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嫌われ聖女の私は王の妃候補の座を義妹に奪われ、更には追放される事が決まりました。
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私は王から、今日行われた彼の誕生パーティーの席での、私の態度について怒られて居た。
「どうしてもっと愛想よくできない!せっかく諸国の王家の者達が…そして民が集まった日だったというのに!そんな事だから、お前は皆から嫌われ聖女と陰口を叩かれるんだ!」
「そ、それには訳が─」
「また義妹のせいにするつもりか?あんな天使の様な微笑みを持つあの子の、どこが気に喰わない!後は…その妃候補に与えられる指輪…またそのせいにするつもりか?」
そう…私は、最近の義妹が恐ろしくて仕方なかった。
でも、それを言っても王は全く信じない。
何故なら…義妹は私と共に、神殿の神官長に認められた聖女だったからだ。
そして、私の指に嵌められたこの指輪…これを嵌めると、私は何故か体調が悪くなってしまう。
こんな物を褒めて居ては…正直、とても笑顔でなど居られない。
しかし、王はどちらの訴えも本気と受け取らず…私の我儘にすぎないと思って居る様だ。
「お前は、どうせ自分よりも可愛く皆から好かれる義妹が憎くて、嫉妬からそんな事を言ってるんだろう?その指輪だって、自分の趣味に合わないから嵌めたくないとか…そう言うくだらない理由だろう?そんな自分勝手な女が、俺の妃候補とは…本当に嫌になる。お前など…妃としても聖女としても失格だ。そんなお前はもう用無しだから、さっさとこの国から出て行くがいい!」
「そんな…!」
「そもそも、聖女は二人も要らない。妃候補も、お前の妹に変更だ!あの子は、いつもニコニコしていて愛想がいいからな…。妃になれば、お前より余程民の心が掴めるだろう。そして俺のこの判断に、誰も文句は言わないだろう。」
確かに…私の様な嫌われ聖女を庇おうとする者は、この国にはもう誰も居ない─。
私は王の言い分を受け入れ、一人静かにこの国を去った─。
そして、それから半年程経ったある日…一人のみすぼらしい男が、私の元を訪ねて来た。
それは、私を追い出したあの国の王だった。
「…お城を追い出されたと言う噂は、本当だったんですね。」
「あ、あぁ…。俺は、あの義妹にすっかり騙されて居た─!」
そう言って、王はその場に崩れ落ちた。
私を追放した王は。…その後、私が嵌めていた指輪を今度は義妹に嵌めようとした。
しかし、義妹はそれを拒否し…驚く王にこう言った。
『…私は、こんな物は要りません。こんな…呪いがかけられた、偽の指輪は─。』
そしてその瞬間、王の身体に痺れが走り…彼はその場に倒れ込んだと言う。
『さっき私が淹れた紅茶に、痺れ薬を入れておいたんだけれど…漸く効いて来たわね。王様…あなたはもう要らない。あなたの役目は終わったの。あなたは…あの女を追い出すのに必要だっただけ。それを終えた今、あなたは邪魔なのよ。』
『どうしてだ…お前は、妃になりたいと─』
『えぇ。でも…あなたではなく、彼のね。』
そしてそこには、王そっくりの男が立って居たと言う。
『彼は、私の愛しの神官長よ。邪神の力を借りあなたそっくりになった、ね…。実は私には、神殿に封印されて居た邪神様が憑いてるの。邪神様は、この国が欲しいんですって。そして私は…愛する神官長と二人で、この国を支配したい。私達と邪神は、互いに利害が一致したという訳なの。』
そこで、王の意識は途絶えてしまった─。
「それで、気づいたら城から放り出され居て…何もかも失い行く所がないから、私を捜しわざわざ訪ねて来たと?」
「あぁ…。お前が義妹を恐れて居たのは、邪神のせいだったんだな。」
「ええ。私があの子に邪神が憑いて居ると見抜けなかったのは…恐らくあの指輪に、自身の力を制御されて居たからでしょう。あれを外す事になり、元の力を取り戻したら…漸くそれが分かりました。」
