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婚約した王子に愛されなかった上に、毒を飲みこの世から消える事を命じられました…。
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幼い事から、王子と婚約する事が決まって居た私。
しかし私は、王子が望む美しい容姿を持った女に成長しなかった。
だがそれでも約束だからと言う事で、私は彼の婚約者として城に招かれた。
すると王子は、そんな私を無視し…自分好みの美しい娘を、愛人として自身の傍に置くようになった。
そして、王が偶然にも病に臥せったのをいい事に…彼女と仲良くしてばかりで、私を嫌い邪魔者扱いして来たのだ。
そうなってからと言うもの…私の食事はいつも愛人よりも質素なもので、おまけにゴミが入って居たりする事もあり…ドレスも彼女が飽きて着なくなった物をあてがわれるようになってしまった。
私は、そんな生活に何とか耐えて居たのだが…めげない私に痺れを切らした王子は、ある物を差し出すとこう言った。
「俺に捨てられる前に、お前自ら消えるがいい。これを使えば、俺の手を煩わせる事無くお前はあの世に逝く事が出来るぞ。」
王子が私に渡したのは、何と毒の入った小瓶だった。
それを見た私は…自分がそこまで彼に嫌われて居たのかと思い、ショックの余りその場に崩れ落ちた。
私に、自ら死ねと…?
そうすれば、自分はその愛人と結ばれる事が出来るから─?
私は、もうこの生活に疲れてしまった事もあり…それ以上何も考える事が出来ず、その瓶の蓋を開けた。
そして、中に入って居た毒を一口飲んだのだった。
しかし…私の身に、特にこれと言って何も変化はなかった。
何、王子が出鱈目を言っただけ…?
でも、彼の目は本気だった─。
その時…城の庭から、呻き声と陶器が割れる激しい音がした。
驚き駆け付けてみれば…仲良くお茶を楽しんで居た王子と愛人が、二人揃ってその場に倒れて居た。
青ざめ口から泡を吹く二人は、まるで私の代わりに毒でも飲んだかのようだった。
すると私の元に、王が病だと知らせを受け旅から戻った第二王子が駆け寄って来た。
そして倒れた二人を見て、やはりこうなったかと呟いた。
「兄は以前から、婚約者であるあなたが消えてくれればと願って居た。そしてそれを知った俺は、旅に出る前に自身に付けられた加護の半分をあなたに渡したのです。そうすれば、もしあなたに何かあっても大丈夫だから─。」
第二王子の話を聞き…私は、彼が旅立つ前に首飾りをくれた事を思い出した。
どうやら、それに彼の加護の半分が与えられて居たらしい。
「私は王子に毒を渡され、それを飲みましたが…あなたに頂いた加護の力で事なきを得たのですね。でも、その代わりに二人がこんな目に─。」
加護を持つ者に悪事を働こうとすれば、それはそんな事を企んだ本人に返る事になる。
つまり毒で私を死なせようとした王子と愛人は、口に含んだ紅茶が毒に代わり…それにより、私の代わりに命を落とす事になったと言う訳だ。
「兄も加護は授かって居ましたが…愛人を作り婚約者のあなたをを粗末に扱い続けた事で、その力が弱くなって居たのでしょう。そのせいで…俺のあなたを想う加護の力に負けてしまい、こう言う結果になったのだと─。」
「私を想う…?」
「俺は、幼いころからあなたに片思いをして居たのです。双子の弟と言う事で、生まれてくるのが少し遅かっただけであなたと結ばれる事が出来ず、悔しく思って居ました。なのに、兄はあなたを愛そうとはせず…俺なら、あなたを心から大事にするのにといつも考えて居ました。だから、せめて自身の加護を半分貰って欲しかったんです。あなたの誕生日を祝うと言う名目であのネックレスを贈ったのは、そんな想いがあったからです。」
弟君からの思わぬ告白に、私は胸を高鳴らせた。
死んで欲しいと思われて居た私を、ここまで愛してくれる方が居たとは─。
その後…王子と愛人の死は、その身分差から将来を悲観し服毒自殺を図ったと言う事で幕を下ろした。
王子の部屋から、毒の残りが見つかった事が大きな理由だったが…その毒で命を奪いたかったのは、本当は私なのだけれどね…。
でも弟君から、そんな忌まわしい出来事は全て忘れれば良いと言われた事もあり…私は、この件についてもうそれ以上何も言わなかった。
その後…私は弟君の婚約者となり、今も彼の加護に守られ城で暮らして居る。
もうゴミの入った食事を摂らなくても良いし、彼に贈られた真新しいドレスに身を包み…今は毎日がとても幸せよ─。
しかし私は、王子が望む美しい容姿を持った女に成長しなかった。
だがそれでも約束だからと言う事で、私は彼の婚約者として城に招かれた。
すると王子は、そんな私を無視し…自分好みの美しい娘を、愛人として自身の傍に置くようになった。
そして、王が偶然にも病に臥せったのをいい事に…彼女と仲良くしてばかりで、私を嫌い邪魔者扱いして来たのだ。
そうなってからと言うもの…私の食事はいつも愛人よりも質素なもので、おまけにゴミが入って居たりする事もあり…ドレスも彼女が飽きて着なくなった物をあてがわれるようになってしまった。
私は、そんな生活に何とか耐えて居たのだが…めげない私に痺れを切らした王子は、ある物を差し出すとこう言った。
「俺に捨てられる前に、お前自ら消えるがいい。これを使えば、俺の手を煩わせる事無くお前はあの世に逝く事が出来るぞ。」
王子が私に渡したのは、何と毒の入った小瓶だった。
それを見た私は…自分がそこまで彼に嫌われて居たのかと思い、ショックの余りその場に崩れ落ちた。
私に、自ら死ねと…?
