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私の婚約者や美形の殿方達を従えて幸せに暮らす妹ですが、結局何もかも失ってしまうのでした。

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 美形の男たちに囲まれ楽しく暮らす妹─。



 彼らはいつも、妹の身の回りの世話を喜んでして居る。

 そして、その中には…私の婚約者の姿もあった。



「彼ったら、お姉様よりも私の傍に居たいそうよ?私があんまり可愛いから、彼だけでなく皆私を好きになっちゃうの。こんな生活が送れて最高だわ!」

 そう言って、妹は心底幸せそうな顔をして笑って居た。



 …全く。

 そうやって、呑気に笑って居ればいいわ。

 だってあなたのこの幸せは、もうすぐ終わりを迎えるもの─。



 それから少しして…妹はいつものようにその男たちに自分の世話をさせる為、あれこれ命令したのだが…男たちはそれを拒否─。

 それどころか、妹を罵り始めたのだ。



「何…どうして私の言う事が聞けないの!?」

「どうしてって…何故、他人のお前の言う事を聞かななくてはならない!」

「こ、この可愛い私に逆らうの!?」



 すると男たちは互いに顔を見合わせ…そして、揃ってお腹を抱え笑い出した。



「お前が可愛いだって!?馬鹿な冗談はよせ、自分の顔を鏡で見た事ないのか?」

 そう言って、一人の男が傍に在った手鏡を妹に放り投げ…妹は、震える手でそれを拾い上げ覗いた。



「どうして…私の顔が、元に戻って居るわ!」

「元に?…よく分からないが、俺はお前みたいな女の召使になるのはご免だ。というか…俺は、どうしてこんな所に居るんだ?」

「俺も同じだよ。早く家に帰らないと─。」

 そう言って、男たちは皆揃って家を出て行ってしまった。




「待ちなさい!お願い、行かないで!」

「追っても無駄よ。彼らはもう、あなたの言う事など聞かないわ。」

「お、お姉様…どうして話が出来るの?あなたの声は、私が魔力で封じたのに─!」

「それはね…彼が、あの魔法石を破壊してくれたからよ─。」



 そして部屋に現れたのは…私の婚約者で、騎士団長を務めて居る彼だった。



「この魔法石を町の露天商で偶然手にしたお前は、自分の容姿を美しくしたり気に入った男を魔力で操り下僕にしていた。更に、それを咎めた姉である彼女の声を奪いこの家に閉じ込めた。俺は婚約者である彼女に会えなくなり…きっと何かあったと思い、わざとこの家に近づいたんだ。」

「う、嘘…あなたも、皆と同じく操られて居たんじゃ─」

「俺は騎士団に入る際に神殿で加護を貰ったから、そういう邪悪な魔力の餌食にはならない。だから、わざとお前に魅了された振りをしこの家を探って居たんだ。そして、お前があの魔法石を大事にして居る事を知った。」

「そんなぁ…。」

「団長である彼の剣は、どんな固い魔物でも斬れるから…あなたの魔法石もきっと壊せると私は思ったの。」

「彼女が紙に書き説明してくれた通り、俺は魔法石を真っ二つに叩き切った。そして、この中に閉じ込められて居た魔力はすっかり消失し…それ故にお前の力も消えたんだ。」



 割れた石を見た妹は、絶望の表情を浮かべガクリと崩れ落ちた。



「わ、私の美しい顔が…私の楽園が…幸せが壊れてしまった─!」



 そう泣き叫ぶ妹を、私と彼は冷たい目で見つめるのだった─。



 その後…妹は、駆けつけた憲兵に連れて行かれた。



 この国では、魔法石や魔道具で人を操る事は禁じられて居る。

 男を魔力で洗脳し攫った後に監禁、そして身内さえも手にかけると言う大罪を犯した妹は、もう一生牢からは出られないだろう。



 そして無事に声を取り戻し、以前のように愛の言葉を囁く事が叶った私を…婚約者の彼は、本当に良かったと言って優しく抱きしめてくれた。



 彼と会えなくて不安だったけれど、まさか自らここに乗り込み私を救ってくれるとは…彼は騎士だけど、私にとってはかけがえのない王子様だわ。

 彼の事は大好きだったけれど、今回の事で益々惚れ込んだわね─。
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