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愛人を作った王によって生贄に捧げられた妃の私ですが、真実の愛と出会う事が出来ました!

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 私は、王の妃として城に迎えられたが…彼は地味な私を愛する事は無く、最近は城に愛人を囲うまでに─。

 するとそんな中…王は、私に生贄としてその命を捧げろと命じた。


「それも全てこの国の為だ。だってお前は、神に愛されて居るだろう?」

「確かにそうですが─。」



 神に愛された娘…私がそう言われる様になったのは、十歳の時だ。

 目に見えないもの達の声が聞こえるようになった私は…神殿に出かけた帰り、深い森の中にある泉で美しい少年と出会った。

 彼は泉のほとりに佇んで居て…その姿はとても神々しかった。


 
 彼を見た私は、思わず馬車を降りると…そんな彼に自分から声をかけた。

「あなたの髪、金色でキラキラしてとても綺麗ね。」

 すると彼は、驚いたようにこう言った。

「…この髪の色が、気持ち悪くは無いのか?」

「えぇ。この国には黒か茶色の髪を持った人しか居ないから、確かに珍しいけれど…私は好きよ。」

「そうか…。俺は、この泉の神だ。ここには滅多に人が来ないが…来てくれたのが、君で嬉しい。」

「神様…?ねぇ…私、またここに来てもいい?」

「勿論─。」



 それから、私はその泉に通う様になった。

「…それで、私はこの国の王と婚約が決まったの。神に愛された娘は、王家に繁栄をもたらすからって─。でも…私と王じゃ元の身分が違うし、おまけに私は容姿に恵まれて居ないし…とても不安だわ。それに何より、お城に入ったらもうここには来られないもの。」

「…そうか。離れて居ても、俺は君の幸せを祈って居る。今の俺にはそれしか出来ないけれど…どうかもう泣かないでくれ。」

 彼は、私をそう慰めてくれた。

 そしてそれきり、彼には会って居ない─。



 私は、生贄として花嫁衣装に着替えさせられ…神様が居ると言うあの泉の前に立たされた。

「最近、この国は日照り続きだ。それをどうにかするには、この泉の神に生贄を捧げるのが良いと思ってな。だから、神に愛されたお前が生贄になれば全て解決─」

「…そんな事をしなくても、私はその女に妃の座を譲ったのに─。」

「お前、俺の企みに気づいて─?」

「あなたの犯した罪を、神はちゃんと見て居るわ。そんなあなたには…必ず天罰が下るでしょう。」

「だ、黙れ!早くこの女を泉に突き落とせ!」



 その時だ。

 森の中から一人の男が現れ…縄で縛られた私を背に庇うと、王に剣を向けた。

 この髪の色は…まさか、あの時の─!?

「お前は本当に愚かな男だ。お前の様な者に、もう王は任せておけない─。」

「そ、その髪の色は…まさか、お前は俺の兄上か!?」

 王の言葉に、私は驚きで息を飲んだ。



「…そうだ。俺はこの髪の色が原因で、王家からその存在を消されてしまったお前の兄だ。俺は、物心ついた頃この森に捨てられた。俺を捨てた両親は、もう俺が死んだと思ったようだが…俺は運よくこの森に住む木こりに拾われ、身分を隠し生きて来た。ここで出会う者達には、この容姿を利用し泉の神だと名乗ってな─。」

 成程、そう言う事だったのか。

 一度殺されそうになったなら…そうまでしてその正体を隠そうとするのも頷ける。

 

 私は、彼に本当の事を隠されて居た事より…彼が、こうして今まで無事に生きて居てくれた事が嬉しかった。

 何より、私の危機に駆け付けてくれた事が─。



 しかし王は、そんな彼を見て馬鹿にしたように笑った。

「兄上が何を言おうが…この国の今の王は、この俺だ!こうなったら…その女と共に、ここで死んで貰う!お前達、この二人を殺せ!」

 そう言って、王は周りの兵に命じたが…彼らは、何故か全く動こうとはしなかった。

「な、何をして居る!?早く俺の命令を─」

「無駄だ。その者達は、俺が城に送り込んだ信頼のおける者達だ。俺は彼女と出会った事で…いつか必ず王族として城に帰還し様と、その機会を狙って居た。そして今がその時だ。さぁ、その悪しき王と愛人を捕らえろ!私欲の為に妃を生贄としてこの世から消し去ろうとする男に、最早王の資格は無い!」

 

 彼の言葉に、兵はすぐさま二人を取り押さえた。
 
 王は激しく抵抗し、愛人は泣き叫んで居たが…彼はそんな二人を無視私に近づくと、その縄を解いてくれた。

「俺の愚弟が、本当に申し訳ない事をした。そして…あの時君に真実を言えず、本当に申し訳ない─」

「もういいんです。あなたが神であろうが人であろうが…会いたかったあなたにこうして再会出来ただけで、私は幸せなのです─。」



 その後…王はその座を兄である彼に譲る事になり…妃の私を殺そうとした罰で、愛人と共に死刑を言い渡された。
 
 そうする事で、ついでに生贄としての役目を担って貰おうと彼や周りの者達は考えたのだ。

 城のお金を湯水の様に使い贅沢な暮らしをする王や愛人に、民達も怒って居たし…それに反対する者は、誰一人として居なかった。



 こうして二人の刑が執行されると…すぐに雨が降り、日照りは無事に解消された。

 そしてそれは、愚かな王だった彼が残した唯一の功績でもあった。


 
 すると人々は、いつからかこんな噂をする様に─。

『泉の神の怒りに触れた王と愛人は、神罰により命を落とした。だが、逆に泉の神に愛される事になった妃は…真実の愛を手にし、幸せな日々を送って居る─。』

 国の危機を救い、新しく王となった彼は…どうやら王としても、泉の神様としても人々から称えられて居るようだ。



「…そんなあなたに大事にされ、こうして愛される私は…世界で一番幸せな妃です。」

 そう、彼に微笑めば…彼も幸せそうな笑みを浮かべ、私を優しく抱きしめてくれるのだった─。
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