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自分をお姫様と思い込んでる妹が、私の愛する騎士様を狙って居ます──!

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 私の妹は、自分をお姫様だと思い込んでいる。

 それもこれも、両親が顔の可愛い妹を甘やかし育てたのが原因だ。



 世界で一番可愛いお姫様と、赤子の頃から毎日言われてれば、そう思っても仕方ないかも知れないけれど…もう子供じゃないのだから、現実を見なさいよ…。

 姉の私は、そんなふうに冷ややかな目で妹を見ていた。



 だが…そんな妹を、これ以上放置しておく事は出来ないと思う様に─。

 というのも…お姫様の自分が望んだものは、何でも手に入ると思った妹が、人様の婚約者や恋人にちょっかいを出し始めたからだ。



「…いい加減にしなさい!あなたはお姫様じゃないの。というか、お姫様でもこんな事しちゃ駄目なの!」

「…じゃあ、他の人に迷惑かけないならいい?」

「…え?」

「お姉様の大好きな騎士様…あの人を私に頂戴?それなら、言う事聞くわ。」

 

 その騎士様と言うのは…学園時代の先輩で、今はお城の騎士団に所属している彼の事だった。
 
「お姫様には、それを守る騎士様が居て当然よね?だったら、私もそういう人が欲しいわ。」

「あ、あなたには別の婚約話が来てたじゃない!」

「でも…彼の方が素敵だもの!」

 

 そしてその日から…妹による、彼への猛アプローチが始まった。

 彼の家に押しかけ彼を待ち伏せしたり、色んな物を送り付けたり…時には、騎士団の皆が居る演習場まで押しかけようとしたり…私が、何度必死に止めた事か─。

 このままでは、彼の迷惑にしかならない…。

 でも、この子は私の言う事など聞かないし…一体、どうしたら─。



 しかし、それはあっという間に解決した。

 それは…妹の婚約が決まったからだ。

「私が欲しいのは、婚約者でなく騎士様よ!」

 妹の言葉に、両親は済まなさそうにこう言った。

「実は…お前にお金をかけすぎたせいで、この家には借金があって…。それを知った相手が、それを肩代わりしてやる代わりに、お前と婚約させろと言って来て…。」

「そんな…。借金くらい、どうにかならないの!?」



「無理よ。借金どころか…あなたに対し、慰謝料まで請求されてるんだから。」

「お姉様…慰謝料って、何…?」

「それは、俺が説明しよう。」


 
 現れたのは、妹が欲しいと言って居た騎士様…私の愛する彼だった。

「お前が家に押しかけたり、訳の分からない物を贈り付けたり…そのせいで、俺は心身共にすっかり疲弊してしまった。それに対し、慰謝料を請求する!お前のような自分を本当の姫だと思う頭のおかしい女、誰が好きになるか…気持ち悪いだけだ!そもそも…俺が好きなのは、この彼女だけなのに─!」



 突然の彼の告白に、妹は真っ青な顔になり…反対に私は、真っ赤な顔になった。



「俺は、しっかり者で常識人の彼女がずっと好きだった。もっと剣の腕を上げたら、彼女を婚約者にと思って居たが…お前の様な女に横槍を入れられるくらいなら、ここで彼女に気持ちを告げる事にする!と、言う事なんだが…どうか、俺の婚約者になってはくれないだろうか?」

「も、勿論です…!私も、あなたをずっと前から愛して居ました─!」



 固く抱き合う私達を見て、妹が涙を流し悔しがっている。

 すると…部屋のドアが開き、一人の男が入って来た。

 それは丸々太った醜い男で…妹の婚約者だと名乗った。



「嘘でしょう!?あなた、写真と全然違う─」

「何、あれはちょっとスマートに見せただけ…細かい事は気にするな。それよりお前、自分を姫だと思ってるんだって?俺は、そういう生意気な女をいたぶるのが大好きでな…。実に良い婚約者を手に入れたものだ。もうお前の家に金は渡してあるんだ、早く来い!」

「い、いやあぁ──!」



 男は泣き叫ぶ妹の腕を掴むと、この家を出て行ってしまった─。

 こうして、男の家に連れて行かれた妹は…今はお姫様どころか、その男に奴隷のように扱われ、屈辱の日々を送っているらしい。

 

 一方、私はと言うと…彼と正式に婚約し、今は彼の家に一緒に住んで居る。

 そして、普段は城やこの国を守る彼だが…家に居る時だけは私だけの騎士だと言って、私をお姫様の様に大事にしてくれる。

 素敵な彼に思い切り甘やかされ、愛され…私は、毎日がとても幸せよ─!
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