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婚約者に人間扱いされない惨めな私ですが、後に大きな力を開花し幸せになれました!
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「お前は置物なんだから、部屋の隅っこで大人しくして居ろ!そうじゃなきゃ、俺の邪魔になるだろう!」
帰って来た途端…夕食を取って居る私を見て、不機嫌な顔でそう言い放った婚約者。
その隣には、可愛らしい女が寄り添っていた。
「まぁ、置物とはどういう事です?」
「こいつは無口で不愛想で人間らしく無くて…そんなんだから、置物と呼んでるんだ。見ての通り、俺に文句を言われても何も言わないし。」
「…。」
「あら、本当だわ!こんな変な女が婚約者だなんて、あなたが可哀そうだわ。」
「そうだろう?だから…今夜は君のその身体で、俺を慰めてくれ。」
そう言って、彼は女の肩を抱くと自身の寝室へと消えて行った─。
置物か…。
人間ではなく、物扱いされる私。
でもあなたがそんなふうだから、私は何も言わなくなってしまったんじゃない。
私が何度浮気を辞めて欲しいと訴えても、俺に指図するなと怒り…そして黙って居ろと言うから…毎回そう返される言葉のせいで…私はいつしか、思うように言葉が出なくなってしまったのよ?
するとそうなった私を彼はああして物扱いし、その上で粗末に扱って来るように…。
更には当てつけのように女遊びを繰り返し…時には情事の痕の付いたシーツを私に投げてよこし、洗えと命じて来るのだ。
こんな屈辱的な事をされ、私の心はもう限界を迎えそう─。
そんなある日の事─。
私宛に、一通の手紙が届いた。
早速封を開け、それを読んだ私は…驚きで、声が出そうになった─。
***
…この前の女は、中々具合が良かったな。
今度は、気になっていたもう一人の令嬢に声をかけてみるか。
俺には婚約者が居るが…今は亡き父が勝手に連れてきた相手で、俺はそんな相手にちっとも満足出来ては居なかった。
何せその女ときたら、出自もハッキリとせず…地味で暗くて、色気もないつまらぬ女だったからだ。
おまけに、俺が少し怒鳴ってやっただけでビクビクして…鬱陶しいったらない。
だが同時に、俺は怯えるその女が無様で面白くて…その後もどんどん厳しい言葉を浴びせるようになって行った。
「置物とは、物言わぬ今のあいつにピッタリだな。だがどうせ傍に置くなら、もっと美しい置物が良い。父も死んだ事だし…そろそろあいつとは婚約破棄し、この家から追い出してしまおうか。そして今度は、俺好みの女を婚約者に迎えよう。」
とその時、家のドアを叩く者があった。
そしてドアを開けてみれば、そこには神殿から来た神官長が立って居た。
「神殿の者が、一体俺に何の用だ?」
「あなたではなく、あなたの婚約者様に用があるのです。」
「あいつに…?会っても良いが…あの女は、まともに話す事が出来ないぞ?」
するとそれを聞いた神官長は、俺に対し怒りの表情を見せた。
「そうなってしまったのは、あなたがあの方の心を傷付けたからでしょう?あなたがあの方を粗末に扱い、物扱いしたから…あなたが黙れと言う言葉が、一種の呪いの様にあの方の心を縛り…それで、物言わぬ娘になってしまわれたのです。」
「い、言いがかりはよせ!大体さっきから、あの女をあの方呼ばわりして…あんな出自の分からぬ女に、神官長ともあろう者がそんな口を利く事は─」
