上 下
92 / 188

妹と違い愛されない嫌われ聖女の私など要らないと、王によって追放処分を受けました…。

しおりを挟む
 この国には、聖女が二人居る。

 一人は姉の私、もう一人は妹だった。

 私達はほぼ同時期に聖女の力に目覚め、共に神殿に迎え入れられ…私達は、姉妹で力を合わせこの国の為に祈りを捧げて来た。

 そしてそんな日々は、これから先も続く…そう、私は思って居た。

 

 だが…王が妹を見初め、妹も王を好きになった事で事態は一変した。

 王は、妹だけを特別扱いし…やがて、この国に聖女は二人も要らない…姉の私は聖女の座を退く様にと命じた。

 そして妹も、王の言う通りにすべきだと私に言って来る様になった。



「お前は聖女の癖に、地味で暗い。そのせいで、民から全く好かれてないじゃないか。そんな者を彼女の傍に置いておけば、彼女まで悪い目で見られてしまうだろう─!」
 
 確かに、私は妹と違って可愛くも明るくも無く…加護を貰いにやって来た民達は、いつも妹を選んで居た。

 でも、妹が忙しかったり不在の場合は私が代わりに加護を授けたが…その時は、皆心なしかガッカリして居た─。



「その様子は…お前にも心当たりがあるんだろう?お前は彼女と違い、民から愛されて居ないんだ。そんな聖女、この国にはもう必要ない。」

「で、ですが…私はこれからも妹と─」

「お姉様…この国を守る事くらい、私一人でも出来ます!私の愛する王の命に逆らおうなど…いくらお姉様でも、決して許しません!」

 妹にまでそう言われ…私は言われた通り、聖女の座を退きこの国を出て行く事にした。

 昨夜見た、ある夢の事は何も言わず─。



 その後、私は隣国へと渡った。

 この国は、まだ聖女が存在しておらず…私はあの国の聖女の座こそ退いたが、その力はまだ健在で…それを、この国の為に役立てたかったのだ。

 そして、それを隣国の王に申し出れば…彼は私を大いに歓迎して下さった。

 また隣国の王は…自分が見たと言う、ある不思議な夢について語った。



「君がここに来る前の晩…俺は不思議な夢を見た。何やら大きな金色の獅子が出て来て、明日お前の運命の相手が城を訪ねて来る─。そしてその人物は、自分と同じ金の輝きを纏って居るからすぐ分ると言ったが…それは、まさに君の事だったんだね。君の身体からは、眩い輝きを感じる─。」

「金色の獅子は、あの国の守護神様です。そして私も、あの国を追放される前に不思議な夢を見ました。恋に溺れた妹は聖女としての力をやがて失う…だからこそ、私がこの国に必要だが…私はこの国から追放される事になる。そうなったら隣国に行き…王に会う様に─。なぜなら…彼こそが私の運命の相手なのだから、と─。」

 そう話し、私はニコリと笑みを浮かべ隣国の王を見つめ…彼もまた、そんな私に優しく微笑み…そしてそっと抱き締めてくれたのだった─。



 それから私は、この隣国の聖女としてこの国の為に祈りを捧げ…と同時に、王の妃としても彼の傍で過ごす事になった。

 そんな私は、愛され聖女のお妃などと隣国の民達から呼ばれ、とても大事にされる事に─。

 それは、あの国ではまず無かった事で…少し気恥ずかしいが、私はそれを嬉しく思って居る。



 一方、聖女が妹だけになったあの国は…王との恋に溺れた妹が、聖女としての役目を果たさなくなり…その上、自分と王の幸せだけを祈る様になった。

 すると、その我欲の強さが聖女の力を上回り…守護神様の仰った通り、妹はついに聖女の力を失くしてしまった。



 そのせいで、あの国では疫病や天災が発生し…今や民の殆どがあの国から出て行ってしまい、国は崩壊寸前だと言う。

 その責任を取るべく、妹は聖女の座を剥奪され処刑される事になり…王も弟君に王の座を譲り、城の地下に一生幽閉される事が決まったらしい。
 
 そうなって、あの二人は私を追放した事を心から悔いて居るそうだが…最早、何もかもが遅いのだった─。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

婚約破棄と言いますが、好意が無いことを横においても、婚約できるような関係ではないのですが?

迷い人
恋愛
婚約破棄を宣言した次期公爵スタンリー・グルーバーは、恥をかいて引きこもり、当主候補から抹消された。 私、悪くありませんよね?

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

バカ二人のおかげで優秀な婿と結婚できるお話

下菊みこと
恋愛
バカ二人が自滅するだけ。ゴミを一気に処分できてスッキリするお話。 ルルシアは義妹と自分の婚約者が火遊びをして、子供が出来たと知る。ルルシアは二人の勘違いを正しつつも、二人のお望み通り婚約者のトレードはしてあげる。結果、本来より良い婿を手に入れることになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

処理中です...