伝えようと思って居たんだ。」
「あの子の事が、落ち着いてから…?」
「彼女、今日の午後に新しい婚約者を迎える事になって居るんだ。そしてそうなったら…彼女はこの先、もう自由にあの家から出る事は出来ない。」
「…え?」
「彼女の婚約者となる相手は、その性格に問題があってね。それは、とても束縛が激しいという事だ。そして彼女は、その男から非常に好かれて居てね…。きっと彼から、この先一生離して貰えないだろう。そうなったら…さっきのように急に押しかけて来て、君を責める事も俺に復縁を求める事も出来ない。そして、そんな相手を見つけて来たのは君の父上だ。継母は君の父が、そして義妹は新しい婚約者が監視するから…この先は、もう君の幸せを壊す事は出来ないという事だ─。」
お父様…あなたは、そんな事を考えていらしたのね。
私は、父の想いに涙した。
「そして、君の事は俺が一生かけて幸せにすると、君の父上に約束してあるんだ。俺は君に惹かれ、望んで君をここに迎えた。そして共に暮らす内に…益々君に惹かれて行った。俺は君を愛して居る。どうか俺の婚約者となり…この先も、ずっと俺の傍に居てくれないだろうか?」
そう言って、彼は私に手を伸ばした。
私は、彼のその手を見つめ…そして、こんな私で良ければとその手を握り返すのだった─。
その後、義妹はその男と婚約し…義妹は彼の許可が無ければ、家から一歩も出られない状況になり…外へ出たとしても、いつも彼が傍に居て監視されて居る。
そしてそれは、継母も同じだった。
継母には父が傍に付き…その行動を、いつも厳しい目で見て居る。
更に二人には、使用人達の厳しい監視まで付いて居た。
彼らは皆…私の世話が出来ない分、この先は存分にお二人の世話をして差し上げると二人に宣言し…継母と義妹を恐怖に震え上がらせたそうだ。
そして二人は、今になって私を虐めた事を激しく後悔して居るそうだが…もう、何もかもが遅いのだった。
父や使用人達、彼の本当の想いを知り、私は自分が大きな勘違いをして居る事に気付いた。
私は、彼らに嫌われて居たのではなく…むしろ、とても愛されて居たのだ。
そんな私に、この先出来る事は…皆の愛に応え、幸せに生きて行く事だと思って居るわ!
するとその女には連れ子が居て、彼女は私の妹となった。
しかしこの二人は亡くなった母の面影を持つ私を嫌い、父に隠れ虐めて来るように─。
だから私はそんな二人の事が大嫌いで、家族だとは決して認めなかった。
でも父はこの女を愛して居て、義妹の事だって私同様に可愛がって居る。
だから、余り波風を立たないようにしないといけないのに─。
そう思って暮らして居たのに…私は、父によって家を追い出される事になってしまった。
「お前は、もうこの家に居る必要はない。一刻も早く出て行くがいい。」
「そんな…!私は、母の思い出が残るこの家にずっと居たいのです。あの二人とも今後は仲良くしますから…ですからどうか─」
「駄目だ。それに使用人達もあの二人の世話で手一杯で、お前の世話が出来ないと言って居る。」
確かに、私は普段から使用人達には放っておかれて…もうずっと、手を掛けては貰えずに居る。
お父様だけでなく、使用人達も私がこの家に居ては困るのね。
皆、私にこの家を出て行って欲しいんだわ─。
「では、私は一体どこへ行けばいいのです?」
「ここに書かれた殿方の家に行くんだ。彼も、お前を待って居る。」
「…え?で、でも、この方は─」
「いいから、ここは大人しく言う事を聞きなさい。」
「は、はい─。」
そして私は、紙に書かれた彼の家を訪ねたのだが…彼は、そんな私を優しく迎え入れてくれた。
どうやら父と彼の間で、私を引き受ける約束がされて居たようだった。
そんな事、私は何も知らなかった。
でも彼も気の毒に…。
父に頼まれ、私を嫌々受け入れて居るんでしょう─。
そう思い私は暮らして居たが…彼は、私に対しいつも優しくしてくれた。
そしてそんな彼に、私はいつしか惹かれるようになって行ったが…でも、彼はあの子の─。
そんな私の気持ちを察したのか、彼はこう言った。
「俺と彼女の事なら気にしないでくれ。彼女のある行為が、その関係を壊したんだ。」
そう言って溜め息交じりに言う彼に、あの子に対しての嫌悪は感じれど…未練は一切感じられなかった─。
