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私が聖女となり王子の相手に選ばれたら、姉と妹も聖女の力に目覚めたと言い出しました…。

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 私は、三姉妹の真ん中の娘だ。

 上の姉は美人で物怖じしない性格で、下の妹は可愛く明るかった。

 そんな二人に挟まれた私は…地味で大人しく、全く目立たない存在だった。



 しかし、その冴えない私に転機が訪れた。

 何と、ある日突然聖女の力に目覚めたのだ。

 更に…この国の王子に、婚約者になって欲しいと言われた。

 この国には、私以外聖女が一人も居ないから、だから声がかかったのだろうけれど…王子のお相手が、こんな地味な女でいいのかしら─。



 そしてそう思ったのは、私本人だけでなく…姉と妹も同じだった。

「あなた…聖女と言うだけで、図々しいんじゃない?」

「お姉様、身の程をわきまえた方が良いですよ?」

 二人はそう言って私を非難し…そして、その話を断る様に勧めて来た。


 
 その翌日…その二人が、こんな事を言い出した。

「どうやら私も、聖女の力に目覚めたみたい。」

「あらお姉様、奇遇ですね。私もなんです。」

 そして二人は、聖女になったからには自分も王子の婚約者となる権利があると言い、二人は私と共にお城に向かう事に─。

 確かに、二人からは聖なる力を感じるけれど…聖女と言うには、何かおかしい…。

 私は、二人に対しそんな事を思ったが…どちらも容姿に大変優れているし、選ぶのは王子だと考え様子を見る事にした─。



 そして、私たち三姉妹を見た王子だが…互いに火花を散らす姉と妹を無視し、真っ直ぐ私の元へと近づきこう言った。

「俺が婚約者に選ぶのは、本物の聖女の彼女だけだ。偽物のお前達に用は無い。」

「な、何を仰るのです王子!」

「そ、そうです、酷いですわ!」

 二人は、顔を真っ赤にして反論したが…私は、気になって居た事を質問した。

「二人共…身に付けている神具を外して下さい。その上で、聖女の力を使う事は出来ますか?二人からは、確かに聖なる力を感じますが…それは、その道具に頼って居るからではありませんか?」

 私の言葉に…二人は言葉を詰まらせ、視線をさ迷わせた。



 そしてそれを見た王子は、二人に対し厳しい言葉を述べた。

「本当の聖女は、己を偽る様な真似はしない。よくも俺を騙そうとしたな!」

「私はただ、そんな地味な子は王子には相応しくないと思って、それで─!」

「私も、お姉様に王子は勿体ないと思って─!」

「黙れ!俺は何も、彼女が聖女だからと言う理由だけで相手に選んだ訳じゃない。顔ではなく、彼女の真面目さや優しさ、淑やかさに惹かれ選んだんだ。お前達の様な者に、とやかく言われる事ではない。この嘘つきの二人を、早く牢に連れて行け!」

「そんな!」

「い、嫌─!」
 
 

 すると控えて居た兵達が姉と妹を取り押さえ、叫ぶ二人をあっという間に連れて行ってしまった。

 そして二人はそのまま牢に入れられ…その後、二度と聖女を偽る事が出来ない様、罪人の印を額に押され、この国から追放された。

 二人共その印のせいでせっかくの容姿が台無しだけど、これからその姿で一生過ごす事になるわね─。



 一方、王子の婚約者となった私は…今日もお城で、王子の傍でこの国の平和と繁栄を祈って居る。

 彼は…私を聖女としても一人の女としても、とても大事にしてくれて…彼の相手に選ばれ、私は本当に幸せだわ─。
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