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強欲な妹に婚約者を奪われ代わりにあるモノを貰いましたが、おかげで幸せになれました。
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「お願い、彼が欲しいの!」
そう、大声で叫ぶ妹。
「…またなの?」
「だって、どうしても欲しいのよ─!」
強欲な妹が欲しがったのは、私の婚約者だった。
昔からこの子は、人の物を何でも欲しがった。
特に姉の私に対し、その傾向が強かった。
お姉様の物は私の物、それが当たり前だという考え方をしていたのだ。
両親がそれを咎めず妹の言う事を聞き何でも与えたのも、そんな考えに拍車をかけたのよね…。
「いいでしょ、代わりに私のおもちゃをあげるから!」
「…おもちゃですって?」
「そうよ。私、あれはもう要らないの。」
おもちゃって、まさか…!?
妹が私に見せたのは、とんでもないものだった─。
それから少しして─。
「お姉様、婚約者をくれるって本当?」
「そうよ。でもこれで最後、あなたにはもう何もあげない。」
「な、何で!?」
「私、何もかも捨てるから。あなたがくれたもの、あれだけあれば十分なの。」
「はぁ?変なお姉様、あんな壊れたおもちゃのどこがいいんだか。でも分かったわ、約束する。そんなおもちゃ、また返って来ても困るだけだし?」
そう言って、妹は満足した様に部屋を出て行った。
それを見送った私は、妹がそんなと言ったおもちゃを見た。
「…何がおもちゃよ、聞いててゾッとする。」
でも本当にいいのかしら、このまま私が貰ってしまっても─。
「…まぁ、それはあなたが決める事よね?」
そんな私の言葉に、まだ返事はなかった─。
***
「…それで、あなたを私のものにする事をお姉様が許してくれたの!」
「そうか、これであいつとはお別れだな。全く、家同士の約束にはうんざりだ…。俺は婚約するなら君が良かったから、本当に嬉しいよ!」
「それでお姉様にはね、代わりにあなたから貰ったおもちゃをあげておいたから。」
「…ああ、あれか。」
「あんまり遊びすぎて壊れたから、もう要らなくなったのよ。」
「そうか、また新しいのが欲しくなったら言うんだぞ?俺がいくらでも買って来てやるから。」
「ええ─!」
それから幾日が過ぎ、今日は私と彼の婚約パーティー。
お姉様も招待したのに、やる事があるからと断られた。
「強がりを言って…自分が惨めになるからこれないだけだ、気にするな。」
「そうね。」
するとその時、突如会場に憲兵たちが押しかけて来た。
「お前たちを捕えろとの命が下っている、大人しくしろ!」
「な、何だ急に!俺たちが何をしたって言うんだ!?」
「お前たち、奴隷を買って散々いたぶっただろう?」
「それが何、奴隷を買う事の何がいけないのよ!」
「その奴隷が、誰かというのが問題なのよ。」
「お、お姉様!それに、あんたは…!?」
「あなたがおもちゃだと言っていたぶった相手は、賊に襲われ行方不明になっていた隣国の王子です。」
「う、嘘!?」
「嘘ではありません。彼はその際頭をぶつけ、記憶を失い口もきけない状態になっていたところを奴隷商に引き取られ奴隷市場で売られた。そしてそれを買ったのが、あなたが一緒になろうと言う私の元婚約者。」
「そ、そんな…。」
「俺は彼女の手厚い看護を受け、過去の傷だけでなくその女から受けた傷も治り話せるようになり、記憶も取り戻すことができた。女…よくも俺を、おもちゃだなどと言っていたぶってくれたな?そんなお前には、俺と同じ痛みを受けてもらおう。毎夜鞭で打たれ続ける痛みを─。それにそこの男もだ。その女と一緒になって俺を傷つけた事、決して許しはしない。」
王子の言葉に、二人は真っ青になり震え上がって居る。
「あなたたちは、ずっと前からそういう仲だったんですね。王子の話から、それがよく分かりました。前にも言ったけど、私は何もかも捨てる…その中には元婚約者と妹、あなたたちも入っているわ。大人しく捕まって罰を受ければいいわ。」
「お、お姉様!」
「頼む、許してくれ!」
二人は涙を流し許しを乞うたが、私はそれを冷ややかな目で見つめるだけだった。
その後捕らえられた二人は牢に入れられる事になり、罰として鞭打ちの刑に処された。
そしてその罰が終わったら、二人は奴隷として売られる事が決まっている。
奴隷をおもちゃと呼びいたぶってきた自分たちが、今度はその立場になるとは…まさに自業自得ね。
一方の私は二人を捨て、家を捨て、国を捨て王子の元へ嫁ぐ事に─。
あの時私に看病され、声が出せる様になった王子はこう言った。
『君が俺の新しい飼い主か?…俺は、君みたいに優しい娘のおもちゃになら喜んでなろう。だから、そんなに悲しい顔をしないでくれ。』
そしてそれを聞いた私は、全てを捨てる決心がついたのだ…血を分けた妹でさえも、ね─。
「…どうしたんだ?もしや、国が懐かしいのか?」
「いえ、あなたが初めて言葉をくれた時の事を思い出していたんです。私はあの時から決めてました…あなたは私のもの、あなたさえいればそれで十分だと。」
「俺もだ。君は俺のものだ、君さえいればそれでいい。」
そう言って王子は優しく微笑み、私を強く抱きしめるのだった─。
そう、大声で叫ぶ妹。
「…またなの?」
「だって、どうしても欲しいのよ─!」
強欲な妹が欲しがったのは、私の婚約者だった。
昔からこの子は、人の物を何でも欲しがった。
特に姉の私に対し、その傾向が強かった。
お姉様の物は私の物、それが当たり前だという考え方をしていたのだ。
両親がそれを咎めず妹の言う事を聞き何でも与えたのも、そんな考えに拍車をかけたのよね…。
「いいでしょ、代わりに私のおもちゃをあげるから!」
「…おもちゃですって?」
「そうよ。私、あれはもう要らないの。」
おもちゃって、まさか…!?
