【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

文字の大きさ
上 下
112 / 215

自身の幸せを当たり前に思い私を馬鹿にする妹ですが、後に人生転落してしまうのでした。

しおりを挟む
 私の妹には、昔から多くの幸運が舞い込んだ。

 そのせいか、妹はどんどん傲慢な性格になって行き…私は、その事を非常に残念に思って居た。



 妹は特に男癖が悪く…自分の友人の恋人であっても、平気で略奪してしまう。

 そしてその矛先は…姉である私の、婚約者にまで向けられる事に─。



 妹はその美しさと色気で、彼を誘惑…あっという間に、彼を虜にした。

 そして、私からいとも簡単に奪って行ったのだ─。



「彼はね、私の容姿だけでなく…幸運に恵まれた女、という所に最も惹かれたそうよ?彼は、新しく事業を立ち上げるそうだから…私の様な女を婚約者にした方が、色々と都合が良かったみたい。お姉様は…地味顔だし、陰気臭い性格だから…捨てられても仕方ないわ。」

「私が、陰気臭い…?」

「だって、趣味が神殿への参拝だ何て…暗いじゃない。それに、神に縋らなきゃ良い事が舞い込まない女など、縁起が悪いわよ。」

 そう言って、妹は私をひとしきり馬鹿にすると…彼と約束があると、家を出て行ってしまった─。

 
 
 その後、妹と彼は交際を続け…そして彼は、新しい事業に取りかかり、それを軌道に乗せようとしていた。

 そんな彼の力になろうと、妹は常に彼の傍に居る様になったのだが…何故か、彼の身に不幸が降りかかる様になった。

 何者かに襲われたり、事故に遭ったり、急に体を壊したり…。

 そのせいで、立ち上げた事業も上手く行かず…彼はあっという間に破産、借金だけが残る事になってしまった。



 すると彼は、それを妹のせいだと言って激しく責めた。

 お前が傍に居る様になってから、自分は不幸続きだ…。
 自分を幸運の女などと言い俺を騙したお前にも、この借金を返済する責任がある、とまで言い出したのだ。



「…借金を払えだ何て、そんなの嫌よ!あぁ…どうしてこんな事になるのよ!私は、間違いなく今までは幸運続きだったのよ!?」

「そんなの、あなたが私を裏切ったからよ。」

「お姉様、何を言って─」

「私が、毎日神殿で祈って居たのは…生まれた時から不幸になる運命が決まって居たあなたを、少しでも幸せにする為よ。これまであなたが幸せに生きて来れたのは、私の祈りの効果があったから─。でも、私はあなたに婚約者を略奪された。だから私は、そんな事をしたあなたの為に一切祈る事を辞めたの。それであなたは─。」

 

 私の告白に、妹は驚きで固まってしまった。

「結果あなたの不幸は、他人をも巻き込んでしまった。あなたと結ばれた彼は、こうしてすっかり破滅してしまった。彼の言う通り、あなたには責任があるんだから…共に借金を払ってあげたら?」

「そ、そんな…。」


 
 その後妹は、彼女を連れにやって来た元婚約者の手で、娼館へと売り飛ばされてしまった。

 妹は、私に必死に助けを求めたが…今までに大勢の女を苦しめて来たあの子を、私は助ける気にはならなかった。

 私の両親も、これまであの子の起こした事で苦労し、慰謝料ばかり払わされて来た為か、全く止めもしなかった。
 きっとこれは、事実上の縁切りだろう─。



 こうして元婚約者は、妹を売って得たお金で借金の半分は何とか返せたが…残り半分を返す為、今は田舎の金持ちの元でこき使われる毎日だ。

 プライドの高い彼だから、それはさぞや苦痛でしょうが…自業自得よね─。


 
 そして、私はというと…あんな事があってからは、自分の為にも祈りを捧げる様になって居た。

 今度こそ、優しくて真面目な方と婚約したい。

 どうか、いい縁に恵まれますように…。

 

 すると、祈り続けて百日目…私に、新たな婚約話が舞い込んで来た。

 それは、あるお金持ちのご子息様からのもので…神殿に通う私を偶然見かけ、毎日その姿を見ている内に、私に惹かれたとの事だった。

 信心深い私は、きっと真面目で心の綺麗な女性なのだろうと、彼は私を大いに褒めてくれ…私は、漸く自分の願いが叶い…これまでの行いが報われたのだと、とても嬉しくなった。
 
 そして私達は、すぐに意気投合。

 あっという間に婚約が決まり…今は彼と共に、幸せな婚約生活を送って居る─。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっとやっていれば良いわ。※暗い復讐、注意。

BBやっこ
恋愛
幼い頃は、誰かに守られたかった。 後妻の連れ子。家も食事も教育も与えられたけど。 新しい兄は最悪だった。 事あるごとにちょっかいをかけ、物を壊し嫌がらせ。 それくらい社交界でよくあるとは、家であって良い事なのか? 本当に嫌。だけどもう我慢しなくて良い

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

バカ二人のおかげで優秀な婿と結婚できるお話

下菊みこと
恋愛
バカ二人が自滅するだけ。ゴミを一気に処分できてスッキリするお話。 ルルシアは義妹と自分の婚約者が火遊びをして、子供が出来たと知る。ルルシアは二人の勘違いを正しつつも、二人のお望み通り婚約者のトレードはしてあげる。結果、本来より良い婿を手に入れることになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたが一番大切なのに

頭フェアリータイプ
恋愛
公爵令嬢で王太子の婚約者なロザリーナは突然婚約破棄されてしまう。 婚約破棄されてしまったロザリーナは一体どうなってしまうのか。

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

婚約破棄は先手を取ってあげますわ

浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。 ※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。  更新は飛び飛びになります。

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

処理中です...