【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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病弱な私に代わり彼と結婚すると宣言した妹ですが、すぐに実家に帰された上に罰を受けました。

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 もうすぐ愛する彼との結婚式だと言うのに、少し前から私は体の調子が悪かった。

 今では寝込む日々が続き、大好きな彼にも会いに行けない。



 するとそんな私を見た妹は、病弱なお姉様に彼の相手は務まらない─。

 彼は大きな商家の息子で、妻となる女はそれを支えて行かなければならないのに…こんな寝てばかりの女に何が出来るのだと言い、彼を想うなら身を引くべきだと自論を述べた。



 確かに、今の私が彼の妻になっても迷惑をかけるだけだ…。

 しかしこれは二人の問題、私だけでなく彼の気持ちも聞かなければ─。



 すると妹は、実はもう彼のお母様とは話がついて居る─。

 彼のお母様は、元々地味で平凡なお姉様より私を気に入って居た。

 人目を惹く美しい私の方が、商家の嫁にふさわしいとハッキリ言ってくれて居る。

 そして最近のお姉様の体調を知った彼のお母様は、地味な上にそんな病弱な女が嫁に来ても邪魔だ…代わりに妹の私に来て欲しいと望んでくれて居ると話した。


 
 確かに私は彼のお母様に好かれては居なかったが…まさか妹をそこまで気に入って居たとは─。

 

 ショックで固まる私に妹は、今日から彼の家に住む事も決まって居る─。

 彼は彼のお父様と共に事業の関係で家を空けて居るが、帰って来たら私が未来の妻としてそれを迎えてあげるのだ。

 彼と結婚するのは絶対に自分だと妹は宣言し、意気揚々と家を飛び出して行った。



 私はそんな妹を引き留めたかったが…身体の調子が悪くベッドから起き上がる事が出来ず、どうしようも出来なかった。



 彼のお母様はあの家の中で強い立場にあり、そのお母様が妹の方を嫁に迎えると望んだならそう決まるだろう。

 そうなったら、近く私の元に彼との婚約破棄の報せが届く。

 でも、どうか彼には私を選んで欲しい…。

 病弱で役立たずかもしれないけれど、彼を一番愛してるのはこの私なのだから─。



 しかしそれから少しして、家の中が急に騒がしくなった。

 そして部屋のドアが開き、婚約して居る彼とその父親…そして私の父と妹が部屋に入って来た。


 
 この状況に驚く私に、彼はすぐに駆け寄り…私とは絶対に別れない、病弱だからって捨てたりはしないと言ってくれた。

 また、君の妹とは結婚しない…それは母と彼女が勝手に決めた事で、俺も父も納得して居ないしむしろ大反対だと言った。



 また彼の父は、今まで気の強い妻を恐れ好きにさせて居たが…息子の結婚相手まで勝手に決めてしまうのは流石に許しがたい、そんな身勝手な妻とはもう離縁するから安心して嫁に来て欲しいと仰ってくれた。
 


 そしてそれを聞き安堵する私に、事業の為暫く家を留守にして居た父が驚くべき事を教えてくれた。

 実は一人の使用人から、妹が私の結婚を妬む余り食事に毒を盛って居る─。

 それは僅かな量ではあるが、私の身体を弱らせるには十分な効果があると知らせてくれた。



 そこで妹に話を聞くべくこの地に戻る事にしたが…その使用人から、妹が私に代わり彼の元へ勝手に嫁ごうとして居る…そしてつい先ほど家を出て行ったと言われ、慌てて彼の家に迎えに行ったとの事だった。



 すると父に取り押さえられた妹は…自分の方がお姉様よりずっと魅力的なのに、彼に相手にして貰えない事を不満に思って居た─。

 だからお姉様が病弱になってしまえば、それを見た彼はお姉様を見限り美しい自分を愛してくれると思ったのだと涙した。



 しかしそれを聞いた彼は…いくら見た目が良くてもそんな恐ろしい事をする女など絶対好きになる訳ないと、妹からの好意をキッパリと拒否するのだった。


 
 結局妹は父が呼んだ憲兵に引き取られ、その後牢へと入る事に─。

 すると今回の件を受け父が教えてくれたが、実は彼女は私が生まれた一年後に引き取られた没落貴族の子だった。

 
 
 だからそんな彼女には、近く適当な相手を見繕う気だったが…今回の件で当然それはなくなったし、家族の縁も切ると父は断言した。


 
 するとこれを牢の中で知った彼女は、この事実に相当なショックを受け…牢生活の中ですっかり体が弱って居た事もあり、心身共に異常をきたし狂ってしまったと言う。



 一方、私はと言うと…妹が捕まったおかげでこれ以上毒を口にする事も無くなり、父のおかげで適切な医療を受ける事が出来たおかげですっかり昔のような元気な身体に戻って居た。


 
 そして予定より少し遅れたものの、彼と結婚式を挙げる事ができ…それ以降は彼の妻として公私共に彼を支え、忙しくも幸せな結婚生活を送って居る─。
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