それから一ヶ月程して…彼の家での暮らしにも漸く馴染み始めた私の元に、義妹が押しかけて来た。
そしてその突然の訪問に驚く私に、彼女はこう言った。
「どうしてお姉様が、私の婚約者となるはずだった彼の所に居るのよ!?」
「でも、あなたは彼に隠れ浮気をしたせいで嫌われたんじゃ…。そう、彼から聞いたわよ?」
「それはそうだけど…私には復縁の意思があったの!」
すると騒ぎを聞いた彼が駆けつけて来て義妹を私から引き離すと、彼女を鬱陶しそうな目で見つめこう言った。
「その話は断ったじゃないか!こんな所にまで押しかけて来て鬱陶しい。彼女の父上の想いを台無しにするような行為は辞めろ!」
そして彼は義妹の腕を掴むと…暴れる彼女を、無理矢理この家から追い出したのだった─。
「あの…父の想いとは一体?私はお父様や使用人達に疎ましがられ、あなたの元へ送られたのでは…?」
すると彼は、違うと首を振りこんな事を語り始めた─。
ある日、私が継母と義妹に虐められて居る事を知った父は…自分がそんな女を妻に迎えてしまったせいだと、その責任を感じた。
しかしだからと言ってあの二人に罰を与え、更に私への虐めを悪化させてしまっては元も子もない。
そこで私をまともな殿方の元へ送り出し、幸せになって欲しいと父は考えたのだった。
そしてそれは、使用人達も同じだった。
彼らは皆、あの二人にもし私の世話をしたら一生タダ働きだと脅され、どうしても私に関わる事が出来なかったと言う。
しかし、私を想う気持ちは以前と変わらず…この家で私に辛い思いをさせるくらいなら、他の家で幸せになって欲しいと考えたそうだ。
「…私、てっきり皆に嫌われたのかと─。皆、継母と義妹の味方なのかと思ってました。そして…あなたも義妹があんな事をしでかしたから、仕方なく私を代わりに家に迎えたのかと─。」
「そうじゃない。俺は以前から、君の清楚で淑やかな人柄が気に入って居たんだ。それで、君を受け入れる事を決めたんだ。そして彼女の事が落ち着いてから、君に自分の気持ちを伝えようと思って居たんだ。」
「あの子の事が、落ち着いてから…?」
「彼女、今日の午後に新しい婚約者を迎える事になって居るんだ。そしてそうなったら…彼女はこの先、もう自由にあの家から出る事は出来ない。」
「…え?」
「彼女の婚約者となる相手は、その性格に問題があってね。それは、とても束縛が激しいという事だ。そして彼女は、その男から非常に好かれて居てね…。きっと彼から、この先一生離して貰えないだろう。そうなったら…さっきのように急に押しかけて来て、君を責める事も俺に復縁を求める事も出来ない。そして、そんな相手を見つけて来たのは君の父上だ。継母は君の父が、そして義妹は新しい婚約者が監視するから…この先は、もう君の幸せを壊す事は出来ないという事だ─。」
お父様…あなたは、そんな事を考えていらしたのね。
私は、父の想いに涙した。
「そして、君の事は俺が一生かけて幸せにすると、君の父上に約束してあるんだ。俺は君に惹かれ、望んで君をここに迎えた。そして共に暮らす内に…益々君に惹かれて行った。俺は君を愛して居る。どうか俺の婚約者となり…この先も、ずっと俺の傍に居てくれないだろうか?」
そう言って、彼は私に手を伸ばした。
私は、彼のその手を見つめ…そして、こんな私で良ければとその手を握り返すのだった─。
その後、義妹はその男と婚約し…義妹は彼の許可が無ければ、家から一歩も出られない状況になり…外へ出たとしても、いつも彼が傍に居て監視されて居る。
そしてそれは、継母も同じだった。
継母には父が傍に付き…その行動を、いつも厳しい目で見て居る。
更に二人には、使用人達の厳しい監視まで付いて居た。
彼らは皆…私の世話が出来ない分、この先は存分にお二人の世話をして差し上げると二人に宣言し…継母と義妹を恐怖に震え上がらせたそうだ。
そして二人は、今になって私を虐めた事を激しく後悔して居るそうだが…もう、何もかもが遅いのだった。
父や使用人達、彼の本当の想いを知り、私は自分が大きな勘違いをして居る事に気付いた。
私は、彼らに嫌われて居たのではなく…むしろ、とても愛されて居たのだ。
そんな私に、この先出来る事は…皆の愛に応え、幸せに生きて行く事だと思って居るわ!
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