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生き別れた妹に残りの人生を入れ替えろと迫られ、私は平民として生きる事になりました。
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愛する人と結婚しその暮らしにも慣れた頃、私そっくりの女が訪ねて来た。
驚く私に、自分はあなたの妹で…幼い頃生き別れになったと彼女は告げた。
確かに私には、幼い誘拐され行方知れずになった妹が居る。
まさか、こんな形で向こうから会いに来てくれるとは─。
再会に喜び抱き着こうとする私だったが、妹はそれを鬱陶しそうに振り払った。
そして、人が苦労して生きて来たのにあなたは随分良い暮らしをして居るのねと部屋の中を見渡した。
確かに、私はこれまで何不自由なく育って来て…そして、名家のご子息である彼の妻にも迎えられた。
特に大きな苦労をした事は無く、彼女の言葉に上手く返事を返せなかった。
すると妹は、誘拐され隙を見て逃げたが…幼く元の家も分からない私は通りかかった平民に、自分達の子供になれと連れて行かれしまった。
そこでこき使われ大変な苦労をし…そして近く好みでもない男と結婚する羽目になり、己の人生に嫌気が差して居ると言った。
そして妹は、そんな私を哀れと思うなら…今迄楽してきた分、今度はあなたが苦労をすると良い─。
あなたの残りの人生と、私の残りの人生を入れ替えろと迫って来た。
つまり、私が平民として今後生きて行き…妹が彼の妻として暮らして行くという事─?
すると、丁度そこに夫が帰宅して来た。
私は彼にこの状況を何とかして貰おうと頼んだが…しかし夫はそんな私を無視し、近くに居た妹の肩を抱いた。
実は、妹は私よりも先に夫に声をかけて居たようで…これまでにも二人で何度か会って居るらしい。
そして妹の境遇を聞いた夫は、そんな妹に同情し…酒の勢いもあり、ついつい肉体関係を持ってしまったと言う。
最初は遊びだったが…お前よりも少し年も若いし、その分良い身体をして居てすっかり気に入ってしまったと妹にだらしない顔を見せる夫は、もう私の愛した人では無かった。
すると夫は、妹をここまで追い込んだのは彼女の現状を知りながら見て見ぬふりをしたお前が悪いと責めて来た。
しかし私は、たった今妹の現在について知ったばかりだ。
どうやら妹は、夫には嘘の情報を拭き込んで居るらしい。
そんな妹に、私は非難の目を向けたが…夫が彼女を庇った為、それ以上の事は出来なかった。
すると夫は、今まで苦労した彼女は俺が幸せにしたい…お前は妹の頼み一つくらい聞けないのか?
今後妹の代わりに平民として生きる事で、彼女救ってやれと妹の味方に付くのだった。
結局、私は二人によって無理矢理家から叩き出され…その際妹に、嫁ぐ予定の殿方の元へ行くよう地図だけを渡されるのだった。
私は仕方なく、それだけ持ってその場を去ったが…彼女に好みでないと言い切られる殿方とは、一体どんな人物なのか─。
そして辿り着いたのは、大きな農場だった。
そしてそこでは、その人物と思われる方が農作業をして居た。
だがその顔を見た瞬間、私は思わぬ再会に驚く事となった。
と言うのも、彼は私が通って居た学園に転入して来た平民の男子生徒だったからだ。
彼は賢く良く本を読んで居たが、土いじりも好きらしく…学園の余って居る地に花壇を作り世話をしており、花が好きな私は時々顔を出して居た。
そして彼と仲良くなり、花が満開になると彼に一綸花を貰い押し花にして居たっけ。
でも当時私は夫であるあの人と既に交際しており、それ以上の仲になる事は無かったが…彼と過ごした穏やかな時間は良い思い出だった。
すると彼も、そんな私に気付いたようで…来るはずだった妹は現れず、懐かしい私が訪ねて来た事に驚いて居た。
そんな彼に、私は妹や夫に受けた仕打ちを話した。
すると彼は、彼女はずっと自分は平民では無いと言って居たが本当だったか…。
彼女は泥で汚れる自分を汚いだの汗臭いだの言い、約束の日になっても嫁いでこなかったのだと妹について教えてくれた。
私は妹に代わりその非礼を詫びたが…彼は、そんな彼女と一緒になっても上手く行かなかったから構わないと言った。
