【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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気弱な幼馴染をずっと守って来ましたが、彼女の悪意を知ったので縁切りします。

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 私の幼馴染は昔から気が弱く、そのせいで馬鹿にされたり揶揄われて居たが…彼女と違い気が強く口が達者な私は、そんな者達から彼女を庇って来た。



 すると幼馴染は歳を重ねるごとに美しさが増し、男達から別の意味でちょっかいをかけられるようになったが…未だに気弱なので、それを上手くかわす事が出来なかった。

 そしていつも私に助けを求めるような視線を送って来るので、代わりに私がそのナンパ者達を追い払うのだった。



 しかしそんな中、私は婚約者から突然婚約破棄を宣言された。

 そしてその理由を尋ねれば、私が幼馴染の美しさに嫉妬し…彼女を男から庇う振りをし、逆に良縁を結ぶ機会を奪って居る─。

 私がそんな性格の悪い女と知った以上、もう一緒に居たくないとの事だった。



 そして婚約者は、元々私のような地味な上に気が強い女は好みでは無かった…家同士の約束で言われるままお前と婚約したが、今は淑やかで美しいお前の幼馴染に心奪われて居る─。

 その為、いずれは彼女を新たな婚約者に迎えたいと言うのだった。



 私はそんな彼に対し、悪意を持って男達から彼女を庇って居た訳ではない─。

 純粋に幼馴染をナンパ者達から守りたかっただけだと言ったが、婚約者は全く信じなかった。

 それどころか、そうやって嘘を付き俺を騙そうとしても無駄だ…お前のつまらぬ顔などもう二度と見たく無いと言い、完全に私を拒絶するのだった。



 彼が私との婚約を喜んで居ないのは薄々感じては居たが…幼馴染の事で、あんなふうに誤解をされて居たとは─。

 しかし、彼はどうしてそんな事を思ったのだろう─?

 

 その後…私は幼馴染が彼の事をどう思って居るのか気になり、彼女を訪ねる事にした。

 あの子は気が弱いから、彼に押し切られ望まぬ婚約をしてしまうかも…。

 それに何より、私は彼の事で余り良くない噂を最近耳にして居る─。



 しかし彼女の元を訪ねると、そこには彼女の知人女性が先客として来て居た。

 私は一旦家に帰ろうとしたが…扉の隙間から聞こえて来た幼馴染とその客の会話に驚き、思わず足を止め聞き入った。



 幼馴染は嬉しそうな声で、今も気弱な振りをして前から好きだった幼馴染の婚約者に近づいた─。

 彼がそう言う女が好みと知った上で、私はずっとそう言う演技をして居たの。

 

 そして彼に、あなたの婚約者が私を庇うのは純粋に幼馴染だからと言う理由ではなく…私の容姿に嫉妬し、殿方と良縁を結ばせないようにして居る為と嘘を吹き込んだ。



 そうした上で、このままでは一生独り身かも知れない…でも気が強い彼女を邪険にしたら後でどんな目に遭うか分からないと泣いて訴えて見たら、彼はすっかり騙され婚約者であるあの子の事を軽蔑するようになった。



 そして代わりに私を気に掛けるようになり…ついこの前あの子と婚約破棄し私を新たな婚約者に選ぶと彼が言ってくれたと、幼馴染は嬉しそうに語るのだった。



 それに対し彼女の知人は、あなたが気弱だったのは幼い時だけ…今では敢えてそれを武器に、狙った男を手に入れた立派な悪女だと揶揄った。



 すると幼馴染は、それは誉め言葉に過ぎないと言い嫌な笑みを浮かべ…その表情は、いつも私の背に隠れ守られて居る彼女とは全くの別人だった。



 年月は人を変えると言うけれど…彼女はその外見は美しく、だが中身はとんでもなく汚い女になってしまったのね。

 そんな女など、私はもう放っておくわ…彼女がどうなろうが、一向に構わない─。



 その後、元婚約者と幼馴染は婚約する事になり…あの時私に話を聞かれて居た事を知らない彼女は、涙を流し彼との事を謝って来たが…私はそれを適当にかわし、形だけの祝福の言葉を返した。

 そんな私に、あなたの分も絶対に幸せになると彼女は言ったが…それが叶う事は無かった。



 と言うのも、二人はトントン拍子に結婚までしたのだが…その直後に彼の新しい事業が失敗に終わり、彼は多額の負債を抱える事に─。

 そしてそれは、妻になった彼女をも不幸のどん底に叩き落とすのだった。



 どうやら彼は、新しい事業を始める際に悪い所から金を借りたらしく…それが返せない今彼は奴隷として金持ちに売られ、そして美人妻と評判の彼女は借金のカタに娼館に売られる事が決まってしまったのだ。



 それを知った私は、やはりあの良くない噂は本当だったのかと思い二人の家の様子を伺ってみた。

 すると彼はもう連れて行かれた後だったが…彼女は金貸しの男達から必死に逃げまわって居た。



 そして玄関から出て来た彼女は私に気付くと、涙を流し救いを求めて来たが…彼女の悪意を知った私には、もう彼女を助ける気は無かった。

 そして駆け寄って来た彼女の胸を突き飛ばすと、彼女はそのまま追いかけて来た男に倒れ込み…羽交い絞めにされ、そのまま娼館へと連行されるのだった。


 
 その際、彼女はどうしてと言った目で私を見て来たが…私はそれを無視し、そのまま本来の目的地を目指し歩き去った。


 
 あそこに長居し、騒動に巻き込まれるのはご免よ─。

 だって今日は、恋人となった彼との初めてのデートだから…。



 幼馴染の本性を知った私は、それ以降彼女以外の令嬢達と交流を深める事となり…その縁で一人の令嬢から知り合いの殿方を紹介された。
 


 最初は友人として彼と会って居たが…つい数日前、私は彼に告白され交際を始めたのだ。

 そして今日は初めてのデートで…その待ち合わせ場所に行く道中に二人の家があったので、少し中を覗いてみたと言う訳だ。



 あなたは結局、あの人と幸せにはなれなかったけれど…いいわ、その分私が彼と幸せになるから─。

 代わりにあなたは、薄汚い夜の世界で己の不幸を存分に嘆いて居ればいいわ─。
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