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妹しか愛さない両親により望まない婚約をする事になった私を、幼馴染が助けてくれました。

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 私の両親は、昔から妹の事しか可愛がらなかった。

 妹はとても可憐な容姿をして居て愛嬌があった為、そうして両親の愛を独り占めする事が出来たのだろう。



 逆に家族で唯一地味な容姿をして居る私は両親から嫌われ、家族の輪から外されて来た。



 その為、私はいつかこんな家を出て行き…幸せになりたいと願って居た。

 しかし…どうやらその願いは叶わない様だ─。



「私が、婚約…?しかも相手は、二回りも年上の方…?」

「そうだ。この家は借金があってな…このままでは生活が苦しいんだ。しかしその方が、娘を一人くれるなら借金を肩代わりすると言ってくれてな。」

「それで、あなたをその方を婚約させる事にしたの。」



 借金って…それは、全て妹のせいじゃない─。

 妹は、両親に甘やかされ育った事で…欲しい物は何が何でも手にれなければ気が済まない、我儘で欲張りな性格になってしまった。



 その癖、手に入れたら入れたですぐに飽き…袖を通して居ないドレスや、付けて居ない貴金属で家の中は溢れかえって居る。

 しかし、両親はそんな妹を止める事無く更にお金を渡し…この家の財政は、かなりひっ迫して居たのだ。



「私でなく、妹がその方の婚約者になれば良いのでは…?借金を作ったのは、その子で─」

「馬鹿を言うな!可愛いこの子を、そんな年上の男の元にやれるか!」

「そうよ、何を考えて居るの!その男はね、若い娘が好きなスケベな男なのよ?そんな所にこの子は行かせないわ!」

「お姉様…姉と言うものは、妹を大事にしなければいけないのですよ?なのに、私をその人の元へ行かせ様とするなど、あなたは悪女だわ!」



 三人から一斉に責められ、私の目からとうとう涙が溢れた。

 このままじゃ、私は本当にその男の元へ行かされる。

 いつか、この家を出たいとは思って居たが…ここを出ても、また不幸が待って居る─!



 そう、私が絶望した時だ。

 部屋のドアが開き…一人の青年が入って来た。



 それは私の幼馴染で…彼は、三人に対しこう言った。



「待って下さい。彼女には、俺が婚約を申し込む事になって居るんです。」

「ど、どういう事だ?」

「俺の事業が成功したら…彼女に、婚約を申し込む事を約束して居たんです─。」



 幼馴染は暫く前に、やりたい事があるとこの地を出て行く事を決めた。



 そんな彼との別れを、私はとても悲しんだ。



 でも、彼の夢を応援したくて…その気持ちを押し込み、別れ様としたのだが…そんな私に、彼はこう言った─。



『必ず事業を成功させ、この地に…君の元に戻って来るよ。そしたら、君に婚約を申し込んでいいかい─?』 



 彼の言葉に驚きつつも、私は頷き…そして、彼は去って行ったのだ。

 あれから、随分時が経ったから…彼は、旅立った先で良い人を見つけたのだと思って居たけれど、そうじゃなかったんだ─。



「そ、そんなの困る!お相手には、もう娘を送ると言ってあるんだ!」

「この子が行かなきゃ、借金はどうなるの?」

「お姉様の代わりに私が行く事だけは、絶対に嫌よ!?」



 三人は必死に彼に訴えたが…彼は、涼しい顔でこう言った。



「その相手の男は、俺の取引相手の一人でもあって…この前彼に会った時、姉は俺の大事な人だから、妹をあなたにあげると言っておきました。すると、彼は大いに喜び…今日のお昼に迎えに来ると言ってましたよ?」

「な、何で私が─」

「元は、君が作った借金なのだろう?だったら、その身を犠牲にしてでも返す事だ。姉を…彼女を犠牲にはさせないよ。」

「その身を犠牲にって…そんなの嫌!」


 
 彼の言葉に、妹は真っ青な顔になりその場に崩れ落ち号泣…そんな妹を母は必死に宥め、父はパニックに陥ってしまって居る。

 彼は、そんな三人を無視し…私の手を取ると、家から連れ出したのだった─。



 そして…私は家から遠く離れた地にある、幼馴染の家で共に暮らす事になった。

 婚約者の事はゆっくり考えてくれればいい、まずは心を休める事が大事だと彼は言ってくれて…私は、その言葉に甘えさせて貰って居たが…そろそろ、答えを出さないと─。



 彼は、昔と変わらずとても私を大事にしてくれて…優しくて誠実で…そんな彼と再会し傍に居られる事に、私は大きな幸せを感じて居る。



 両親や妹との別れは、何とも思わなかったのに…彼と離れるのはもう嫌だ、耐えられないと思う自分が居る。

 それは…私が、彼を好きだからだろう─。



 そして私は、それらの気持ちを彼に伝え…彼の婚約者になりたいと言った。

 すると彼は大いに喜び…君を一生幸せにすると言って、逞しい腕で優しく抱き締めてくれるのだった─。
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