そうすれば、自分はその愛人と結ばれる事が出来るから─?
私は、もうこの生活に疲れてしまった事もあり…それ以上何も考える事が出来ず、その瓶の蓋を開けた。
そして、中に入って居た毒を一口飲んだのだった。
しかし…私の身に、特にこれと言って何も変化はなかった。
何、王子が出鱈目を言っただけ…?
でも、彼の目は本気だった─。
その時…城の庭から、呻き声と陶器が割れる激しい音がした。
驚き駆け付けてみれば…仲良くお茶を楽しんで居た王子と愛人が、二人揃ってその場に倒れて居た。
青ざめ口から泡を吹く二人は、まるで私の代わりに毒でも飲んだかのようだった。
すると私の元に、王が病だと知らせを受け旅から戻った第二王子が駆け寄って来た。
そして倒れた二人を見て、やはりこうなったかと呟いた。
「兄は以前から、婚約者であるあなたが消えてくれればと願って居た。そしてそれを知った俺は、旅に出る前に自身に付けられた加護の半分をあなたに渡したのです。そうすれば、もしあなたに何かあっても大丈夫だから─。」
第二王子の話を聞き…私は、彼が旅立つ前に首飾りをくれた事を思い出した。
どうやら、それに彼の加護の半分が与えられて居たらしい。
「私は王子に毒を渡され、それを飲みましたが…あなたに頂いた加護の力で事なきを得たのですね。でも、その代わりに二人がこんな目に─。」
加護を持つ者に悪事を働こうとすれば、それはそんな事を企んだ本人に返る事になる。
つまり毒で私を死なせようとした王子と愛人は、口に含んだ紅茶が毒に代わり…それにより、私の代わりに命を落とす事になったと言う訳だ。
「兄も加護は授かって居ましたが…愛人を作り婚約者のあなたをを粗末に扱い続けた事で、その力が弱くなって居たのでしょう。そのせいで…俺のあなたを想う加護の力に負けてしまい、こう言う結果になったのだと─。」
「私を想う…?」
「俺は、幼いころからあなたに片思いをして居たのです。双子の弟と言う事で、生まれてくるのが少し遅かっただけであなたと結ばれる事が出来ず、悔しく思って居ました。なのに、兄はあなたを愛そうとはせず…俺なら、あなたを心から大事にするのにといつも考えて居ました。だから、せめて自身の加護を半分貰って欲しかったんです。あなたの誕生日を祝うと言う名目であのネックレスを贈ったのは、そんな想いがあったからです。」
弟君からの思わぬ告白に、私は胸を高鳴らせた。
死んで欲しいと思われて居た私を、ここまで愛してくれる方が居たとは─。
その後…王子と愛人の死は、その身分差から将来を悲観し服毒自殺を図ったと言う事で幕を下ろした。
王子の部屋から、毒の残りが見つかった事が大きな理由だったが…その毒で命を奪いたかったのは、本当は私なのだけれどね…。
でも弟君から、そんな忌まわしい出来事は全て忘れれば良いと言われた事もあり…私は、この件についてもうそれ以上何も言わなかった。
その後…私は弟君の婚約者となり、今も彼の加護に守られ城で暮らして居る。
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