「実はあの指輪だが…お前に渡す前、あの女に強請られ一晩だけ貸してやった事があってな…。」
成程、そう言う事があったのか…。
「ではきっと、その時にすり替えられたのでしょう。あなたの愚かな行動のせいで、私は酷い目に遭いました。」
「それは謝るから…だからお前の力で、あの女を…邪神をどうにかしてくれ!そして俺を、また王の座に─」
「お断りです。そもそもこんな事になったのは、あなたが女好きだからいけないのです。あなたは…義妹だけでなく、旅の踊り子や使用人にもちょっかいかけて居たでしょう?私…気づいて居ましたから。そしてあなたがそんな王だから、邪神に目を付けられる国になってしまったのでは?私はもう、あなたとあの国には一切関わりたくないの。」
「何!?」
「それに私は…もうこの隣国で、皆に愛される聖女をやってますので。だから、あの国には戻れません。」
私の言葉に、王は驚きを隠せない様だった。
「お前が、愛されて居るだって…?」
「この隣国には、聖女が一人も居ませんから。それにあの指輪を嵌めて居る時は、体が辛くて…とても笑顔で居る事や、愛想よく過ごす事など出来なかったのですが…もう今はすっかり健康な体になり…こうして笑える様になりました。おかげで私は、この国の民達から愛される聖女となり…すると私の笑顔を見た隣国の王が、是非自分の妃になって欲しいと言ってくれて─。ですから…あなたやあの国がどうなろうと、私はもう知りません。」
「そ、そんな…。」
こうして王は…何もかも失い、身一つで路頭に迷う事になった。
そして、義妹と神官長だが…邪神に愛された国など、どうせ長くは続かない。
恐らく二人は、邪神に都合良いように利用され…その後は、魂を奪われる事になるでしょう。
王とあの二人は、そうして不幸な末路を辿る事が決まって居るから…後は時の流れに任せ、放っておけばいいわ。
そんな事を考えながら…私は今日も隣国の民に愛され、聖女の務めを果たして居る。
そしてもうすぐ…私の笑顔を愛してくれら隣国の王のお妃様になる為、城へと迎えられるわ。
そうなったら、私は今以上に幸せな日々を送る事になり…更に皆から愛され、大事にされる妃となる事でしょう─。
「どうしてもっと愛想よくできない!せっかく諸国の王家の者達が…そして民が集まった日だったというのに!そんな事だから、お前は皆から嫌われ聖女と陰口を叩かれるんだ!」
「そ、それには訳が─」
「また義妹のせいにするつもりか?あんな天使の様な微笑みを持つあの子の、どこが気に喰わない!後は…その妃候補に与えられる指輪…またそのせいにするつもりか?」
そう…私は、最近の義妹が恐ろしくて仕方なかった。
でも、それを言っても王は全く信じない。
何故なら…義妹は私と共に、神殿の神官長に認められた聖女だったからだ。
そして、私の指に嵌められたこの指輪…これを嵌めると、私は何故か体調が悪くなってしまう。
こんな物を褒めて居ては…正直、とても笑顔でなど居られない。
しかし、王はどちらの訴えも本気と受け取らず…私の我儘にすぎないと思って居る様だ。
「お前は、どうせ自分よりも可愛く皆から好かれる義妹が憎くて、嫉妬からそんな事を言ってるんだろう?その指輪だって、自分の趣味に合わないから嵌めたくないとか…そう言うくだらない理由だろう?そんな自分勝手な女が、俺の妃候補とは…本当に嫌になる。お前など…妃としても聖女としても失格だ。そんなお前はもう用無しだから、さっさとこの国から出て行くがいい!」
「そんな…!」
「そもそも、聖女は二人も要らない。妃候補も、お前の妹に変更だ!あの子は、いつもニコニコしていて愛想がいいからな…。妃になれば、お前より余程民の心が掴めるだろう。そして俺のこの判断に、誰も文句は言わないだろう。」
確かに…私の様な嫌われ聖女を庇おうとする者は、この国にはもう誰も居ない─。
私は王の言い分を受け入れ、一人静かにこの国を去った─。
そして、それから半年程経ったある日…一人のみすぼらしい男が、私の元を訪ねて来た。
