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婚約破棄したいがそれを伝えるのが面倒と言う姉に、その相手を誘惑しろと命じられました。
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私の姉は惚れやすいのに飽きっぽく、それ故に恋多き女だった。
そんな彼女は、一目惚れしたとある殿方に猛アタックし…その末に、彼の婚約者になる事が出来たのだが…そんな彼にもう飽きたらしく、婚約破棄したいと言い出した。
「でも、こっちからそれを言うのは面倒だし…私は自分が悪者になりたくないのよ。だから、あなたが彼を誘惑しなさい。」
「そ、そんな事─」
「出来ないって言ったら、あなたを今よりも酷い目に遭わせるわ。そんなの嫌でしょう?」
私は、実はこの家の本当の娘ではない。
本当の両親が事故で亡くなり…私は、遠い親戚であるこの家に預けられ、彼女の妹として育てられたのだ。
すると、彼女はそんな私をいつも虐めて来て…私は、彼女に逆らう事が出来ずに居た。
こうして私は、今度の命令も仕方なく聞く事に─。
でも…殿方を誘惑するって、一体どうすればいいの?
私は奥手で引っ込み思案で…まともに殿方と話した事も無いのに─。
そこで私は、まずは彼をお茶に誘ってみる事にした。
すると彼は、私が淹れたお茶や手作りのお菓子をとても美味しいと褒めてくれ…私の心は罪悪感で一杯になりながらも、それを嬉しく思った。
そして、また別の日もお茶に誘った私は何とか彼を誘惑しようと近づいたのだが…彼の袖のボタンが取れかかって居るのに気付いた。
聞けば、ここに来る途中で庭木に引っ掛けてしまったのだと言う。
「宜しかったら、私がそれを付け直しましょうか?」
「出来るのかい?」
「はい、よく姉にやらされ…いえ、頼まれる事があるので─。」
裁縫箱を持って来てそれを直す私を、彼は何も言わずに見て居た─。
そんなある日の事…私と彼は偶然町で出会い、店まで一緒に歩く事になった。
すると…道の反対側に、見知らぬ男と腕を組み歩く姉の姿が─。
それに気づいた私は…咄嗟に彼の腕を掴み、裏路地に連れ込んだ。
姉のそんな姿を見て傷付く彼を、私は見たくなかったのだ。
「…どうしたんだい?」
「あの…どうかこのまま、私と一緒に居て下さい!このまま、ここに暫く─。」
そう言って、彼の手を掴んで離さない私に…彼は、コクリと頷いた。
その翌日…姉は彼を家に呼び出し、こう言った。
「昨日、あなたと妹が二人で密会して居る所を私の友人が見たんだけれど…それって浮気よね?あなたがそんな人だとは思わなかったわ、もう婚約破棄しましょう?」
姉はニヤリと笑みを浮かべ、そう言った。
お姉様…彼を有責にし、自分は悲劇のヒロイン気取りで別れるつもりね?
自分が浮気をしていた癖に、よくそんな事が─。
「男と密会して居たのは君の方だろう?そうした上で自分の妹を俺に近づけ、俺が浮気をしたとして別れるつもりだった癖に。」
「なッ!?」
彼、気付いて居たのね─。
「君が俺と全く過ごさなくなり、代わりに君の妹に誘われる事が増え…おかしいと思った俺は、俺の従者に君を尾行させて居た。そして、君が他の男と密会して居る事を掴んだ。それだけじゃない、君は彼女を随分虐めて居たそうだな。彼女が俺に近づいたのも、君がそう命令したからだろう?」
「それは、その…。」
「君の様な女、こちらからお断りだ。君とはもう婚約破棄するが…浮気の慰謝料は、ちゃんと払って貰うからな。」
「そ、そんな…。」
その場に崩れ落ちた姉を彼は無視し、私の手を取ると家を後にした─。
「…本当に申し訳ありません、あなたを騙すような真似をして─。」
「むしろ、俺達の事に君を巻き込んでしまい本当に申し訳なかった。」
「私…もうあなたに近づかないようにします。」
本当は、そんなの凄く寂しいけれど…。
私は…姉に命じられたとは言え、彼と共に過ごす時間を楽しく思ってしまって居た。
だから、もう彼と会わないのは辛いが…その方が─。
しかし…彼は首を振り、こう言った。
「どうかこの先も、俺と会って欲しい。君と過ごす時間は、穏やかで温かく…俺は、いつも心安らいでいた。そしていつしか、君と過ごす事が楽しくなって居た。例え君が、姉に命じられ俺の傍に居るのだとしても…それでも嬉しかったんだ。」
「わ、私も…あなたと一緒に居られて幸せでした。本当は、姉の命令と関係なくあなたの傍に居たかったし…この先も、あなたの傍に居たいです。」
「そうか…俺達は、同じ事を考えて居たんだな─。」
その後…姉と別れた彼は、私を婚約者として家に迎えてくれた。
そして、私は彼にとても大事にされ…彼と共に、幸せな日々を送るのだった─。
そんな彼女は、一目惚れしたとある殿方に猛アタックし…その末に、彼の婚約者になる事が出来たのだが…そんな彼にもう飽きたらしく、婚約破棄したいと言い出した。
「でも、こっちからそれを言うのは面倒だし…私は自分が悪者になりたくないのよ。だから、あなたが彼を誘惑しなさい。」
「そ、そんな事─」
「出来ないって言ったら、あなたを今よりも酷い目に遭わせるわ。そんなの嫌でしょう?」
私は、実はこの家の本当の娘ではない。
本当の両親が事故で亡くなり…私は、遠い親戚であるこの家に預けられ、彼女の妹として育てられたのだ。
すると、彼女はそんな私をいつも虐めて来て…私は、彼女に逆らう事が出来ずに居た。
こうして私は、今度の命令も仕方なく聞く事に─。
でも…殿方を誘惑するって、一体どうすればいいの?