「彼女は、この国を守る大聖女様の娘です。そして近く聖女の力に目覚め、次の大聖女になる素晴らしい存在ですから敬うのは当然の事─。」
「な、何だって!?」
「…お待たせしてしまいましたね、申し訳ありません。準備が出来ましたので、行きましょう─。」
***
「お、お前…声が─」
近づいてきた私を見て、彼は驚愕の表情を浮かべた。
「…大聖女である母からの手紙を読んだ事で、私はあなたからの言葉の呪縛から解放されました。私は、決して暴言を吐かれ粗末に扱われていい人間では無かったのだと─。あなたは私を罪人の子だ…愛されず捨てられたのだと、そう馬鹿にして居ましたがそれは大間違いでした。」
ある日、神殿に族が入り込み…大聖女の娘であった私は攫われてしまった。
そしてそれきり行方が分からず…母も神殿の者達も、必死で探して居たのだった。
「あなたに暴言を吐かれ、粗末に扱われたせいで私は言葉と共に聖女の力まで抑え込まれてしまって居た。だから、中々行方が掴めずに居た。でも漸く居場所が分かったから、迎えに行くとそう手紙に書いてあったんです。」
「そ、そんな…。」
「あなたがこの方にしてきた事は、この方が返して下さった手紙で分かって居ます。次期大聖女様に、汚れ物の後始末をさせるなど…何と無礼な事を─。大聖女様はこの国の王が認める国の宝…故に、強い権限を持っておられます。」
「あなたは私を虐めた罰で、財産は全て没収…この国から追放だそうですよ?」
「はぁ!?」
「そして私はあなたとお別れし、母の居る神殿に行く事になって居ます。そこでちゃんと修行を受け、私は次の大聖女になります。あなたの元を一刻も早く離れる事が、聖女の力を目覚めさせると…そう手紙にも書いてありましたしね。」
「ど、どうしてこんな事に─。」
私に関する真実を知った驚きと、そしてこの先の自分の運命を知り…彼は、その場に崩れ落ちるのだった─。
その後…無事神殿に帰還した私は、母である大聖女様と再会…その身に残った穢れを、完全に取り除いて貰った。
するとすぐに聖女の力に目覚め…その力は日ごとに強くなり、これなら大聖女の役目を引き継げると母も言って下さった。
そしてそれを国王様に報告しにお城に向かった私は…何と第二王子様に一目惚れされ、彼の婚約者となる事が決まった。
これまで置物扱いされ粗末に扱われて来た私が、まさか王子様のお相手に選ばれるなんて…真実を知ってから、私の人生は一気に好転したわね。
この先は、大聖女として…そして王子のお妃としてこの国を守り、幸せに生きて行くわよ─。
帰って来た途端…夕食を取って居る私を見て、不機嫌な顔でそう言い放った婚約者。
その隣には、可愛らしい女が寄り添っていた。
「まぁ、置物とはどういう事です?」
「こいつは無口で不愛想で人間らしく無くて…そんなんだから、置物と呼んでるんだ。見ての通り、俺に文句を言われても何も言わないし。」
「…。」
「あら、本当だわ!こんな変な女が婚約者だなんて、あなたが可哀そうだわ。」
「そうだろう?だから…今夜は君のその身体で、俺を慰めてくれ。」
そう言って、彼は女の肩を抱くと自身の寝室へと消えて行った─。
置物か…。
人間ではなく、物扱いされる私。
でもあなたがそんなふうだから、私は何も言わなくなってしまったんじゃない。
私が何度浮気を辞めて欲しいと訴えても、俺に指図するなと怒り…そして黙って居ろと言うから…毎回そう返される言葉のせいで…私はいつしか、思うように言葉が出なくなってしまったのよ?
