149 / 188
領主である夫は力を失った私を切り捨てると、美しい聖女を後妻に迎える事を決めました。
しおりを挟む
平民の私が領主を務める彼の妻になれたのは、ある不思議な力があった為だ。
それは代々領主様が守る泉に祈りを捧げると、結界が生まれこの地を包み…それにより、ここに住まう民を不幸から守る事が出来ると言うものだった。
その為、この地は他の地に比べると平和で大いに繁栄して居た。
だが少し前から、私はかつてのように祈りを捧げても結界を生む事が出来なくなってしまった。
するとそれを見た夫は、私を酷く責めて来た。
お前のその力を認め、平民でありながら俺の妻にしてやったと言うのに何たる役立たずかと、時には手まで上げて来た。
そしてその度に平謝りする私だったが…そんなある日、夫が一人の美しい女を家に連れて来た。
彼女は、この地の神殿に迎える事にした聖女だと言う。
彼女は今まで他国で聖女をやって居たが、もっと大勢の人の役に立ちたいと巡礼の旅に出て…最近この地の結界が機能して居ないと言う噂を知り、ここまでやって来たらしい。
そしてそれを知った夫は、是非彼女に会いたいと願い…そして実際に面会する機会を得たが、そこで一目で彼女を気に入り、この地の神殿に招く事を決めたと言う。
すると説明を終えた夫は、お前など最早力を失ったただの平民に過ぎないと言い…妻の座を退き、この家から出て行けと私に命じた。
そして私が消えても、聖女である彼女が居る…彼女を後妻として迎えるからから何も困る事は無いと断言した。
また聖女である彼女も、私に代わりこの地を守る役目も…そして新妻として独り身になる夫の身も心も癒してあげるのだと、勝ち誇った笑みを浮かべた。
二人にそこまで言われ…私は納得いかない所もあったが、この地の事を想い言われた通り彼女にその役目を任せこの家を出て行く事にした。
今のこんな状態の私より、現役聖女の彼女に任せた方がこの地の為になるわよね─。
こうして意を決し家を出る私だったが…その時、丁度家にやって来た人物がそれを止めた。
そしてその人は私の手を取り、家に戻るよう言ってくれたのだ。
私はその人物の訪れに驚きながらも、言われるまま静かに家に入って行ったが…部屋の中からは、夫と聖女が楽しそうに話す声が聞こえて来た。
夫は彼女の容姿を褒め称え…そして、彼女の今後に大いに期待をして居るようだ。
そして夫の話では、彼に求愛をして来たのはその聖女からのようで…夫は美しい彼女の誘惑に簡単に心奪われ、地味で役立たずになった私が邪魔になったなどと言って居た。
するとその話を私の隣で聞いて居た人物は、我慢ならないと言った様子で部屋のドアを開け二人の元へ突入した。
そしてそれに続く私に、夫は激しく動揺…聖女は激怒した。
私はもうこの家から追い出された身だから、これは不法侵入だ…憲兵を呼び捕まえて貰うと彼女は叫んだが…その言葉を遮ったのは、私をこの家に再び戻したその人物だった。
そしてその正体は、事業の為に他国を回って居た夫の兄だった。
彼は怒りが収まらない聖女に対し、捕まるのはお前の方だと言い…その言葉に驚く夫や私に、その理由を説明するのだった。
実はその女は、聖女としての力は全く無いとの事で…それを偽った事で前居た国を追い出されて居たのだ。
本人は巡礼旅に出たと言って居たが…ようは追放を受けた身だったと言う訳だ。
そして路頭に迷う事になった彼女は、遠く離れたこの地へと辿り着いた。
そこで、この地の領主が管理する泉に無断で入り…何とそこで体を洗い、これまでの汚れを落とす行為に及んだのだ。
そのせいで泉に眠るこの地の守護神が大層お怒りになり…私の祈りが中々通じなくなり、結界も生まれなくなったと言う事らしい。
実はこう言う事は、過去にもあったらしく…その時は何も知らない他の地の者が無断で泉にゴミを不法投棄し、守護神様の怒りが収まるまでに時間を要したと言う。