それは、私を追い出したあの国の王だった。
「…お城を追い出されたと言う噂は、本当だったんですね。」
「あ、あぁ…。俺は、あの義妹にすっかり騙されて居た─!」
そう言って、王はその場に崩れ落ちた。
私を追放した王は。…その後、私が嵌めていた指輪を今度は義妹に嵌めようとした。
しかし、義妹はそれを拒否し…驚く王にこう言った。
『…私は、こんな物は要りません。こんな…呪いがかけられた、偽の指輪は─。』
そしてその瞬間、王の身体に痺れが走り…彼はその場に倒れ込んだと言う。
『さっき私が淹れた紅茶に、痺れ薬を入れておいたんだけれど…漸く効いて来たわね。王様…あなたはもう要らない。あなたの役目は終わったの。あなたは…あの女を追い出すのに必要だっただけ。それを終えた今、あなたは邪魔なのよ。』
『どうしてだ…お前は、妃になりたいと─』
『えぇ。でも…あなたではなく、彼のね。』
そしてそこには、王そっくりの男が立って居たと言う。
『彼は、私の愛しの神官長よ。邪神の力を借りあなたそっくりになった、ね…。実は私には、神殿に封印されて居た邪神様が憑いてるの。邪神様は、この国が欲しいんですって。そして私は…愛する神官長と二人で、この国を支配したい。私達と邪神は、互いに利害が一致したという訳なの。』
そこで、王の意識は途絶えてしまった─。
「それで、気づいたら城から放り出され居て…何もかも失い行く所がないから、私を捜しわざわざ訪ねて来たと?」
「あぁ…。お前が義妹を恐れて居たのは、邪神のせいだったんだな。」
「ええ。私があの子に邪神が憑いて居ると見抜けなかったのは…恐らくあの指輪に、自身の力を制御されて居たからでしょう。あれを外す事になり、元の力を取り戻したら…漸くそれが分かりました。」
「実はあの指輪だが…お前に渡す前、あの女に強請られ一晩だけ貸してやった事があってな…。」
成程、そう言う事があったのか…。
「ではきっと、その時にすり替えられたのでしょう。あなたの愚かな行動のせいで、私は酷い目に遭いました。」
「それは謝るから…だからお前の力で、あの女を…邪神をどうにかしてくれ!そして俺を、また王の座に─」
「お断りです。そもそもこんな事になったのは、あなたが女好きだからいけないのです。あなたは…義妹だけでなく、旅の踊り子や使用人にもちょっかいかけて居たでしょう?私…気づいて居ましたから。そしてあなたがそんな王だから、邪神に目を付けられる国になってしまったのでは?私はもう、あなたとあの国には一切関わりたくないの。」
「何!?」
「それに私は…もうこの隣国で、皆に愛される聖女をやってますので。だから、あの国には戻れません。」
私の言葉に、王は驚きを隠せない様だった。
「お前が、愛されて居るだって…?」
「この隣国には、聖女が一人も居ませんから。それにあの指輪を嵌めて居る時は、体が辛くて…とても笑顔で居る事や、愛想よく過ごす事など出来なかったのですが…もう今はすっかり健康な体になり…こうして笑える様になりました。おかげで私は、この国の民達から愛される聖女となり…すると私の笑顔を見た隣国の王が、是非自分の妃になって欲しいと言ってくれて─。ですから…あなたやあの国がどうなろうと、私はもう知りません。」
「そ、そんな…。」
こうして王は…何もかも失い、身一つで路頭に迷う事になった。
そして、義妹と神官長だが…邪神に愛された国など、どうせ長くは続かない。
恐らく二人は、邪神に都合良いように利用され…その後は、魂を奪われる事になるでしょう。
王とあの二人は、そうして不幸な末路を辿る事が決まって居るから…後は時の流れに任せ、放っておけばいいわ。
そんな事を考えながら…私は今日も隣国の民に愛され、聖女の務めを果たして居る。
そしてもうすぐ…私の笑顔を愛してくれら隣国の王のお妃様になる為、城へと迎えられるわ。
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