するとそうなった私を彼はああして物扱いし、その上で粗末に扱って来るように…。
更には当てつけのように女遊びを繰り返し…時には情事の痕の付いたシーツを私に投げてよこし、洗えと命じて来るのだ。
こんな屈辱的な事をされ、私の心はもう限界を迎えそう─。
そんなある日の事─。
私宛に、一通の手紙が届いた。
早速封を開け、それを読んだ私は…驚きで、声が出そうになった─。
***
…この前の女は、中々具合が良かったな。
今度は、気になっていたもう一人の令嬢に声をかけてみるか。
俺には婚約者が居るが…今は亡き父が勝手に連れてきた相手で、俺はそんな相手にちっとも満足出来ては居なかった。
何せその女ときたら、出自もハッキリとせず…地味で暗くて、色気もないつまらぬ女だったからだ。
おまけに、俺が少し怒鳴ってやっただけでビクビクして…鬱陶しいったらない。
だが同時に、俺は怯えるその女が無様で面白くて…その後もどんどん厳しい言葉を浴びせるようになって行った。
「置物とは、物言わぬ今のあいつにピッタリだな。だがどうせ傍に置くなら、もっと美しい置物が良い。父も死んだ事だし…そろそろあいつとは婚約破棄し、この家から追い出してしまおうか。そして今度は、俺好みの女を婚約者に迎えよう。」
とその時、家のドアを叩く者があった。
そしてドアを開けてみれば、そこには神殿から来た神官長が立って居た。
「神殿の者が、一体俺に何の用だ?」
「あなたではなく、あなたの婚約者様に用があるのです。」
「あいつに…?会っても良いが…あの女は、まともに話す事が出来ないぞ?」
するとそれを聞いた神官長は、俺に対し怒りの表情を見せた。
「そうなってしまったのは、あなたがあの方の心を傷付けたからでしょう?あなたがあの方を粗末に扱い、物扱いしたから…あなたが黙れと言う言葉が、一種の呪いの様にあの方の心を縛り…それで、物言わぬ娘になってしまわれたのです。」
「い、言いがかりはよせ!大体さっきから、あの女をあの方呼ばわりして…あんな出自の分からぬ女に、神官長ともあろう者がそんな口を利く事は─」
「彼女は、この国を守る大聖女様の娘です。そして近く聖女の力に目覚め、次の大聖女になる素晴らしい存在ですから敬うのは当然の事─。」
「な、何だって!?」
「…お待たせしてしまいましたね、申し訳ありません。準備が出来ましたので、行きましょう─。」
***
「お、お前…声が─」
近づいてきた私を見て、彼は驚愕の表情を浮かべた。
「…大聖女である母からの手紙を読んだ事で、私はあなたからの言葉の呪縛から解放されました。私は、決して暴言を吐かれ粗末に扱われていい人間では無かったのだと─。あなたは私を罪人の子だ…愛されず捨てられたのだと、そう馬鹿にして居ましたがそれは大間違いでした。」
ある日、神殿に族が入り込み…大聖女の娘であった私は攫われてしまった。
そしてそれきり行方が分からず…母も神殿の者達も、必死で探して居たのだった。
「あなたに暴言を吐かれ、粗末に扱われたせいで私は言葉と共に聖女の力まで抑え込まれてしまって居た。だから、中々行方が掴めずに居た。でも漸く居場所が分かったから、迎えに行くとそう手紙に書いてあったんです。」
「そ、そんな…。」
「あなたがこの方にしてきた事は、この方が返して下さった手紙で分かって居ます。次期大聖女様に、汚れ物の後始末をさせるなど…何と無礼な事を─。大聖女様はこの国の王が認める国の宝…故に、強い権限を持っておられます。」
「あなたは私を虐めた罰で、財産は全て没収…この国から追放だそうですよ?」
「はぁ!?」
「そして私はあなたとお別れし、母の居る神殿に行く事になって居ます。そこでちゃんと修行を受け、私は次の大聖女になります。あなたの元を一刻も早く離れる事が、聖女の力を目覚めさせると…そう手紙にも書いてありましたしね。」
「ど、どうしてこんな事に─。」
私に関する真実を知った驚きと、そしてこの先の自分の運命を知り…彼は、その場に崩れ落ちるのだった─。
その後…無事神殿に帰還した私は、母である大聖女様と再会…その身に残った穢れを、完全に取り除いて貰った。
するとすぐに聖女の力に目覚め…その力は日ごとに強くなり、これなら大聖女の役目を引き継げると母も言って下さった。
そしてそれを国王様に報告しにお城に向かった私は…何と第二王子様に一目惚れされ、彼の婚約者となる事が決まった。
これまで置物扱いされ粗末に扱われて来た私が、まさか王子様のお相手に選ばれるなんて…真実を知ってから、私の人生は一気に好転したわね。
この先は、大聖女として…そして王子のお妃としてこの国を守り、幸せに生きて行くわよ─。
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