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王子殺しの罪で牢送りとなり冤罪を訴える私に、思いがけない幸せが舞い込んで来ました。

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「お姉様…第二王子を毒殺ようとしたわね!」

「違うわ、いつものように薬湯を飲んで頂こうと─」

「嫌だわ、いつも毒を飲ませていたって事!?あなたは犯罪者よ!」

 そんな妹の叫び声を聞き駆けつけた兵によって、私は捕らえられた。



 そして─。

「毒使いの悪女め…婚約破棄の後、お前を地下牢に幽閉する。俺とお前の妹の監視の元、二度と悪さができないようにしてやるからな。」

 私は、婚約者の第一王子によって地下牢へと押し込められてしまうのだった─。



「今日の食事よ。」

「ねぇ、第二王子はどうされているの?ちゃんと薬を飲んでらっしゃる?」

「私がお世話をしてるわ。」

「あの方の薬の配合は特別なのよ、だから─」

「うるさいわね、殺そうとしたあなたが偉そうな口を利かないで!」



 第二王子を気に掛ける私に、妹は私にカビの生えたパンを投げつけその場を去って行った。



 私はそんな事してない…あなたが嘘を付いただけじゃない!

 私は冤罪でここに入れられているのよ!?



 しかしその妹が、現在私の役目を担っているのね。

 あの子に婚約者の座も役目も奪われ…私は、一生ここから出られないんだろうか─。



*** 



 お姉様がついに私の前から消えたわ…。

 あの人は薬師としても魔力持ちとしても、とても優れた人だった。

 そしてそれがこの城の王の目に留まり、第一王子の婚約者として迎え入れられる事になった。



 この国の第二王子は病気がちだから、お姉様の薬師としての力を借りたいと言うのと…優れた魔力を持った娘が欲しいと言うのが大きな理由だろう。



 でも私だって薬師の真似事は出来るし、魔力だって少しはある…このままお姉様のお世話係で収まって居たくは無いのよ!



 だから嘘でお姉様を陥れ、牢へ追いやったが…私が居れば何も問題なしよ。

 そう、思ってたのに…何で私が捕らえられてるのよ─!?




「お前を、もう一度俺の婚約者にしてやる。」

 そう言って私を牢から出し、自室へと招いたのは元婚約者の第一王子だ。

 私に別れを告げあんな事をしておいて、彼は何事もなかったかのように私に笑顔を向けた。



「俺と復縁出来るなど、光栄な事だぞ?」

「…嫌です、お断りします。」

「な、何!?」

「あなたは私を愛してはいない。私がそれに応じなけらば、この城でのあなたの立場が悪くなるから焦って居るのよね?」

「そ、それは…。」

 私の言葉に、王子は途端に狼狽えた。



「私はやはり冤罪だった…。なのに妹と一緒になって地下牢へ幽閉してしまったんですもの…大問題ですよね?それに、あなたにはもう一つの罪がある。それは─…。」



「離してよ、引っ張らないで!」

 すると、兵に連行された妹が部屋に入って来たが…そのすぐ後に、第二王子が入って来た。



「君が俺の世話をするようになってから、ちっとも回復の兆しが見えず困って居た。君の姉が毒を用いて俺を殺そうとしたなんて、君の嘘だろう?むしろ、俺は君に殺されそうだったんだが?」

 第二王子に睨まれた妹は、涙を浮かべ言い訳を始めた。

「ち、違うんです。もう少し薬の量を増やせばきっと善くなるはずで─」

「ならないわ。あなたは勘違いして居るけれど…私が第二王子に用意していたのは、ただの薬湯じゃないの。私の魔力を加えた一種の魔法薬なの。だから、あなたに同じ物が作れる訳が無いのよ。あなたが毒だとわめいた時の薬…あれには私の魔力は入って無かった。代わりに入ってたのはあなたの魔力…あれはあなたがすり替えた偽薬だった事はもう分かって居るわ。」

「そ、それは…。」

「あなたは私を陥れる事で、第一王子と結ばれたかったんでしょう?でもね…この人はそんな価値のある素敵な人じゃないから。むしろ…あなたと同じ犯罪者よ。」



「俺の体の不調は兄上、あなたが原因ですね。」

「い、いや…。」

「俺が口にするもの、触れるものの幾つかに毒物の反応がありました。その反応があったのは、どれもこれもあなたが差し入れた物ばかりです。」

「あなたは、病弱だけど賢い第二王子を疎ましく思って居て…そしてそんな彼を私の存在も邪魔だった。だから、妹の嘘に敢えて乗っかったのよ。」

「だが俺が奇跡的に回復し事の真相が明らかになりそうになると、手のひらを返して彼女を助けた。それを手柄にし自分の罪を隠し…彼女に復縁を迫ったんだ。」



 全てお見通しだと言う第二王子と私の前に、第一王子は最早言葉が出ないようだ。

「だからあなたのような犯罪者とは、絶対に復縁しませんから。」」

「その二人には、殺人未遂と虚偽の罪で牢に入って貰おう。」

「そ、そんなぁ!」

「待ってくれ、考え直してくれ!」



 二人は必死に抵抗するも、すぐに駆け寄った兵に牢へと連れて行かれた。



 その後、妹は私がかつて居た牢に幽閉された。

 だが私と違うのは、死ぬまでそこに入って居なければならない事だ。



 そして第一王子は、王位を剥奪された上に他国へと追放に…。

 これは、再び第二王子に危害を加える事が無いようにとの措置であった。



 すると第二王子は私の魔法薬で完全に健康を取り戻し、次期王としての未来が約束される事に─。



「君を無事に牢から救い出せて良かった。君が俺を殺そうとするはずがないと信じていた。だから早く君を助けたいと願ったら、不思議と体が元気になって行ったんだ。」

「きっと、あなたの身体に残っていた私の魔力がそうさせたんでしょう。」

「成程…。」


 
 そして第二王子は、私の手を取りこう言った。

「今まで君は、俺の世話をする為に力を貸してくれてたけれど…今度は俺の妃として、この国を一緒に盛り立てて行ってくれないか?」



 私は驚きつつも、牢から救い出してくれた彼に己の人生を預けても良いと思い…喜んでその気持ちに応えるのだった─。
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