むしろ、家を追い出された私が心配だ…行く当てが無いなら、先の事が決まるまでここでゆっくりして行って構わないと優しくしてくれた。
確かにこの農場には色んな野菜や植物があって、見て居て落ち着くわ。
それに、私は土いじりも苦では無いし…ここでお世話になって居る間、彼の手伝いを出来たらいい。
そう思った私は、有難くその言葉に甘える事に─。
そして、それから数週間が経った頃…夫が詐欺に遭い、そのせいで事業が潰れ破産したと知らせが届いた。
だが私は、家を出てすぐに夫に正式に離縁されており…そのおかげと言っては何だが、特に被害を受ける事は無かった。
むしろそうなったのは、夫と居た妹の方で…彼女は妻の私と勘違いされ、借金のカタに娼館に娼婦として売り飛ばされてしまった。
そうなって、私と残りの人生を交換した事を心底悔いたらしいが…全てが遅いのだった。
そして夫は残りの借金を返すよう、借金取りに追われ…その後は行方知れずとなって居る。
一方、私はと言うと…農場での生活がすっかり気にってしまい、また彼と離れがたくなってしまって居た。
そこで私は、彼に妻に貰って欲しいと願い出た。
これまでの事情を知った父は、今度は幸せになれ…自分の人生を生きて行けと言ってくれて居るし、家は一番上の兄が継いで居るから何も問題ない。
すると彼は、自分と居たらずっとこうして土と触れ合い、ここに来た時のような綺麗なドレスも着られないがそれでも良いのかと尋ねて来たが…あなたが育てる花以上に綺麗と思う物は無いし、今の自分が送りたいのはあなたの過ごす人生だと言えば…彼は漸く私の気持ちを受け入れてくれた。
実は、彼は学園に居た時から私に淡い恋心を抱いて居たが…身分が違う事で、その気持ちを心の底に封印して居たらしい。
それがこうして叶った今…彼は今まで以上に私を大事にし、そのおかげで私は毎日幸せな日々を送って居るわ─。
驚く私に、自分はあなたの妹で…幼い頃生き別れになったと彼女は告げた。
確かに私には、幼い誘拐され行方知れずになった妹が居る。
まさか、こんな形で向こうから会いに来てくれるとは─。
再会に喜び抱き着こうとする私だったが、妹はそれを鬱陶しそうに振り払った。
そして、人が苦労して生きて来たのにあなたは随分良い暮らしをして居るのねと部屋の中を見渡した。
確かに、私はこれまで何不自由なく育って来て…そして、名家のご子息である彼の妻にも迎えられた。
特に大きな苦労をした事は無く、彼女の言葉に上手く返事を返せなかった。
すると妹は、誘拐され隙を見て逃げたが…幼く元の家も分からない私は通りかかった平民に、自分達の子供になれと連れて行かれしまった。
そこでこき使われ大変な苦労をし…そして近く好みでもない男と結婚する羽目になり、己の人生に嫌気が差して居ると言った。
そして妹は、そんな私を哀れと思うなら…今迄楽してきた分、今度はあなたが苦労をすると良い─。
あなたの残りの人生と、私の残りの人生を入れ替えろと迫って来た。
つまり、私が平民として今後生きて行き…妹が彼の妻として暮らして行くという事─?
すると、丁度そこに夫が帰宅して来た。
私は彼にこの状況を何とかして貰おうと頼んだが…しかし夫はそんな私を無視し、近くに居た妹の肩を抱いた。
実は、妹は私よりも先に夫に声をかけて居たようで…これまでにも二人で何度か会って居るらしい。
そして妹の境遇を聞いた夫は、そんな妹に同情し…酒の勢いもあり、ついつい肉体関係を持ってしまったと言う。
最初は遊びだったが…お前よりも少し年も若いし、その分良い身体をして居てすっかり気に入ってしまったと妹にだらしない顔を見せる夫は、もう私の愛した人では無かった。
すると夫は、妹をここまで追い込んだのは彼女の現状を知りながら見て見ぬふりをしたお前が悪いと責めて来た。
しかし私は、たった今妹の現在について知ったばかりだ。
どうやら妹は、夫には嘘の情報を拭き込んで居るらしい。
そんな妹に、私は非難の目を向けたが…夫が彼女を庇った為、それ以上の事は出来なかった。
すると夫は、今まで苦労した彼女は俺が幸せにしたい…お前は妹の頼み一つくらい聞けないのか?