そしてその事は、領主となる上ではしっかり頭に入れておかねばならない事だったのだが…夫は自身の野心の為に兄である彼を家から追い出し、その座を得ただけで…そう言う心得や知識を身に付けては居なかったらしい。
彼はこの地の事を偶然噂で知ると、領主である弟の力量に呆れ…そして彼の妻となった私の身を案じ、この地に戻る事を決意してくれたのだった。
そしてこうなったからには、今後領主は自分が務める…お前はその偽聖女と共にすぐにでもこの地を出て行け、そうすれば守護神様の怒りも早く収まると、夫達に命じるのだった。
すると二人はそれに対し不満を漏らし、彼に歯向かう姿勢を見せたが…そこで遂に私の怒りが爆発した。
私は二人に対し、あなた達は自分の事ばかりで、この地や領民の事など何も考えてない…そんな者にこの地を守る領主や聖女は務まらない─。
この地の事はまた私が守って見せる…今なら頼りになる新しい領主様も居るから何の不安もない、これ以上守護神様の怒りを受ける前に身の引き際を考えろと二人に訴えかけるのだった。
結局、二人はこの事態の真相を知らされ集まった領民達の協力もあり、この地から無事追放される事に─。
するとその後、私が泉に再び祈りを捧げると…新しい結界が生まれ、この地は以前の平和な状態に戻って行った。
その為、私は引き続きこの地を守る役目を務める事となり…そしてそんな私を、新しく領主となった元夫の兄である彼が、妻として迎えてくれる事に─。
彼はとても賢く、優しく穏やかな人で…また私は彼に救われた恩もある為、彼の良き妻として彼をこの先支えて行こうと改めて心に誓った─。
それは代々領主様が守る泉に祈りを捧げると、結界が生まれこの地を包み…それにより、ここに住まう民を不幸から守る事が出来ると言うものだった。
その為、この地は他の地に比べると平和で大いに繁栄して居た。
だが少し前から、私はかつてのように祈りを捧げても結界を生む事が出来なくなってしまった。
するとそれを見た夫は、私を酷く責めて来た。
お前のその力を認め、平民でありながら俺の妻にしてやったと言うのに何たる役立たずかと、時には手まで上げて来た。
そしてその度に平謝りする私だったが…そんなある日、夫が一人の美しい女を家に連れて来た。
彼女は、この地の神殿に迎える事にした聖女だと言う。
彼女は今まで他国で聖女をやって居たが、もっと大勢の人の役に立ちたいと巡礼の旅に出て…最近この地の結界が機能して居ないと言う噂を知り、ここまでやって来たらしい。
そしてそれを知った夫は、是非彼女に会いたいと願い…そして実際に面会する機会を得たが、そこで一目で彼女を気に入り、この地の神殿に招く事を決めたと言う。
すると説明を終えた夫は、お前など最早力を失ったただの平民に過ぎないと言い…妻の座を退き、この家から出て行けと私に命じた。
そして私が消えても、聖女である彼女が居る…彼女を後妻として迎えるからから何も困る事は無いと断言した。
また聖女である彼女も、私に代わりこの地を守る役目も…そして新妻として独り身になる夫の身も心も癒してあげるのだと、勝ち誇った笑みを浮かべた。
二人にそこまで言われ…私は納得いかない所もあったが、この地の事を想い言われた通り彼女にその役目を任せこの家を出て行く事にした。
今のこんな状態の私より、現役聖女の彼女に任せた方がこの地の為になるわよね─。
こうして意を決し家を出る私だったが…その時、丁度家にやって来た人物がそれを止めた。
そしてその人は私の手を取り、家に戻るよう言ってくれたのだ。
私はその人物の訪れに驚きながらも、言われるまま静かに家に入って行ったが…部屋の中からは、夫と聖女が楽しそうに話す声が聞こえて来た。
夫は彼女の容姿を褒め称え…そして、彼女の今後に大いに期待をして居るようだ。
そして夫の話では、彼に求愛をして来たのはその聖女からのようで…夫は美しい彼女の誘惑に簡単に心奪われ、地味で役立たずになった私が邪魔になったなどと言って居た。