妹が私に見せたのは、とんでもないものだった─。
それから少しして─。
「お姉様、婚約者をくれるって本当?」
「そうよ。でもこれで最後、あなたにはもう何もあげない。」
「な、何で!?」
「私、何もかも捨てるから。あなたがくれたもの、あれだけあれば十分なの。」
「はぁ?変なお姉様、あんな壊れたおもちゃのどこがいいんだか。でも分かったわ、約束する。そんなおもちゃ、また返って来ても困るだけだし?」
そう言って、妹は満足した様に部屋を出て行った。
それを見送った私は、妹がそんなと言ったおもちゃを見た。
「…何がおもちゃよ、聞いててゾッとする。」
でも本当にいいのかしら、このまま私が貰ってしまっても─。
「…まぁ、それはあなたが決める事よね?」
そんな私の言葉に、まだ返事はなかった─。
***
「…それで、あなたを私のものにする事をお姉様が許してくれたの!」
「そうか、これであいつとはお別れだな。全く、家同士の約束にはうんざりだ…。俺は婚約するなら君が良かったから、本当に嬉しいよ!」
「それでお姉様にはね、代わりにあなたから貰ったおもちゃをあげておいたから。」
「…ああ、あれか。」
「あんまり遊びすぎて壊れたから、もう要らなくなったのよ。」
「そうか、また新しいのが欲しくなったら言うんだぞ?俺がいくらでも買って来てやるから。」
「ええ─!」
それから幾日が過ぎ、今日は私と彼の婚約パーティー。
お姉様も招待したのに、やる事があるからと断られた。
「強がりを言って…自分が惨めになるからこれないだけだ、気にするな。」
「そうね。」
するとその時、突如会場に憲兵たちが押しかけて来た。
「お前たちを捕えろとの命が下っている、大人しくしろ!」
「な、何だ急に!俺たちが何をしたって言うんだ!?」
「お前たち、奴隷を買って散々いたぶっただろう?」
「それが何、奴隷を買う事の何がいけないのよ!」
「その奴隷が、誰かというのが問題なのよ。」
「お、お姉様!それに、あんたは…!?」
「あなたがおもちゃだと言っていたぶった相手は、賊に襲われ行方不明になっていた隣国の王子です。」
「う、嘘!?」
「嘘ではありません。彼はその際頭をぶつけ、記憶を失い口もきけない状態になっていたところを奴隷商に引き取られ奴隷市場で売られた。そしてそれを買ったのが、あなたが一緒になろうと言う私の元婚約者。」
「そ、そんな…。」
「俺は彼女の手厚い看護を受け、過去の傷だけでなくその女から受けた傷も治り話せるようになり、記憶も取り戻すことができた。女…よくも俺を、おもちゃだなどと言っていたぶってくれたな?そんなお前には、俺と同じ痛みを受けてもらおう。毎夜鞭で打たれ続ける痛みを─。それにそこの男もだ。その女と一緒になって俺を傷つけた事、決して許しはしない。」
王子の言葉に、二人は真っ青になり震え上がって居る。
「あなたたちは、ずっと前からそういう仲だったんですね。王子の話から、それがよく分かりました。前にも言ったけど、私は何もかも捨てる…その中には元婚約者と妹、あなたたちも入っているわ。大人しく捕まって罰を受ければいいわ。」
「お、お姉様!」
「頼む、許してくれ!」
二人は涙を流し許しを乞うたが、私はそれを冷ややかな目で見つめるだけだった。
その後捕らえられた二人は牢に入れられる事になり、罰として鞭打ちの刑に処された。
そしてその罰が終わったら、二人は奴隷として売られる事が決まっている。
奴隷をおもちゃと呼びいたぶってきた自分たちが、今度はその立場になるとは…まさに自業自得ね。
一方の私は二人を捨て、家を捨て、国を捨て王子の元へ嫁ぐ事に─。
あの時私に看病され、声が出せる様になった王子はこう言った。
『君が俺の新しい飼い主か?…俺は、君みたいに優しい娘のおもちゃになら喜んでなろう。だから、そんなに悲しい顔をしないでくれ。』
そしてそれを聞いた私は、全てを捨てる決心がついたのだ…血を分けた妹でさえも、ね─。
「…どうしたんだ?もしや、国が懐かしいのか?」
「いえ、あなたが初めて言葉をくれた時の事を思い出していたんです。私はあの時から決めてました…あなたは私のもの、あなたさえいればそれで十分だと。」
「俺もだ。君は俺のものだ、君さえいればそれでいい。」
そう言って王子は優しく微笑み、私を強く抱きしめるのだった─。
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