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夫と愛人が揃って醜き姿に変貌する一方で、私は大きな幸せを手にしました!

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 私と結婚した後に、若く美しい愛人を作った夫。
 
 しかも彼は事もあろうに、その愛人を家に囲った。



 そんな夫と愛人を、私はとても許せなかった。

 私は、どうにか愛人に家を出て行って貰うよう頼んだが…夫は、そんな私を嫉妬深い女と嫌い…愛人は、私を馬鹿にし嘲笑った。

 それから、私はずっと二人の勝手を許してきたが…もう、我慢する必要は無いわ─。

 と言うのも…私は、ある物を街で見つけたからだ─。



「一体何なんだ、見せたい物とは…。俺達は、今日は街に出かける予定だったんだぞ!?」

「そうよ、さっさと要件を言って頂戴!」

「まぁ、そう怒らず…これを見て下さい。」

 庭には、大きな檻が用意されて居て…そこには、珍しい模様の獣が入って居た。



「これは…今王都で人気の、魔獣か?」

「フフ…せっかくだから、お二人に見せようと思って。大人しい子ですので、どうぞ中に入り触ってみて下さい。」

 私の言葉に、二人は喜んで檻の中に入って行った。



 そして、獣に手を伸ばしたのだが…その瞬間、獣はその手をひらりと避け…開いた檻の扉から、外へと飛び出した。

 すると、檻の扉はガチャリと閉まり…二人は、その中に閉じ込められてしまった。



「何、ここを開けなさいよ!?」

「そうだ、俺達は獣じゃない!」

「そうでしょうか…?人の心を平気で傷付ける…人間の心を持たない、醜い生き物だと思いますけれど?その証拠に…ご自分の手を見てご覧なさい。」

 二人の手は…鋭い爪が伸び、長い毛で覆われていた。

 それは、次第に顔や足にも広がり…その身体は、やがて醜い獣に変化した。

 そして…私の元にやって来た魔獣はと言うと…一人の美形の男の姿に変わって居た。

 それを見た檻の中の二匹の獣は、どういう事かと私を見つめている。



「この檻は、人を獣に変えてしまう魔法がかかって居て…一度そこへ入ったら、次の人間が中に入るまでその魔法は解けない。この檻を市場で偶然目にした時…魔力を持った私は、すぐにその仕掛けに気付きました。そして…あなた達をこの家から追い出すには、便利な道具だと思い購入したんです。それに…この中に入れられて居るのは、ただの獣ではなく…とても立派な存在だという事に気付きましたので─。」

 その獣の額には、不思議な模様が浮かんでいた。

 それを、店主は全く気にして居なかったが…しかし、私はその模様がある小国の王族の物だとすぐに分かった。

 更に、そこの第三王子が行方不明になって居たという噂を思い出したのだ─。



「私は、この獣がその王子だと思い…是非そこからお助けしようと思いましてね。それで、この檻と獣…両方の購入を決めたんです。」

「俺は、悪い魔術師に騙され…この檻に入れられ獣にされ、他国に売られてしまったんだ。でも、彼女のおかげで助かったよ。」



 この事実に、二匹の獣は檻の中で狂った様に暴れた。

 すると…それを見た王子が、私にこう言った。

「元が醜い心の持ち主だけあって、何て醜い獣達だ…。この者達をこのまま家に置いておいたら、君に何をするか分からない…。だから、さっさと売り飛ばしてしまおう。」

 その言葉に…檻の中の獣達は、ただ悲しく泣き叫ぶ事しか出来なかった─。

 その後、獣になった二人は…醜い生き物を買うのが大好きな、ある男の元へ売られて行き…この家から姿を消した─。

 その男は、自分が飼った生き物をいたぶるのが趣味と言う噂があるから…二人はこの先、ただでは済まないでしょうね。



 一方、元の姿に戻った王子は…国に帰れば、またあの魔術師から狙われる危険性がある為、私の元に残ると言った。
 
 それに…彼は、恩人である私に特別な感情を抱いたそうで、私の元を離れたくないと思ったそうだ。

 その後、私は彼の気持ちにお応えする事にし…私達は、この家で幸せに暮らして居る─。
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