するとその話を私の隣で聞いて居た人物は、我慢ならないと言った様子で部屋のドアを開け二人の元へ突入した。
そしてそれに続く私に、夫は激しく動揺…聖女は激怒した。
私はもうこの家から追い出された身だから、これは不法侵入だ…憲兵を呼び捕まえて貰うと彼女は叫んだが…その言葉を遮ったのは、私をこの家に再び戻したその人物だった。
そしてその正体は、事業の為に他国を回って居た夫の兄だった。
彼は怒りが収まらない聖女に対し、捕まるのはお前の方だと言い…その言葉に驚く夫や私に、その理由を説明するのだった。
実はその女は、聖女としての力は全く無いとの事で…それを偽った事で前居た国を追い出されて居たのだ。
本人は巡礼旅に出たと言って居たが…ようは追放を受けた身だったと言う訳だ。
そして路頭に迷う事になった彼女は、遠く離れたこの地へと辿り着いた。
そこで、この地の領主が管理する泉に無断で入り…何とそこで体を洗い、これまでの汚れを落とす行為に及んだのだ。
そのせいで泉に眠るこの地の守護神が大層お怒りになり…私の祈りが中々通じなくなり、結界も生まれなくなったと言う事らしい。
実はこう言う事は、過去にもあったらしく…その時は何も知らない他の地の者が無断で泉にゴミを不法投棄し、守護神様の怒りが収まるまでに時間を要したと言う。
そしてその事は、領主となる上ではしっかり頭に入れておかねばならない事だったのだが…夫は自身の野心の為に兄である彼を家から追い出し、その座を得ただけで…そう言う心得や知識を身に付けては居なかったらしい。
彼はこの地の事を偶然噂で知ると、領主である弟の力量に呆れ…そして彼の妻となった私の身を案じ、この地に戻る事を決意してくれたのだった。
そしてこうなったからには、今後領主は自分が務める…お前はその偽聖女と共にすぐにでもこの地を出て行け、そうすれば守護神様の怒りも早く収まると、夫達に命じるのだった。
すると二人はそれに対し不満を漏らし、彼に歯向かう姿勢を見せたが…そこで遂に私の怒りが爆発した。
私は二人に対し、あなた達は自分の事ばかりで、この地や領民の事など何も考えてない…そんな者にこの地を守る領主や聖女は務まらない─。
この地の事はまた私が守って見せる…今なら頼りになる新しい領主様も居るから何の不安もない、これ以上守護神様の怒りを受ける前に身の引き際を考えろと二人に訴えかけるのだった。
結局、二人はこの事態の真相を知らされ集まった領民達の協力もあり、この地から無事追放される事に─。
するとその後、私が泉に再び祈りを捧げると…新しい結界が生まれ、この地は以前の平和な状態に戻って行った。
その為、私は引き続きこの地を守る役目を務める事となり…そしてそんな私を、新しく領主となった元夫の兄である彼が、妻として迎えてくれる事に─。
彼はとても賢く、優しく穏やかな人で…また私は彼に救われた恩もある為、彼の良き妻として彼をこの先支えて行こうと改めて心に誓った─。
83
お気に入りに追加
915
あなたにおすすめの小説
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
婚約破棄と言いますが、好意が無いことを横においても、婚約できるような関係ではないのですが?
迷い人
恋愛
婚約破棄を宣言した次期公爵スタンリー・グルーバーは、恥をかいて引きこもり、当主候補から抹消された。
私、悪くありませんよね?
バカ二人のおかげで優秀な婿と結婚できるお話
下菊みこと
恋愛
バカ二人が自滅するだけ。ゴミを一気に処分できてスッキリするお話。
ルルシアは義妹と自分の婚約者が火遊びをして、子供が出来たと知る。ルルシアは二人の勘違いを正しつつも、二人のお望み通り婚約者のトレードはしてあげる。結果、本来より良い婿を手に入れることになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる