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私が聖女の務めに励む間、隠れて浮気ばかりして居た裏切者の婚約者には罰を与えますね…。

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 この地の守護神様の気が乱れているという事で、聖女である私は神殿に籠る事になった。

 その間、婚約者である彼には会えなくなってしまう。

 しかし、彼も私を応援してくれているから頑張らねば─。

 そう、思って居たのに…その間に、婚約者は私を裏切って居た─。


 
 それを知ったのは、神殿で守護神様と対話をして居る最中だ。

 守護神様がこうなったのは…何と、この地の次期領主となる、私の婚約者が原因だったのだ。

『あの男は、私が守る泉のほとりで、汚らわしい行為を繰り返していた。それを映した泉の水が穢れ…私の神気にまで影響が出てしまったのだ─。』



 そして守護神様は、その泉に映った物を私にも見せて下さった。

 そこには…彼と、彼の家の使用人の娘が、泉のほとりで抱き合う姿が映し出されて居た。

 驚く私に、守護神様はこれだけではないと…新たな映像を見せた。

 それは、彼と彼の幼馴染が口づけする姿…そして次は、彼とこの地で一番美しい令嬢が行為に及んでいる姿だった。



「あの人…ずっと前からこんな事を!?」

『そうだ。そしてこれは、お前が神殿に籠ってからは毎日の様に行われて居る。』

「だから私がどれだけ祈っても、あなたは怒りを鎮めて下さらなかったのですね…。」

『神の領域を穢し、聖女のお前を裏切る男など…次期領主にふさわしくない。』

「と、言う事は…もう、私の守りも要りませんね─。」



 その翌日─。

 婚約者が、青い顔で神殿にやって来た。

 見れば、彼はあちこち怪我をして居て…顔色も悪かった。



「昨日から、俺は死にかけてばかりだ!それに…俺の知り合いの女達が、皆病気になって…。何だか不幸な事ばかり起きるから、神官長に相談したんだ。すると、俺に付けられた加護が外されて居ると言うではないか!俺に加護を付けたのはお前だ…。だから、外す事が出来るのもお前しか居ないんだ!」

「…あなたの様な浮気者に、加護を付ける必要はありません。それに…病になった女達は皆、あなたの浮気相手でしょう?神域を穢した者達に、罰が当たったまでの事よ。」

「お、お前…気づいて─!?加護が無ければ、この地の領主にはなれないんだ!このままじゃ、俺は次期領主の資格を失い…弟にその座を譲らなければいけなくなる!」

「是非そうして下さい。というか…守護神様がそうして欲しいと仰ったので、あなたの弟君を神殿にお呼びしてるんです。」


 
 そして、彼から少し遅れて弟君が神殿に到着した。



「兄上…聖女様である彼女を裏切り、神域を穢しこの地の守護神の怒りを買ったあなたは、もうこの地を出て行って。父も、あなたと縁を切ると言って居ましたよ?」

「何!?」

「次の領主は、俺が引き継ぎます。その為に…今から彼女に、加護を授けて貰う約束をして居るんです。」

「そ、そんな…。」


 
 こうして、元婚約者は加護を失った上に、この地から追放されてしまった。

 そして、残された彼の愛人達も…病が治る事は無く、この地の外れにある診療所へ送られて行ったのだった─。



 一方、私はというと…加護を授けた弟君と、あれから何度か会う様になり…やがて、恋人として付き合う事に─。

 そして最近になり、彼と婚約する事が決まった。



 彼は誠実で真面目な人で…守護神様も彼を大いに気に入り、私との仲を祝福してくれている。

 そのおかげで、守護神様の気も乱れる事無く…むしろ機嫌がいいせいか…この地は以前よりもうんと平和で豊かになった。

 こうして、私は聖女としての務めも無事果たせたし…裏切者に罰を与える事も出来たし…何より、素敵な人と縁を結ぶ事が出来たから、本当に良かったわ─。
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