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病の妹の面倒を看続け婚期を逃した私ですが、もう自由の身となりますね──。

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 私には病の妹が居る。

 両親が事故で亡くなって以降、私はずっと彼女の面倒を看続けて来た。

 

 だがそんな事をして居たら、いつの間にか私は婚期を逃して居た。
 
 その事に寂しさはあったものの…私の家族はもう妹だけなので、彼女を大事にしようと思って居た。



 そんなある日の事─。

 急な用で、少しの時間家を空ける事になった私。

 すると私に代わり、妹の主治医がその間彼女に付いてくれる事になった。


 
 主治医はとても紳士的で素敵な人で…私はそんな彼に密かに憧れて居た。



 すると思ったよりも早く用が済み、私は急ぎ家に戻った。


 そして妹の部屋に向かえば…部屋の中から男女の荒い息遣いが聞こえて来た。

 驚いた私は思わず足を止め、ドアの前で聞き耳を立てた。



「お姉様は、あなたの事が好きみたいだけれど…残念、あなたは私と良い仲だものね。」

「ハハ、俺があんな年増の地味女など相手にする訳ないだろう?俺は若くて可愛い君を愛して居るんだ。」

「先生のおかげで、私の身体はもうだいぶ前からすっかり善くなったわ。でも、お姉様には敢えてそれを伝えて無いの。あの人には、一生私の世話係に徹して貰わないと。私、前から賢く澄ましたあの人が嫌いだったのよね…。あの人には、この先ずっと苦労して貰うわよ。」

「悪い女だ。でも、そこもまた君の魅力の一つだな。」

 そして二人は行為を再開した。



 まさか、妹の病が完治して居たとは…。

 主治医もそれを分かった上で、あの子とそう言う関係だったとは─。
 
 二人に裏切られて居た事を知った私は、心の底から怒りが湧いて来た。



 私は今までずっと妹の面倒を看て来たけれど、もうそんな事はしない。

 この先は、自分の為に生きる事にし…そして、今度こそ素敵な人に恋をするわ─。



 それから数週間後─。

 妹の診察に来る予定だった主治医は、一向に姿を見せない。

 すると妹は、どうした事かと心配しイライラし始めた。



「いくら待っても、あの男はもう来ないわ。あの男は、医者としてあるまじき行為をして居たんですから。」

「お、お姉様…あなた、あの人に何かしたの!?」

「私はただ、あの人が医者として嘘の診断を下して居た事を世間に公表しただけ。すると、あの人は他にもそう言う事をして居たらしくてね…。それにあなたの他にも、若い娘の患者に手を出して居た事が判明してね。結果医師免許は剥奪され、彼は職を失いこの地を出て行ったわ。」

「そ、そんな…。」
 
 愛する男にもう会えない事を知った妹は、ベッドの上で涙した。



「そんなにあの男に会いたいなら、あなたもこの家を出て後を追いかけたら?あなたはもうすっかり元気なんだし、それは可能でしょう?」

「お姉様、気付いて─」

「私はもうあなたの面倒を一切看るつもりはないから、これからは自分の力で生きて行ってね?」

 そして私は妹をベッドから叩き起こすと、嫌がる彼女を家からつまみ出した。



「ここに戻って来ようとしたって無駄だから。この家には、もうすぐ私の婚約者となる方が来る事になって居るの。」

「お姉様、何時そんな相手を見つけたの!?」

「あなたの主治医の素行を調べる内、同じく身辺を探って居た殿方と知り合ってね。その方の妹さんが診察を受けた際、あの男に関係を迫られたとかで大層怒って居たわ。そしてそれから何度か会うようになり、私達は互いに惹かれ合ったの。あの男が罰を受け、そしてあなたがこの家を出て行き全ての事が片付いたら一緒になる約束をしたんだけど…漸くそれが叶うわ。」

「そんなぁ…私一人でどうしろって言うのよ。お姉様だけ幸せになる何てズルい!」

 妹はその場に崩れ落ち号泣したが、私はそんな彼女を無視し門を閉めたのだった─。



 その後、妹は仕方なく街まで出たが…悪い男達に騙され、近くの娼館に売りとばされてしまったらしい。

 そして現在は売れっ子の娼婦となって居るが…本人は、家に帰りたいと毎日涙して居るそうだ。



 一方、私はと言うと…愛する彼との二人暮らしが始まり、幸せな日々を送って居る。
 
 今まで妹に使って居た時間は、全て彼との時間に代わり…あの時自分の為に生きる事を決意し、妹を切り捨てる判断をして本当に良かったと心の底から思って居るわ─。
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