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年増の聖女など必要ないと、王によって神殿を追われ国からも追放されました…。

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 私は物心ついた時に聖女の力に目覚め、それからずっと一人でこの国を守って来た。

 そんな私は、普段は神殿で祈りを捧げ…王に呼ばれた際は、城を訪れて居た。



 そして今日も、大事な話があると言われ城を訪ねたのだが…王の傍らには、歳の離れた私の義妹が居た。

「この度、彼女が聖女見習いとして神殿に入る事になった。他にも聖女の力に目覚めたと言う若い娘たちが何人も居る。今までは、お前しか聖女が居ないと言う事だったから、全てを任せて来たが…もうその必要はない。これからはこの彼女を含め、もっと若い世代に活躍して貰わないとな。」

「…つまり、私はもうお役御免だと言う事でしょうか?」

「そうよ、お姉様。王様はお優しいからハッキリ言葉にしなかったけれど…私は遠慮なく言わせて貰うわ。力を持った美しく若い女達が何人も居れば…お姉様のような年増一人はもう要らないと言う事よ。そうよね、王様?」

「まぁ、そう言う事だな。」



 王は以前から、私以外にもっと若く美しい聖女は居ないものかと探して居たが…念願叶いその候補者たちが見つかり、それで私が邪魔になったと─。



「お前には、もう神殿を出て行って貰う。そして、代わりに彼女や他の娘達がそこに入る事になって居る。」

「お姉様のような古株に居座られたら、私達若い者は居心地が悪いし…あなたに虐められたら嫌だもの。実際、一緒に暮らして居た時…お姉様は何かと私をいびって来たでしょう?」

「可哀そうに…。もうそんな事が無いよう、王である俺がお前や他の女達を守ってやるからな。」



 そう言って、王と義妹は二人の世界に入ってしまったが…私が義妹を咎めたのは、彼女が我儘を言って使用人たちを困らせたから─。

 そんな女が、本当に聖女の力に目覚めたのかしら…。
 
 少なくとも、私の目にはそうは見えないのだけれど─。



 それを口にすれば…聖女となる者が嘘など付くか、追い出される事に腹を当て言いがかりを付けるなと義妹に反論されてしまった。

 そして王も、私が意地悪な女だと言う事が良く分かった…これは神殿だけではなく国からも追放した方が後任の彼女達の為だと言い、私に国外追放を命じるのだった。



 流石に王の命令に背く訳にも行かず…私は言われた通りこの国を去る事に─。

 すると、そんな私と一緒にこの国を出ると言う者が現れた。

 それは、騎士団長を務めて居る私の幼馴染だった。



「王に今までずっと仕えて居たが…あの方の王としての在り方に、俺はずっと疑問を抱いて居た。それに、俺は君の護衛を任されて居ただろう?最後までずっと一緒に居るよ。」

 そして彼曰く、王は自身に貢物をし機嫌を取って来る副団長ばかりを大事にし…彼よりも人望や剣の腕も劣って居るその男を、いずれ騎士団長にと考えて居るそうだ。

 それを知った幼馴染は、そんな王にすっかり嫌気が差し…何より、今までこの国に尽くして来た私をあっさり捨てた事をとても許す事が出来なかったのだと話した。



 そして私と幼馴染は…昔一緒に本で見た、海を渡った先にある小国へと渡った。

 素敵な国だから、いつか一緒に旅が出来たらと言って居たが…まさかそこで生きる事になるとは思わなかったわ─。

 

 ただ今までと違うのは…私達は幼馴染ではなく、恋人として共に暮らし始めた事だ。

 彼はもう騎士団長では無いから、私を守る義務はないが…一人の男として、私を愛し守ってくれた。

 するとそんな中、私は自国が大変な事になって居ると旅の商人から話を聞く事に─。



 王が集めた義妹や他の聖女見習いの娘たちは、その後神殿に入ったが…若く美しい彼女達をすっかり気に入った王がそこに入り浸るようになり、神殿はまるでハーレムのような状態になってしまったと言う。
 
 すると、彼女達の間で王を巡って争いが勃発…誰も聖女としての役目を果たす者は居なくなってしまったのだった。



 それにより、自国では次々と不幸な事が起こり…民達はこぞって他国へ逃げ出し、国は崩壊寸前に─。

 すると残った民達によって王と義妹、そして他の聖女見習いたちは捕らえ…国がこうなった責任を取れと責められた挙句、処刑されてしまったと言う。



「どうやら義妹や他の娘達は、聖女になって王に特別気に入られたら、妃にして貰えると言う嘘の噂を信じて居たらしいの。それで、聖女の力に目覚めたふりをしたらしいわ。」

「何て愚かな…。そしてそんな者達にあっさり騙されるあの男には、やはり王の資質は無かったんだな。」

 全てを知った私と彼は、あの国を出て本当に良かったと改めて思うのだった。



 そして、これからはこの国を自分達の故郷とし…この先、二人で幸せに生きて行こうと誓い合うのだった─。
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