今後妹の代わりに平民として生きる事で、彼女救ってやれと妹の味方に付くのだった。
結局、私は二人によって無理矢理家から叩き出され…その際妹に、嫁ぐ予定の殿方の元へ行くよう地図だけを渡されるのだった。
私は仕方なく、それだけ持ってその場を去ったが…彼女に好みでないと言い切られる殿方とは、一体どんな人物なのか─。
そして辿り着いたのは、大きな農場だった。
そしてそこでは、その人物と思われる方が農作業をして居た。
だがその顔を見た瞬間、私は思わぬ再会に驚く事となった。
と言うのも、彼は私が通って居た学園に転入して来た平民の男子生徒だったからだ。
彼は賢く良く本を読んで居たが、土いじりも好きらしく…学園の余って居る地に花壇を作り世話をしており、花が好きな私は時々顔を出して居た。
そして彼と仲良くなり、花が満開になると彼に一綸花を貰い押し花にして居たっけ。
でも当時私は夫であるあの人と既に交際しており、それ以上の仲になる事は無かったが…彼と過ごした穏やかな時間は良い思い出だった。
すると彼も、そんな私に気付いたようで…来るはずだった妹は現れず、懐かしい私が訪ねて来た事に驚いて居た。
そんな彼に、私は妹や夫に受けた仕打ちを話した。
すると彼は、彼女はずっと自分は平民では無いと言って居たが本当だったか…。
彼女は泥で汚れる自分を汚いだの汗臭いだの言い、約束の日になっても嫁いでこなかったのだと妹について教えてくれた。
私は妹に代わりその非礼を詫びたが…彼は、そんな彼女と一緒になっても上手く行かなかったから構わないと言った。
むしろ、家を追い出された私が心配だ…行く当てが無いなら、先の事が決まるまでここでゆっくりして行って構わないと優しくしてくれた。
確かにこの農場には色んな野菜や植物があって、見て居て落ち着くわ。
それに、私は土いじりも苦では無いし…ここでお世話になって居る間、彼の手伝いを出来たらいい。
そう思った私は、有難くその言葉に甘える事に─。
そして、それから数週間が経った頃…夫が詐欺に遭い、そのせいで事業が潰れ破産したと知らせが届いた。
だが私は、家を出てすぐに夫に正式に離縁されており…そのおかげと言っては何だが、特に被害を受ける事は無かった。
むしろそうなったのは、夫と居た妹の方で…彼女は妻の私と勘違いされ、借金のカタに娼館に娼婦として売り飛ばされてしまった。
そうなって、私と残りの人生を交換した事を心底悔いたらしいが…全てが遅いのだった。
そして夫は残りの借金を返すよう、借金取りに追われ…その後は行方知れずとなって居る。
一方、私はと言うと…農場での生活がすっかり気にってしまい、また彼と離れがたくなってしまって居た。
そこで私は、彼に妻に貰って欲しいと願い出た。
これまでの事情を知った父は、今度は幸せになれ…自分の人生を生きて行けと言ってくれて居るし、家は一番上の兄が継いで居るから何も問題ない。
すると彼は、自分と居たらずっとこうして土と触れ合い、ここに来た時のような綺麗なドレスも着られないがそれでも良いのかと尋ねて来たが…あなたが育てる花以上に綺麗と思う物は無いし、今の自分が送りたいのはあなたの過ごす人生だと言えば…彼は漸く私の気持ちを受け入れてくれた。
実は、彼は学園に居た時から私に淡い恋心を抱いて居たが…身分が違う事で、その気持ちを心の底に封印して居たらしい。
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