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婚約者の私を城に置き去り運命の相手を迎えに行った王子ですが、それが破滅への道でした。
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ある日、婚約者である王子から衝撃的な言葉を聞かされた私。
「俺は運命の相手を見つけた、勿論お前ではない。この前馬車である村を通りかかったら、そこに美しい娘が居てな…彼女を見た瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃が体に走った。」
「それで…王子はどうしたいのです?」
「俺は、何としても彼女を手に入れる。その為に今から彼女を迎えに行ってくるから、お前は留守を預かって居ろ。王達が隣国に呼ばれた今が、絶好のチャンスだな!」
そして王子は、愛馬に跨ると意気揚々と駆けて行った。
私は王子のお父様…現王が選んだ娘で、王子自身は私を好いては居なかった。
でも、こんな風に置いて行かれる形になるとは…。
その娘とやらを連れ帰ったら、王子…あなたはその後、私を一体どうしようと言うの?
きっと婚約破棄を突きつけあっさり捨てるか、その女付きの使用人にでもするとかよね?
そんなの、どっちもごめんだわ!
私はこれまでの王子の言動から、すぐにこれらの事が予想できた。
だが…今日こんな形で城を出て行って困るのは王子、あなたの方なのよね。
あなたは早くその娘を迎えに行きたい一心で、大事な予定が頭から抜けてしまったようね。
私はもはや豆粒のように小さくなってしまった王子の背中を見て、一つ溜息をつくのだった。
「…あの、私のような田舎娘が本当に王子のお相手で宜しいのです?」
「いいに決まってる!俺の婚約者も田舎者だが、お前とは似ても似つかん地味顔だ。俺にふさわしいのは美人、顔が美しければ美しい程いいんだ。なのに父上は、どうしてあんな女を…。俺は早くお前を城に連れ帰り、あいつを追い出すぞ。」
そう言って、王子は娘に得意げに笑って見せた。
ところが、そんな王子の顔から次第に笑みが消えて行った。
でもそれも仕方ないだろう、王子はさっきからいつまで経っても城に辿り着けないで居るのだから─。
「…王子、早くお城に連れてって下さいな。私に良い暮らしをさせてくれるんでしょう?」
「勿論だ!俺も早く君を城に案内したいんだが…もしかしたら、気が急いて道を間違えたかも知れん。」
王子は馬から降りると、当たりをキョロキョロと見まわした。
「おかしい…確かにここに城があったはずだ!どう言う事だ、城が跡形もなく消えてしまうとは?…俺の目がおかしくなったのか?」
「お城に行けない何て、今更困るわ!」
そして遂に王子と娘は、真っ青な顔になりその場から動けなくなってしまった。
そろそろ頃合いかしらね…。
私は、覗き込んで居た魔法石の水晶玉に映る王子に向かって声をかけた。
「王子、城が消えたのは私の魔法によるものです。私の魔力でしたら、この程度の事は簡単にできます。」
「お前…!?一体どう言う事だ!」
「このお城は以前から、土地の地盤が沈下し続けて居た。それで、近く私の移動魔法で城を別の場所の移す予定でしたでしょう?それが、ちょうど今日でしたんですけど…王子ったら、それをお忘れになり城を飛び出して行ってしまうから…。」
「…そうだった。おい、だったら今すぐ俺と彼女を移動した城へ転移しろ!」
「そうよ、私はあなたと違い王子に望まれた娘!さっさと招待してよね!?」
「それはできないわ。悪女は城に入れられないもの。」
「あ、悪女だと…?」
「彼女は、最近隣国から追放になり家に返された悪女です。ろくに相手の事も調べず顔だけで選ぶなんて…そんな女を選び私を捨てたあなたに、王は大変お怒りです。あなたはもう、戻って来なくていいそうです。」
「ふざけるな、俺が居なくなったら城は─」
「城は、あなたの弟君の第二王子に任せるそうです。そして私は、彼の婚約者になります。王は私に大変感謝してますよ?あなたのような顔だけの無能王子を追放し、城を安全な場所に移したんですから。」
「そんな…頼む、俺を城に入れてくれよ─!」
だがそんな王子の叫びは、夕暮れの空に空しく吸い込まれて行くだけだった─.
