【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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色恋に溺れた聖女の妹と私を裏切った婚約者には、やがて不幸が降りかかるのでした。

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 私の婚約者は剣の腕を見込まれ、聖女である私の妹の護衛を務める事に─。

 彼女が各地を回り祈りを捧げる時や、神殿で行われる神事の時…彼はいつも妹に寄り添って居た。

 私はそんな婚約者を誇らしく思い、妹が悪しき者から狙われる心配も無くなり安堵して居た。



 しかし…いつしか二人の距離は、聖女とその護衛と言うには余りに親密なものになって行った。

 妹の傍に居る事が俺の役目だと、彼は神殿に入り浸る様に─。

 少し前までは…ちゃんと私との時間も作って居てくれたのに

 私は、そんな彼の態度に不安を覚えた。



 そんな中…聖女である妹の力が、何故か急激に弱まって居るという噂が立った。

 そのせいで、この地を守る結界が消えかけ…皆は一様に不安がった。

 勿論、私もその中の一人で…姉として、彼女の様子を見に行く事に─。

 それにそうすれば、彼と会う事も出来ると思ったからだ─。



 そして、神殿の中にある妹の部屋を訪れてみれば…そこには、彼女を抱き締める私の婚約者の姿があった。

 それを見た私は…咄嗟に物陰に隠れ、その様子を伺った。

 すると妹は…何やら深刻そうな顔でお腹に手を当て、こう言った。



「聖女が務めを果たさず色恋に走り、子を成したのはやり駄目だったのね。そのせいで、私の力は─。」

「そんな事言うな…この子は、俺と君の愛の結晶じゃないか。こうなったら…君は聖女の役目など放り出し、俺と共に逃げてくれ!そして、どこか知らない土地でその子を育てて行こうじゃないか!」

「でも…あなたにはお姉様が─!」

「あいつの事はもういいんだ。俺の心は、今やすっかり君の虜だ。俺は君の護衛役ではなく…君の夫となり、そのお腹の子の父親になりたいんだよ!」

 そんな彼の言葉に、妹は嬉し涙を流した。



 それを見た私は…漸く、二人が私を裏切って居た事に気付いたのだった。

 聖女である妹と浮気した挙句に身籠らせ…更には私を捨て、捨て駆け落ちまでしようなどと…そんなの、絶対に許さない!

 そしてそんな裏切りをして居れば、妹の聖女としての力が無くなるのも納得よ。

 あの子のして居る事は、まさに悪女そのもの…もう、聖女を名乗るの資格は無いわ─。



 すると二人は…私が見て居るとも知らず、窓から逃げ出そうとした。

 その瞬間、私は大声を出し…聖女の護衛が彼女を連れ去ろうとして居ると、敢えて嘘を叫んだ。

 それにより、近くに居た神官達が駆けつけて…二人は、窓を乗り越えて居た所を確保された。

 そして私の証言により…彼は聖女を攫おうとした罪人として、牢に入れられる事に─。

 そんな彼は…俺はそんな悪人ではない、彼女との愛を貫こうとしただけだ…私の証言は嘘だと必死に訴えたそうだが…いずれにせよ、聖女を身籠らせた事は事実であった為、彼の言い分をまともに聞く者など居なかった─。



 そして妹はと言うと…彼女があの男の子供を身籠って居ると知った神官長は彼女を神殿に戻す事はせず、聖女の座を剥奪し追放する事を決めた。

 どのみち彼女の聖女としての力は殆ど失われて居たし、姉の婚約者の子を身籠る様な悪女はもう聖女失格という事だろうが…身重のまま放り出される事になるなど、妹は全く思って居なかったらしい。

 

 するとそんな彼女は、私に謝罪し実家に戻って来ようとしたが…私も両親もそれを許さず、その罪人の子と二人で生きて行けと言い縁を切った。

 そして妹は、少し膨らんだお腹を抱えたまま行方知れずに…噂では、そのまま行き倒れになっったらしい─。


  
 一方、私はと言うと…今回の騒動の一番の被害者として周りに憐れまれ…そのおかげか、次の聖女様に特別に加護を授けて貰える事に─。

 すると聖女様は…私はもうすぐ運命の相手と出会う事になり、彼と結婚し幸せな家庭を築く事が出来ると仰って下さった。

 そしてその言葉通り…私はある一人の殿方と出会い、すぐに意気投合─。

 その後婚約が決まり…順調な交際を期間を経て、私達は来年には結婚する事になった。
 
 浮気に妊娠に駆け落ち未遂と、ここまで散々不幸な目に遭ったけれど…私の幸せな人生は、きっとここから始まるわ─。
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