【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*

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聖女でありながら王子の愛人の命を狙ったとして追放されましたが…今は幸せを手にして居ます。

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 私は聖女でありながら、人を殺そうとした事で国外追放を受けた。

 そしてそれを決めたのは…私の婚約者である王子だった。



「お前は、俺の愛する女を手にかけようとした悪女だ!嫉妬で人殺し迄するなど…本当に恐ろしい。」

 そう言って、王子は涙する女を抱き締めた。

 その女は、王子の愛人で…ある日、王子が城下で一目惚れし連れ帰って来た人物だった。



「王子、これには訳があるのです!どうか私の話を─」

「あなたは黙ってて!その女は今回だけでなく、私の命をずっと狙って居ました!お願いです、王子…どうか一刻も早くその女を追い出して下さい!」

 そう愛人に言われた王子は、分かったと言い…私の話に一切耳を貸す事なく、私を城から追い出したのだった。



 戻って来たら、処刑すると言われて居るし…もう、どうする事も出来ない。

 その女を庇ったあなたは…きっと後悔する事になるでしょう。

 そして私は、暗雲立ち込める城を後にしたのだった─。



 その後、私は聖女の居ないある国へと渡った。

 そして、これからはこの国の為に自分の力を使いたいと、国王様にご挨拶する事に─。

 国王様は私を歓迎して下さり…私をすぐにある神殿に置いて下さった。

 

 更には…私を守る騎士だと言い、ある殿方を傍に付けて下さった。

 彼は、この国の騎士団に所属して居て…とても逞しく、頼りになる方だった。

 そんな彼に、私はすぐに好意を抱いた。

 
 
 だが…そんな彼から、何故か忌まわしいあの女の気配がした。

「…あなたは最近、戦いに出ましたか?」

「えぇ。少し間に、魔物の大群と出くわし…ほぼ討伐したのですが、一匹取り逃してしまって─。それは深手を負い、もうこの国には居ない様ですが…一体どこに逃げたのか─。」



 そう、彼は心配して居たが…それよりも彼に纏わりつくあの女の気配を消さなければと、私は彼に加護を授ける事に─。

 あなたの事が大事で、あなたを守りたいのだと私が言えば…彼は、有難く私の加護を受け取ってくれた。

 そしてこの事がきっかけで、私と彼の仲はぐっと縮まったのだった。



 しかし…あの女に感じた悪の気配は、やはり間違いでは無かったのね─。

 あの女は人間でありながら、何故か魔物の気配がして居た。

 恐らく、悪しき心の持ち主であった為に魔物に肉体を奪われ…ほぼ人間として過ごす事で、その力の回復を待って居たのだろう。


 
 私はあの女を見ると…どうしてか、彼女をここから排除しなければという気持ちで頭が一杯になった。

 そしてついに、神殿にあった神剣を彼女に向けてしまい…そこを王子に見つかり、私は追放と言う罰を受けた訳だ。

 あの時、彼女に感じた危機感の様なものは…恐らく、聖女としての本能の様なものだ。



 でも、結局死を免れたあの女は…きっと今頃は、本来の力を取り戻して居るはず。

 むしろ…聖女の私が居なくなった事で、本来以上の力を得て居るかも─。



 するとその直後、城から使者がやって来て…私がかつて居たあの国の王子が、魔物と共に城の地下に封印されたと告げた。

「王子の愛人が、突然魔物の姿になり…王子はその魔物に、肉体を取り込まれてしまったのです。それで、どうしても引き剥がす事が出来ず…結局、その魔物ごと城の地下深くに封じられました。」



 それを聞いた私は、やはりそんな恐ろしい結果になったかと思った。

 でも王子は…身元がハッキリしない女を連れて来るのは如何なものかと話す私に、彼女がどんな女でも俺は構わない…心から愛して居ると言って居たから…彼女の一部となりずっと共に居られるのなら、そんな最期でも満足だったのではないかしら─。



 だがこの事を知った私の騎士は、こうなったのは自分が魔物を取り逃したせいだと落ち込んでしまったので…私はそんな彼を慰めた。

「そもそも、王子の女好きがいけないのです。私は何度も、そんな怪しい女を傍に置いては駄目だと言ったのに…それを無視するから─。」

 そして、この事はお互い早く忘れ…あの国の二の舞にならぬよう、この先この国を守って行く事を大事にしようと伝えた。



「私はこの国に来てから聖女の力が増し、二重の結界も張れました。これがあれば、あの女の様に力の弱い魔物も排除できます。でも、もし万が一魔物が侵入しても…日々鍛錬を重ね、剣の腕を上げて居る騎士のあなたが居れば安心ですから─。どうかこれからも、そうして私を支えて下さいね?」

 そう話せば…彼はその場に跪き、一生私を守ると誓ってくれたのだった。



 そしてそれから一年後…私達は恋仲となり、将来結婚する事を視野に入れ交際して居る。

 公私共に、愛する彼の傍に居る事が出来て、いつも守られ支えられ…きっかけは追放ではあったが、この国に来る事が出来て本当に良かったと私は思うのだった─。
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