その後…王子は運命の相手と言い切った娘にあっさり振られ意気消沈する中、自力で移動した城に何とか辿り着いたものの門番に追い返されると、そのまま行方知れずとなってしまった。
後に国の民が王子らしい男を見たと言う話も出たが、何しろ全身薄汚れボロボロの布切れを纏って居たものだから、きっと見間違いだろうと言う事で話は終わってしまった。
そしてそんな話も聞こえて来なくなる頃には、私は弟君の第二王子と仲を一層深めており…彼との結婚式を間近に控え、より未来への希望に胸を膨らませるのだった─。
「俺は運命の相手を見つけた、勿論お前ではない。この前馬車である村を通りかかったら、そこに美しい娘が居てな…彼女を見た瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃が体に走った。」
「それで…王子はどうしたいのです?」
「俺は、何としても彼女を手に入れる。その為に今から彼女を迎えに行ってくるから、お前は留守を預かって居ろ。王達が隣国に呼ばれた今が、絶好のチャンスだな!」
そして王子は、愛馬に跨ると意気揚々と駆けて行った。
私は王子のお父様…現王が選んだ娘で、王子自身は私を好いては居なかった。
でも、こんな風に置いて行かれる形になるとは…。
その娘とやらを連れ帰ったら、王子…あなたはその後、私を一体どうしようと言うの?
きっと婚約破棄を突きつけあっさり捨てるか、その女付きの使用人にでもするとかよね?
そんなの、どっちもごめんだわ!
私はこれまでの王子の言動から、すぐにこれらの事が予想できた。
だが…今日こんな形で城を出て行って困るのは王子、あなたの方なのよね。
あなたは早くその娘を迎えに行きたい一心で、大事な予定が頭から抜けてしまったようね。
私はもはや豆粒のように小さくなってしまった王子の背中を見て、一つ溜息をつくのだった。
「…あの、私のような田舎娘が本当に王子のお相手で宜しいのです?」
「いいに決まってる!俺の婚約者も田舎者だが、お前とは似ても似つかん地味顔だ。俺にふさわしいのは美人、顔が美しければ美しい程いいんだ。なのに父上は、どうしてあんな女を…。俺は早くお前を城に連れ帰り、あいつを追い出すぞ。」
そう言って、王子は娘に得意げに笑って見せた。
ところが、そんな王子の顔から次第に笑みが消えて行った。
でもそれも仕方ないだろう、王子はさっきからいつまで経っても城に辿り着けないで居るのだから─。
「…王子、早くお城に連れてって下さいな。私に良い暮らしをさせてくれるんでしょう?」
「勿論だ!俺も早く君を城に案内したいんだが…もしかしたら、気が急いて道を間違えたかも知れん。」
王子は馬から降りると、当たりをキョロキョロと見まわした。
「おかしい…確かにここに城があったはずだ!どう言う事だ、城が跡形もなく消えてしまうとは?…俺の目がおかしくなったのか?」
「お城に行けない何て、今更困るわ!」
そして遂に王子と娘は、真っ青な顔になりその場から動けなくなってしまった。
そろそろ頃合いかしらね…。
私は、覗き込んで居た魔法石の水晶玉に映る王子に向かって声をかけた。
「王子、城が消えたのは私の魔法によるものです。私の魔力でしたら、この程度の事は簡単にできます。」
「お前…!?一体どう言う事だ!」
「このお城は以前から、土地の地盤が沈下し続けて居た。それで、近く私の移動魔法で城を別の場所の移す予定でしたでしょう?それが、ちょうど今日でしたんですけど…王子ったら、それをお忘れになり城を飛び出して行ってしまうから…。」
「…そうだった。おい、だったら今すぐ俺と彼女を移動した城へ転移しろ!」
「そうよ、私はあなたと違い王子に望まれた娘!さっさと招待してよね!?」
「それはできないわ。悪女は城に入れられないもの。」
「あ、悪女だと…?」
「彼女は、最近隣国から追放になり家に返された悪女です。ろくに相手の事も調べず顔だけで選ぶなんて…そんな女を選び私を捨てたあなたに、王は大変お怒りです。あなたはもう、戻って来なくていいそうです。」
「ふざけるな、俺が居なくなったら城は─」
「城は、あなたの弟君の第二王子に任せるそうです。そして私は、彼の婚約者になります。王は私に大変感謝してますよ?あなたのような顔だけの無能王子を追放し、城を安全な場所に移したんですから。」
「そんな…頼む、俺を城に入れてくれよ─!」
だがそんな王子の叫びは、夕暮れの空に空しく吸い込まれて行くだけだった─.
その後…王子は運命の相手と言い切った娘にあっさり振られ意気消沈する中、自力で移動した城に何とか辿り着いたものの門番に追い返されると、そのまま行方知れずとなってしまった。
後に国の民が王子らしい男を見たと言う話も出たが、何しろ全身薄汚れボロボロの布切れを纏って居たものだから、きっと見間違いだろうと言う事で話は終わってしまった。
そしてそんな話も聞こえて来なくなる頃には、私は弟君の第二王子と仲を一層深めており…彼との結婚式を間近に控え、より未来への希望に胸を膨らませるのだった─。
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