私は奥手で引っ込み思案で…まともに殿方と話した事も無いのに─。
そこで私は、まずは彼をお茶に誘ってみる事にした。
すると彼は、私が淹れたお茶や手作りのお菓子をとても美味しいと褒めてくれ…私の心は罪悪感で一杯になりながらも、それを嬉しく思った。
そして、また別の日もお茶に誘った私は何とか彼を誘惑しようと近づいたのだが…彼の袖のボタンが取れかかって居るのに気付いた。
聞けば、ここに来る途中で庭木に引っ掛けてしまったのだと言う。
「宜しかったら、私がそれを付け直しましょうか?」
「出来るのかい?」
「はい、よく姉にやらされ…いえ、頼まれる事があるので─。」
裁縫箱を持って来てそれを直す私を、彼は何も言わずに見て居た─。
そんなある日の事…私と彼は偶然町で出会い、店まで一緒に歩く事になった。
すると…道の反対側に、見知らぬ男と腕を組み歩く姉の姿が─。
それに気づいた私は…咄嗟に彼の腕を掴み、裏路地に連れ込んだ。
姉のそんな姿を見て傷付く彼を、私は見たくなかったのだ。
「…どうしたんだい?」
「あの…どうかこのまま、私と一緒に居て下さい!このまま、ここに暫く─。」
そう言って、彼の手を掴んで離さない私に…彼は、コクリと頷いた。
その翌日…姉は彼を家に呼び出し、こう言った。
「昨日、あなたと妹が二人で密会して居る所を私の友人が見たんだけれど…それって浮気よね?あなたがそんな人だとは思わなかったわ、もう婚約破棄しましょう?」
姉はニヤリと笑みを浮かべ、そう言った。
お姉様…彼を有責にし、自分は悲劇のヒロイン気取りで別れるつもりね?
自分が浮気をしていた癖に、よくそんな事が─。
「男と密会して居たのは君の方だろう?そうした上で自分の妹を俺に近づけ、俺が浮気をしたとして別れるつもりだった癖に。」
「なッ!?」
彼、気付いて居たのね─。
「君が俺と全く過ごさなくなり、代わりに君の妹に誘われる事が増え…おかしいと思った俺は、俺の従者に君を尾行させて居た。そして、君が他の男と密会して居る事を掴んだ。それだけじゃない、君は彼女を随分虐めて居たそうだな。彼女が俺に近づいたのも、君がそう命令したからだろう?」
「それは、その…。」
「君の様な女、こちらからお断りだ。君とはもう婚約破棄するが…浮気の慰謝料は、ちゃんと払って貰うからな。」
「そ、そんな…。」
その場に崩れ落ちた姉を彼は無視し、私の手を取ると家を後にした─。
「…本当に申し訳ありません、あなたを騙すような真似をして─。」
「むしろ、俺達の事に君を巻き込んでしまい本当に申し訳なかった。」
「私…もうあなたに近づかないようにします。」
本当は、そんなの凄く寂しいけれど…。
私は…姉に命じられたとは言え、彼と共に過ごす時間を楽しく思ってしまって居た。
だから、もう彼と会わないのは辛いが…その方が─。
しかし…彼は首を振り、こう言った。
「どうかこの先も、俺と会って欲しい。君と過ごす時間は、穏やかで温かく…俺は、いつも心安らいでいた。そしていつしか、君と過ごす事が楽しくなって居た。例え君が、姉に命じられ俺の傍に居るのだとしても…それでも嬉しかったんだ。」
「わ、私も…あなたと一緒に居られて幸せでした。本当は、姉の命令と関係なくあなたの傍に居たかったし…この先も、あなたの傍に居たいです。」
「そうか…俺達は、同じ事を考えて居たんだな─。」
その後…姉と別れた彼は、私を婚約者として家に迎えてくれた。
そして、私は彼にとても大事にされ…彼と共に、幸せな日々を送るのだった─。
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