【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

文字の大きさ
上 下
96 / 215

妃候補だった私と義妹ですが、どちらかを選ぶかで王子の運命が決まってしまいました──。

しおりを挟む
「俺は、彼女を選びます。」

 そう言って、王子は私の隣に居た義妹に手を差し伸べ…そして義妹は、喜んでその手を掴んだ。

 そんな二人は、今からある事試される。

 そえれは、この国の未来を任せて良いのかどうかだ─。



***



「俺はもうすぐ王になる。そしてその為に、妃になる女を選べと父に言われた。その候補がお前たちという訳だ。二人は姉妹と聞いていたが…噂通りの容姿だな。姉が不美人な方で、妹が美人な方か。」

「王子ったら何て正直な…。でもその覚え方で正解ですわ。私たちは母親が違うから、似てないのも仕方ありません。」

 そう言って、王子と義妹は笑い合い…私は、そんな二人をぼんやりと見て居た。



 この国には、ある風習がある。

 王子の妃候補として、国の娘の中から二人が選ばれる。

 それは今回の様に姉妹であったり、赤の他人であったり色々だ。



 現王の夢の中にこの国の守護神が現れ、その娘の名を告げ…王は言われた通りその娘を探し出し、王子の妃にふさわしい娘になるべく彼女らに学びの場を与える。



 そして王子が妃を迎える年齢になると、彼女たちに引き合わせ…その後しばらくして、王子自身にどちらかの娘を選ばせる。

 片方は本当の妃になる娘、もう片方はその資格が無かった者…つまりは不正解だ。



 そして選んだ娘と共に、王家に代々伝わる剣を神殿の泉から引き抜く事が出来たら、王子は次期王として神に確かに認められたという事で、この国を任せられるのだ─。



 すると王子は、未だ何も言わない私をジロリと見て来た。

「姉は随分と愛想が無いな。」

「あぁ…この人は、昔から男が苦手なの。」

「何?じゃあもう、俺の相手は決まったようなものだな。」

 そう言うと、王子は義妹の肩を抱き部屋を出て行った─。



 あれから幾日が経ったが…王子は義妹とばかり過ごし、私の存在などまるで無視していた。

「お前は本当に美しい…お前が妃になったら、毎日この顔が見られるな。」

「見るだけじゃなくて、毎日触れて素敵な事も出来るわ。」

「おお、それは楽しみだ。あの姉もお前を見習うべきだが…まぁ、不美人には無理だな。」


 
 そう言って、離れた所に控える私を馬鹿にする王子だが…違うわ。
 
 私は…男が苦手なのではなく、ただあなたが嫌いなだけよ。



 王子は忘れてしまったようだけど、私と彼は幼い頃にあるパーティーで会ってる。



 そんな彼は私を見るなり、その容姿を酷く侮辱した。

 私は先祖返りで、珍しい髪と瞳の色をして居るからそれで─。



 すると王子はそんな私を化け物だと呼び、階段から突き落した。

 しかし何とか幸い怪我だけで済んだ私を、王子はは今と同じように嘲笑い眺めて居た。

 だからそんな残酷非道な者、この国を司る王になどなれるはずがない。



 それに義妹だって、未来の妃としてはその品行に問題があるわ。

 彼女は自分の美しさを理解しており、このお城に入るまでに何人の男と遊んできた事か─。


 だからそんな二人が結ばれたら、どんな恐ろしい事になるのか心配だった…。

 でも聞いたのだ。

 稀に、儀式が失敗する事もあると─。




「次期王とその妃になる者です。神よ、どうぞあなたの判断を─。」

 王子と義妹は神殿の泉に入り、そして台座から剣を引き抜こうとした。

 しかし、剣は一向に抜けない。



「おい、もっと力を入れろ!」

「やってるわ!王子こそ、男なんだから力を込めて!」

 二人は互いに文句を言い合い、色々と喚き合っているが…剣は一向に抜けない。



「ま、待て…何かおかしい。泉の水が、どんどん深く…これは、一体?」

「嘘、剣から手が離れない!」

「王子…どうやらあなたは失敗したみたいですね。」

 私の言葉に、王子の額に冷や汗が滲んだ。



「お前、何を言うんだ!?」

「妃候補として教育を受けた時に聞きました。神に認められたら、剣は力を込めずとも引き抜く事が出来ると。でも…一向に剣が抜けない時は危険だ。なぜならそれは、近い将来二人が、この国を転覆させるから…。そうですよね、王様?」

「その通りだ…お前たちは恐ろしい存在だ。この国の為に、もう生かしておく事は出来ない、それが決まりなんだ。だから…お前たちは、そのまま泉に沈む事となる。」

「お、俺が居なくなったら、次期王はどうなるのです!?」

「構いません。あなたには、双子の弟君がいらっしゃるのだから。」

「何故それを知って…あいつは体が弱く、人前には出てこないのに!」

「良く存じて居ますよ。だってあの後…階段から落ちた私を介抱してくれたのは彼だから。」

「は?階段…?」

「…いえ、あなたにはもう関係のない事ですよ。」



 すると義妹が、涙を流し私に救いを求めて来た。

「お姉様!私、死にたくないわ!」


 
 と同時に、王子も焦り喚き出した。

「じ、次期王はこの俺だ。こんなの認められるか!」

 そう言って二人は暴れ叫んだが…その声ごと、二人は泉の底へと姿を消した─。



 その後…王子が姿を消した為、特例として弟の王子が次期王の候補に選ばれる事に。

 そしてその妃として隣に立つのが、残った妃候補の私だ。



 あの王子は不正解の義妹を選びあんな結果になった、だから残った私は…つまりはそう言う事である。



「君が僕の元に来てくれてから体の調子も良くなったし、気持ちも前向きになれた。今の自分なら次期王としてやっていける気がするよ。」

「守護神が、あなたと私にこの国を任せよう…そう、思ってくれたからじゃないでしょうか。」



 そして、私達の儀式は見事に成功した。



 儀式後、私は泉の底をじっと見たが…あの二人の姿は、全く見えないのだった。



 私を選んでいれば、王子…あなたはその命を失わずに済んだわ。

 でも、あなた相手に選ばれてもすぐにこちらからお断りだったでしょう─。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっとやっていれば良いわ。※暗い復讐、注意。

BBやっこ
恋愛
幼い頃は、誰かに守られたかった。 後妻の連れ子。家も食事も教育も与えられたけど。 新しい兄は最悪だった。 事あるごとにちょっかいをかけ、物を壊し嫌がらせ。 それくらい社交界でよくあるとは、家であって良い事なのか? 本当に嫌。だけどもう我慢しなくて良い

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

バカ二人のおかげで優秀な婿と結婚できるお話

下菊みこと
恋愛
バカ二人が自滅するだけ。ゴミを一気に処分できてスッキリするお話。 ルルシアは義妹と自分の婚約者が火遊びをして、子供が出来たと知る。ルルシアは二人の勘違いを正しつつも、二人のお望み通り婚約者のトレードはしてあげる。結果、本来より良い婿を手に入れることになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたが一番大切なのに

頭フェアリータイプ
恋愛
公爵令嬢で王太子の婚約者なロザリーナは突然婚約破棄されてしまう。 婚約破棄されてしまったロザリーナは一体どうなってしまうのか。

婚約破棄は先手を取ってあげますわ

浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。 ※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。  更新は飛び飛びになります。

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

処理中です...